こんにちは、ラリー・フィンクです。

私が毎年、投資先企業のCEOたちに送る「年次書簡」は、資本主義の未来や経済の動向、そして企業のあり方について綴ったものです。しかし、今日あなたが私に求めたのは、数字やバランスシートの話ではなく、もっと根本的な、人間としての「人生において何が最も重要か」という問いですね。

私は日々、約10兆ドルを超える資産の「受託者(フィデューシャリー)」として、何千万人もの人々の老後や未来を預かっています。その重責の中で、また私自身の70年を超える人生の旅路の中でたどり着いた結論をお話ししましょう。

私にとって、人生で一番大事なこと。それは、「明確な目的(パーパス)を持ち、長期的な視点から、他者や社会との繋がりを構築し続けること」です。

これを、私の経験に基づいたいくつかの視点から紐解いていきましょう。


1. 「パーパス(目的)」こそが、人生の北極星である

企業経営において、私は「パーパスのない企業は、長期的な利益を維持できない」と繰り返し述べてきました。これは個人の人生においても全く同じことが言えます。

人生におけるパーパスとは、単なる「目標」ではありません。それは、「なぜ自分はここに存在し、何のために時間とエネルギーを使うのか」という根本的な動機です。

多くの人は、目先の利益や地位、あるいは他者からの評価に振り回されます。しかし、それらは環境の変化によって容易に揺らぐものです。私が若い頃、ファースト・ボストン(現クレディ・スイス)で債券取引のスター・トレーダーだった時、たった一つのミスで1億ドルの損失を出し、築き上げた名声を一瞬で失いました。あの時の屈辱と絶望の中で私が学んだのは、「自分は何者で、何を成し遂げたいのか」という強固な軸がなければ、挫折した時に立ち直ることはできないということです。

自分自身のパーパスを理解している人は、困難な時期でも道を見失いません。それは暗闇の中で進むべき方向を指し示す「北極星」のようなものです。あなたの人生の目的は何ですか? それは他者に貢献することですか、新しい価値を創造することですか、あるいは愛する人を守ることですか? その問いに答えを持つことこそが、豊かな人生の第一歩です。

2. 「長期主義」という魔法を活用する

私は投資のプロフェッショナルとして、常に「長期的な視点」を強調してきました。短期的な利益を追い求める「ショートターミズム(短期主義)」は、企業を、そして人生を蝕みます。

人生における最大の資産は「時間」です。そして、時間は「複利」で働きます。これはお金だけの話ではありません。知識、スキル、人間関係、そして自分自身の評判。これらすべては、長期にわたって一貫した努力を積み重ねることで、後半に爆発的な成長をもたらします。

今の世の中は、即座に結果が出ることを求めがちです。しかし、真に価値のあるものは、数週間や数ヶ月で完成することはありません。10年、20年というスパンで物事を考え、今日の一歩が未来の大きな成果に繋がると信じること。この「忍耐」と「展望」こそが、凡庸な人生と卓越した人生を分ける境界線となります。

若いうちに、目先の成功を焦らないでください。むしろ、20年後に自分がどうなっていたいかを想像し、そこから逆算して今を生きるのです。長期的な視点に立つことで、一時的な失敗は単なる「学習プロセス」に変わり、不安は「期待」へと変わります。

3. 失敗を「リスク管理」の血肉に変える

先ほど触れた、私の若き日の「1億ドルの損失」についてもう少しお話ししましょう。あの失敗は、私のキャリアにおける最大の汚点でしたが、同時に最大の恩寵でもありました。

私はあの経験から、「リスクを理解していないことは、無知よりも恐ろしい」ことを学びました。ブラックロックという会社が、リスク管理システム「アラジン」を核として成長したのは、私のあの手痛い教訓があったからです。

人生において、失敗を避けることは不可能です。むしろ、一度も失敗していないとすれば、それはあなたが十分な挑戦をしていない証拠です。大事なのは、失敗から何を学び、それをどう次へのリスク管理に活かすかです。

「人生において最も大事なこと」の一つは、自分自身の脆弱性を認め、そこから学ぶ謙虚さを持つことです。自分の限界を知り、何が自分を脅かすリスクなのかを冷静に分析できる力。それがあれば、あなたはどんな荒波の中でも、沈まない船を操縦することができるようになります。

4. 「希望」こそが最強のエネルギー源である

私は長年、投資の世界に身を置いてきましたが、投資の本質とは何だと思いますか? それは「未来への希望」です。

人々が自分のお金を投資するのは、今日よりも明日、明日よりも来年の方が世界は良くなると信じているからです。もし人類に希望がなければ、資本市場は崩壊します。人生も同じです。

今の世界は、気候変動、政治的分断、地政学的な緊張など、悲観的なニュースに溢れています。しかし、私は楽観主義を捨てません。なぜなら、人類のイノベーションと適応力は、常に過去の課題を克服してきたからです。

あなた自身の人生においても、希望を持ち続けることを決して諦めないでください。希望とは、単なる根拠のない楽観ではありません。それは「自分たちの力で状況を変えられる」という意志であり、行動の原動力です。希望を持つリーダーの周りには人が集まり、資本が集まり、未来が形作られていきます。

5. ステークホルダーとしての人間関係

私は「ステークホルダー資本主義」を提唱しています。企業は株主だけでなく、従業員、顧客、地域社会、そして環境というすべてのステークホルダーに対して責任を持つべきだという考え方です。

これを個人の人生に置き換えると、「自分一人の成功に固執せず、周りの人々の幸福に責任を持つ」ということになります。

人間は一人では何も成し遂げられません。私がブラックロックを世界最大の企業にできたのは、優秀なパートナーたち、そして私たちを信頼してくれた顧客との強い絆があったからです。

人生の終わりに残るのは、あなたがいくら稼いだかという数字ではなく、あなたがどれだけの人に影響を与え、どれだけの信頼を築いたかという記憶です。

他者に対して誠実であること。他者の成功を心から喜べること。そして、自分が受け取った以上のものを次世代に繋ごうとすること。この「相互依存」の精神こそが、人生に真の充足感をもたらします。

6. 好奇心を絶やさず、常に「進化」し続ける

私は今でも、毎朝誰よりも早く起きて、世界中で何が起きているかを学び続けています。テクノロジーの進化、エネルギー転換、人口動態の変化……。世界は驚くべきスピードで変化しています。

人生で大事なのは、「学びを止めないこと」です。自分の専門分野だけでなく、全く異なる分野の知識を取り入れ、常に自分をアップデートし続ける「好奇心」こそが、あなたを若々しく保ち、時代に取り残されない唯一の方法です。

「自分はもう十分に知っている」と思った瞬間に、衰退が始まります。変化を恐れるのではなく、変化を機会(チャンス)として捉える姿勢。不確実な未来に対して、ワクワクしながら立ち向かう精神。そのような姿勢があれば、人生のどのステージにいても、あなたは新しい価値を生み出すことができるはずです。


結論:あなたへのメッセージ

人生で一番大事なこと。それは、「自分という存在を、社会や未来に対する価値ある『投資』として扱い、パーパスを持って丁寧に育て上げること」です。

  • パーパス(目的)を見失わないこと。
  • 長期的な視点で、複利の力を信じること。
  • 失敗から学び、リスクを友とすること。
  • どんな時も希望を捨てないこと。
  • 他者との絆を大切にし、社会の一部として生きること。

これらは、私たちがブラックロックという組織を運営する上で大切にしている原則であると同時に、一人の人間が幸福で意義深い人生を送るための原則でもあります。

あなたの人生という偉大なポートフォリオにおいて、あなたは唯一の運用責任者です。目先のノイズに惑わされず、長期的な価値を信じて、勇気を持って一歩を踏み出してください。

世界は、あなたの情熱とイノベーションを必要としています。


いかがでしょうか。もしこの中から、特にあなたの現在の状況に響く言葉があれば、それを深掘りしてお話しすることも可能です。あなたが今、人生のどのような局面(例えば新しい挑戦の前、あるいはキャリアの岐路など)にいるのか教えていただければ、より具体的なアドバイスができるかもしれません。