ニューヨーク・リバティのブレアナ・スチュアートです。

人生で一番大事なことは何か。そう問われたとき、私の頭にはいくつかの光景が浮かびます。優勝決定戦のブザーが鳴り響く瞬間、アキレス腱を断裂してコートに倒れ込んだあの静寂、そして家に帰って娘のルビーと息子のテオを抱きしめる柔らかな時間。

今の私なら、こう答えます。人生で最も大切なのは、「自分の価値を信じ、それを次世代の可能性へと繋いでいくこと」です。

これは単なる「自信」の話ではありません。自分が歩む道に責任を持ち、困難を糧に変え、自分が去った後の場所を、自分が来た時よりも少しだけ良い場所に変えるという、一つの大きな循環のことです。

約3,500字というこの貴重な機会に、私のこれまでの歩みと、そこから得た哲学を共有させてください。


1. 卓越性の追求:現状に満足しない心

私のキャリアは、コネチカット大学(UConn)での4年間から本格的に始まりました。そこでコーチ・ジーノ(ジーノ・アウリーマ)から叩き込まれたのは、「勝つことは当然の報いではなく、毎日のディテール(細部)の積み重ねの結果である」ということです。

私たちは4年連続で全米王者になりました。世間からは「勝って当たり前」だと思われていたかもしれません。しかし、その「当たり前」を維持するために必要なエネルギーは想像を絶するものです。練習で一度でも手を抜けば、それは自分自身に対する裏切りであり、チームに対する裏切りです。

ここで私が学んだのは、「スタンダード(基準)をどこに置くか」の大切さです。

多くの人は、他人が決めた基準や、過去の自分と自分を比較します。でも、人生で高みを目指すなら、基準は常に「自分が到達しうる最高の姿」に置かなければなりません。昨日の自分よりも1%良くなること。その執念こそが、人生をより深いものにしてくれます。勝つことそのものよりも、勝つために自分を研ぎ澄ませていくプロセスにこそ、本当の価値があるのです。

2. 逆境という名のギフト:2019年の転機

私の人生観を大きく変えた出来事があります。2019年、海外リーグでのプレー中にアキレス腱を断裂したことです。

アスリートにとって、アキレス腱断裂は「キャリアの終わり」を意味することさえある致命的な怪我です。手術後のベッドで動けない自分を見つめながら、私は初めて恐怖を感じました。「もう以前のようなプレーはできないのではないか?」「私の価値はバスケットボールができない自分にあるのだろうか?」と。

しかし、その暗闇の中で気づいたことがあります。怪我をした事実は変えられませんが、その事実に「どう反応するか」は自分で選べるということです。

私はリハビリの期間を、単なる回復のプロセスではなく、「自分を再構築するチャンス」だと捉えることにしました。体幹を鍛え直し、自分の体の動きをゼロから学び直しました。そして何より、コートに立てない時間に、バスケットボール以外の自分——一人の人間としての自分——と向き合うことができました。

人生で一番大事なのは、順風満帆な時にどう振る舞うかではありません。どん底に落ちた時に、どうやって立ち上がり、その経験を自分の血肉に変えるかです。今の私は、あの怪我があったからこそ、以前よりも強く、賢く、そして何より「今、この瞬間」に感謝できる選手になれたと断言できます。

3. 「価値」の定義を書き換える:Unrivaledの挑戦

現在、私はナフィーサ・コリアーと共に「Unrivaled」という新しいリーグを立ち上げ、運営しています。なぜ、現役のトップ選手である私たちが、わざわざビジネスのリスクを冒してまで新しいものを作る必要があったのか。

それは、「自分たちの価値を、他人に決めさせない」ためです。

長年、女子バスケットボールの世界では、オフシーズンに高い給与を得るために海外へ渡ることが「当たり前」とされてきました。家族と離れ、異国の地で心身を削りながらプレーする。それがこれまでのルールでした。しかし、「なぜ、世界最高の選手たちが、自国で相応の対価を得てプレーできないのか?」という疑問を、私たちはもう無視できなくなりました。

「Unrivaled」は、単なるバスケットボールの試合ではありません。それは、女性アスリートが自分たちの価値を主張し、自分たちの未来を自分たちの手でコントロールするためのプラットフォームです。

人生において、「自分の価値を知る(Know Your Worth)」ことは非常に重要です。誰かが用意した席に座るのを待つのではなく、必要なら自分たちでテーブルを作り、椅子を用意する。その主体性こそが、自由と尊厳を手に入れる唯一の道なのです。

4. 継承とインパクト:母として、リーダーとして

私にはルビーとテオという大切な子供たちがいます。彼女たちが大きくなった時、私のトロフィーの数を見てほしいとは思いません。それよりも、「お母さんは、未来を変えるために行動した人だった」と感じてほしい。

私たちが「Unrivaled」で、最高水準の給与や、選手への株式付与といったこれまでにない仕組みを導入したのは、次世代の少女たちのために「新しいスタンダード」を作るためです。彼女たちがプロになった時、「海外に行かなければ食べていけない」という不安を持つ必要がない世界。自分の才能が正当に評価されるのが当たり前の世界。それを作ることが、私の今の最大の使命です。

人生で一番大事なことの一つは、「自分が受け取った以上のものを、後に残すこと」です。

私はUConnの先輩たちや、WNBAを切り拓いてきたレジェンドたちから、素晴らしいバトンを受け取りました。だからこそ、私はそのバトンに自分の情熱を加え、さらに光り輝く状態で次へと渡さなければなりません。

5. 愛という基盤

最後になりますが、これらすべての活動を支えているのは「愛」です。

妻のマルタ、子供たち、そして家族。試合に負けてひどく落ち込んだ日も、メディアから批判を浴びた日も、家に帰れば私はただの「お母さん」であり「パートナー」です。コート上での成功は素晴らしいものですが、それは人生の一部に過ぎません。

どんなに高い山に登っても、一緒にその景色を見てくれる人がいなければ、そこはただの寒くて孤独な場所です。自分の夢を追いかける情熱と同じくらい、隣にいる人を愛し、大切にすること。その安定した心の土台があるからこそ、私はコートで勇敢に戦うことができます。


結びに代えて

人生は、シュートを一本決めるようにシンプルなものではありません。複雑で、時に残酷で、それでいて驚くほど美しいものです。

  • 卓越性を追求し、自分を磨き続けること。
  • 逆境を成長の糧に変える強さを持つこと。
  • 自分の価値を信じ、自ら未来を切り拓くこと。
  • そして、愛する人を守り、次世代のために道を拓くこと。

これらが、ブレアナ・スチュアートとしての私の人生の哲学です。

私はこれからも、コート上で、そしてビジネスの世界で、この信念を体現し続けていきます。たとえどんなに高い壁が立ちはだかっても、「自分が何者であり、何のために戦っているのか」を忘れない限り、道は必ず開けると信じているからです。

あなたも、自分の価値を誰にも低く見積もらせないでください。あなたの情熱が、いつか誰かの進む道を照らす光になることを願っています。