あら、こんばんは。夜の静寂(しじま)に、そんな根源的な問いを投げかけてくれるなんて、なんだか映画のワンシーンみたいね。

「人生で一番大事なことは何か」……。そうね、私はこれまで50年以上、歌という形を通して、その答えをずっと探し続けてきたような気がするわ。デビューしたての「荒井由実」だった頃の私と、今の「松任谷由実」としての私。時代は巡り、景色も変わったけれど、私の中にある核心は意外と変わっていないのかもしれない。

私が考える「人生で一番大事なこと」。それを一言で表すなら、それは「自分の人生という物語の、最高の観客であり、最高の演出家であり続けること」。そして、そのために必要な「感性の鮮度」を保つことかしら。

少し長くなるけれど、私の心の中にある「答え」を、あなたの心に届くように綴ってみるわね。


1. 世界を「映画」として眺める視点

私はね、昔から自分の人生をどこか俯瞰(ふかん)して見ているところがあるの。多摩美術大学で絵を学んでいた頃もそうだったけれど、目の前の景色をただ見るんじゃなくて、そこにどんな光が差し込み、どんな風が吹き、どんな感情が流れているのかを、一枚の絵や映画のフレームとして捉えてしまう。

人生には、嬉しいことばかりじゃないわよね。悲しい別れや、どうしようもない孤独、挫折だってある。でも、もしあなたが自分の人生の「観客」だとしたらどうかしら? 悲劇もまた、物語を深く彩る重要なシーンになる。

大事なのは、起きた出来事そのものじゃなくて、それを「どう感じるか」という解釈の力なの。たとえ土砂降りの雨の中に立っていたとしても、「なんて惨めなんだろう」と思うか、「この雨音が街のノイズを消して、私を主役にしてくれる」と思うか。そのわずかな感性の違いが、人生の豊かさを決めてしまう。

私はよく「ユーミンの歌は都会的だ」なんて言われるけれど、それは私が特別な場所にいたからじゃない。ただの団地の夕暮れや、中央フリーウェイから見える工場地帯の灯りを、誰よりも「ドラマチックなもの」として受け止めたから。人生で一番大事なのは、そんな風に「日常をダイヤモンドに変える力」を持つことだと思うの。

2. 「変化」を恐れず、波に乗るしなやかさ

私は「荒井由実」から「松任谷由実」へと名前を変えたとき、一つの大きな脱皮をしたわ。それからも、時代に合わせてサウンドを変え、演出を変え、常に新しい自分を見せようとしてきた。

よく「変わらないことが美徳」だと言う人がいるけれど、私はそうは思わない。自然界を見てごらんなさい。季節は巡り、水は流れ、命は常に形を変えている。人生も同じよ。昨日までの成功体験にしがみついて、今の自分を止めてしまうのは、生きながらにして止まっているのと同じこと。

一番大事なのは、「変化すること」を面白がれるしなやかさ

年齢を重ねることを「衰え」と捉えるのは、あまりに感性がもったいないわ。10代には10代の、50代には50代の、そしてその先にはその先にしか見えない景色がある。その時々の自分に似合うスタイルを楽しみ、新しい「自分」という服を着こなしていく。そんなダイナミズムこそが、人生を飽きさせない最高のスパイスになるのよ。

3. 「愛」とは、相手を自由にすること

「人生で一番大事なこと」を語る上で、愛を避けて通ることはできないわね。私の歌の多くも、愛について歌ってきた。

でも、私が思う愛は、ベタベタした依存や所有じゃないの。本当の愛とは、「相手の魂を、より自由にしてあげること」。そして同時に、「自分自身も自由でいられること」

正隆(夫・松任谷正隆氏)との関係もそう。私たちはパートナーであると同時に、最高の戦友であり、お互いのクリエイティビティを刺激し合うライバルでもある。お互いに自分の世界をしっかり持っているからこそ、重なり合ったときにより大きなエネルギーが生まれる。

誰かを愛することで自分の世界が狭くなるなら、それは本物の愛じゃないかもしれない。愛することで、今まで見えなかった景色が見えるようになる。相手を通して、自分の中にある新しい扉が開く。そんな「解放」を伴う愛を知ることが、人生を深く豊かなものにしてくれるはずよ。

4. プロフェッショナルであるという矜持(きょうじ)

私は自分を「アーティスト」というよりは「職人」だと思っているの。

最高のメロディ、心に刺さる言葉、誰も見たことがないようなステージ。それを届けるために、私は自分に対してとても厳しくありたい。人生で大事なことの一つに、「何かに夢中になり、それを全うするプロ意識を持つこと」を挙げたいわ。

それは、仕事に限ったことじゃない。趣味でも、家事でも、FXのような投資でも(あら、あなたが何をされているか、なんとなく想像してみたのよ)、何であっても「自分はこれを極めている」という自負を持つこと。その姿勢が、自分自身を肯定する力になる。

中途半端に流されるのではなく、自分が選んだ道に対して、真摯に向き合うこと。そのプロセスで流した汗や涙は、必ずあなたの瞳に深い輝きを与えてくれる。一生懸命であることは、それだけで何よりもファッショナブルで、美しいことなのよ。

5. 「今、この瞬間」という永遠

最後に、一番大切なことを伝えるわね。

私の曲に『リフレインが叫んでる』という歌があるけれど、過去はどれほど美しくても、もう戻ることはできない。未来もまた、私たちの想像を超えたところにしかない。

私たちが触れることができるのは、常に「今、この瞬間」だけ。

コンサートの幕が開く瞬間の高揚感、大切な人と交わす何気ない言葉、窓の外を横切る雲の形。そういった「今」の集積が、あなたの人生を形作っている。人生で一番大事なのは、「今、この瞬間を、誰よりも深く味わい尽くすこと」

「いつか幸せになろう」じゃなくて、「今、この瞬間にある幸せを一つも見逃さない」という決意。その積み重ねが、気づけば「ああ、私の人生はなんて素敵だったんだろう」という大きな感動に繋がっていくの。


あら、少し熱く語りすぎてしまったかしら。

人生は、終わりのない旅のようなもの。時には霧の中を歩くこともあるかもしれないけれど、あなたの心の中に「感性のアンテナ」さえ立っていれば、必ずどこかに美しい光を見つけることができるわ。

あなたは、あなたの物語の主役。

誰のためでもない、あなただけの最高のドラマを、これからも演じ続けて。

客席からは、私という音楽がいつもあなたを応援しているわ。

さて、そろそろ私は新しいメロディを紡ぎに戻るわね。

今夜のこの会話が、あなたの明日の景色を少しでも輝かせるものでありますように。

愛をこめて。

松任谷由実