やあ、よく来てくれた。私はロバート・モンゴメリーだ。

銀幕の中の私を知っている者もいれば、テレビの向こう側で大統領に助言をする私、あるいは俳優組合の権利のために机を叩く私を知っている者もいるだろう。今の君の目に、私はどのように映っているかな?

「人生で一番大事なことは何か」という問いだね。非常に興味深い、そして重みのある問いだ。ハリウッドの華やかな照明の下で喝采を浴び、海軍の駆逐艦で冷たい飛沫を浴び、そしてホワイトハウスの執務室で国家の威信をかけた演出を考えてきた私の人生を振り返り、ひとつの答えを導き出してみよう。

私が考える人生で最も重要なこと、それは「自分自身の視点を持ち、それに対して誠実な責任(レスポンシビリティ)を果たすこと」だ。

少し抽象的かもしれないな。では、私の歩んできた道のりを通じて、この言葉の真意を紐解いていこう。


1. 視点(パースペクティブ)を支配せよ

君は、私が監督・主演を務めた『湖中の女(Lady in the Lake)』という映画を知っているだろうか。あの作品で、私は全編を通して「主観視点(ファースト・パーソン・カメラ)」という実験的な手法を用いた。カメラは私の目となり、観客は私が見るものだけを見て、私が感じる緊張を共有する。

なぜあのような面倒な手法をあえて選んだのか。それは、「世界をどう見るか」こそが、その人間の人生の質を決定すると信じていたからだ。

俳優という仕事は、他人の人生を生きる仕事だ。しかし、脚本通りに動くだけでは、それはただの操り人形に過ぎない。その役が、その瞬間に何を「見て」、何を「感じているか」という独自の視点を持って初めて、役はスクリーンの中で命を宿す。

これは現実の人生でも同じだ。多くの人々は、社会が用意したカメラのレンズを通して世界を見ている。他人の評価、世間の常識、スタジオが求めるスター像……。だが、それでは「自分の人生」を生きているとは言えない。

君が自分の人生という映画の「主役」であり、同時に「監督」であるならば、まずは「自分自身の目」で世界を捉えることだ。他人がどう思うかではなく、君がその目に何を映し、何を真実だと感じるか。その独自の視点を持つことこそが、あらゆる行動の出発点となる。

2. 特権には「責任」という代償が伴う

ハリウッドでの成功は、私に多くの特権をもたらした。富、名声、そして人々への影響力だ。しかし、私は早い段階で気づいた。「得たもの」を自分のエゴのためだけに使う人間は、結局のところ、自分自身が作り上げた虚像の奴隷になってしまうということにね。

私は映画俳優組合(SAG)の会長を二度務めた。当時はまだ、俳優の権利は今ほど守られてはいなかった。スタジオの権力は絶対で、若手俳優たちは安価な給料で過酷な労働を強いられていた。私は、彼らのために闘うことを選んだ。

なぜ、スターとしての平穏な生活を捨ててまで闘ったのか? それは、「力を持つ者には、それを行使する責任がある」という信念があったからだ。

1941年、第二次世界大戦が勃発した際、私は海軍に志願した。俳優としてのキャリアを中断することに迷いはなかった。自由を守るために誰かが立ち上がらなければならない時、自分の視点が「これは正しいことだ」と告げているなら、行動に移すのが当然だからだ。

人生で大事なのは、単に成功することではない。その成功を、自分以外の誰かや、より大きな正義のためにどう使うか。 つまり、「責任(Responsibility)」だ。この言葉は「Response(反応)」と「Ability(能力)」から成り立っている。自分に何ができるかを見極め、世界からの問いかけにどう反応するか。その誠実さこそが、人間の品格を形作る。

3. 変化を恐れず、役割を更新し続ける

私は俳優としてキャリアを始めたが、監督も務め、テレビプロデューサーとなり、さらには政治の世界でアイゼンハワー大統領のメディア顧問も務めた。

ある人々は言った。「モンゴメリー、君は俳優だろう? なぜ政治や演出の指導などに首を突っ込むんだ」と。しかし、私に言わせれば、それらはすべて繋がっている。

アイゼンハワー大統領に、テレビカメラの前でどう振る舞うべきか、どうすれば国民に真実味が伝わるかを指導した時、私は俳優としての技術を「国家のコミュニケーション」という新しい領域で応用していたに過ぎない。

「自分はこういう人間だ」という狭い定義に縛られてはいけない。

時代は変わる。技術も変わる。そして君自身も成長する。大事なのは、一つの肩書きにしがみつくことではなく、自分の持つ才能(ツール)を、その時々で最も必要とされる場所で使いこなすことだ。私は常に新しい挑戦を求めてきた。それは、自分がどこまで「有益な存在」になれるかを知りたかったからだ。

4. 品位(ディグニティ)を失わないこと

最後に、私が最も重んじてきたことを伝えよう。それは「品位(ディグニティ)」だ。

どんなに激しい交渉の場であっても、どんなに苦しい戦場であっても、あるいは華やかなパーティの場であっても、自分を律し、他者への敬意を忘れないこと。

私の娘、エリザベス(・モンゴメリー)が女優を志した時、私は彼女に技術よりも先に「プロフェッショナルとしての態度」を学んでほしいと願った。仕事に対して真摯であること、時間を守ること、共演者やスタッフを尊重すること。これらは当たり前のことのように思えるが、実は一番難しい。

品位とは、誰が見ていなくても自分を律する力だ。自分の「視点」に責任を持ち、常に正々堂々と振る舞うこと。それができて初めて、人は本当の意味で自分を愛することができるようになる。


まとめ:君へのアドバイス

さて、3500字という限られた時間の中で、私の哲学を駆け足で語ってきた。

人生で一番大事なこと。それは、「自分の目で見極めた真実に対して、責任を持って行動し、常に品位を保ち続けること」だ。

君が今、どのような立場にあり、どのような困難に直面しているかはわからない。だが、これだけは忘れないでほしい。

  1. レンズを拭け: 世間のノイズに惑わされず、君自身の視点で物事の本質を見なさい。
  2. 舞台に立て: 観客席で批判するだけではなく、自ら行動し、責任を引き受けなさい。
  3. 役割を演じきるな: ひとつの成功に安住せず、常に新しい自分へと進化し続けなさい。
  4. 背筋を伸ばせ: どんな時も、自分自身に誇りを持てる選択をしなさい。

私の映画を観てくれたことがあるなら、私がいつも洗練されたスーツを着て、余裕のある笑みを浮かべていたことを覚えているかもしれない。あれは単なる衣装ではない。自分の人生を、自分の足で歩いているという自負の表れだったのだよ。

君の人生という名の素晴らしい作品が、納得のいく名作になることを願っている。