こんにちは。桑原晃弥です。

私はこれまで、トヨタの現場で培われた「大野耐一の教訓」から、スティーブ・ジョブズ、ウォーレン・バフェット、松下幸之助といった、いわゆる「怪物」と呼ばれた偉人たちの足跡や言葉を追い続けてきました。彼らの生き様や哲学を数多くの著作としてまとめてきた経験から、もし「人生で一番大事なことは何か?」と問われたら、私はこう答えます。

それは、「自分自身の『現場』に立ち続け、問いを止めず、変化(改善)を恐れないこと」、これに尽きると考えています。

3500字という限られた、しかし深い考察を許されるこの場を借りて、私が多くの偉人たちから学び、私自身の血肉としてきた「人生の本質」について、いくつかの視点からお話しさせていただきます。


1. 「動かなければ、何も始まらない」という真理

トヨタ式の生みの親の一人である大野耐一氏は、「知恵は現場で絞るものだ」と口を酸っぱくして言いました。また、スティーブ・ジョブズは「自分が明日死ぬとしたら、今日やることは本当にやりたいことか?」と自らに問い続けました。

彼らに共通しているのは、「思考」と「行動」が分かちがたく結びついている点です。

多くの人は、何かを始める前に「正解」を求めすぎます。「失敗したらどうしよう」「もっと効率的な方法があるのではないか」と立ち止まり、頭の中だけでシミュレーションを繰り返します。しかし、人生という名の「現場」において、動かずに得られる答えなど一つもありません。

私が取材や執筆を通じて確信したのは、成功者とは「特別な才能を持った人」ではなく、「誰よりも早く最初の一歩を踏み出し、誰よりも多く転んだ人」だということです。人生で一番大事なことの第一歩は、まず「やってみる」こと。トヨタ流に言えば「まず動いてみて、不具合が出たら直せばいい」のです。不具合こそが、改善のヒントであり、成長の種なのです。

2. 「なぜ(Why)」を5回繰り返す生き方

トヨタ式には「なぜを5回繰り返す」という有名な手法があります。これは単なる問題解決のツールではありません。私はこれこそが、人生を豊かにするための「哲学的な問い」であると捉えています。

人生において、私たちは往々にして「手段」を「目的」と勘違いしてしまいます。「お金を稼ぐこと」「地位を得ること」「人から認められること」……。それらはあくまで人生を構成する要素(手段)に過ぎません。

  • 「なぜ、私はこの仕事をしているのか?」
  • 「なぜ、私はこのことに苛立ちを感じるのか?」
  • 「なぜ、私はこの人と一緒にいたいのか?」

このように「なぜ」を繰り返していくと、最終的には自分の「核(コア)」となる価値観に突き当たります。偉人たちは、この「核」が非常に明快です。ジョブズにとっては「世界を変えるような素晴らしい製品を作ること」であり、バフェットにとっては「自分が理解できる価値に投資し続けること」でした。

人生で大事なのは、世間一般の物差しではなく、自分自身の「なぜ」に対する答えを持っていることです。その問いを止めたとき、人生はただの「ルーチンワーク」に成り下がってしまいます。

3. 「捨てる」勇気が本質をあぶり出す

私は数多くの成功者の名言を編纂してきましたが、彼らの多くは「足し算」ではなく「引き算」の達人でした。

スティーブ・ジョブズがアップルに復帰した際、最初に行ったのは製品ラインナップの9割をカットすることでした。ウォーレン・バフェットは、自分が理解できないハイテク株には(かつては)一切手を出さず、自分の「ストライクゾーン」に来るボールだけを待ち続けました。

人生において「一番大事なこと」を見つけるためには、「大事ではないこと」を捨てる勇気が必要です。

現代社会は情報に溢れ、私たちは「あれも大事、これも大事」という強迫観念に駆られています。しかし、時間は有限です。エッセンシャル思考(最小の努力で最大の成果を出す)にも通じますが、自分のエネルギーを一点に集中させなければ、何事も成し遂げることはできません。

「何をするか」を決めること以上に、「何をしないか」を決めること。この「選択と集中」こそが、人生の質を決定づけます。

4. 「言葉」の力を味方につける

ジャーナリストとして言葉を扱ってきた私にとって、「どのような言葉を自分に投げかけるか」は、人生を左右する極めて重要な要素です。

アドラー心理学では、人間の行動は「目的」によって決まると説きます。もしあなたが自分に対して「どうせ無理だ」「才能がない」という言葉を投げかけ続けていれば、脳はその言葉を証明するための証拠ばかりを集めるようになります。

逆に、本田宗一郎のように「失敗が人間を成長させる」と信じ、松下幸之助のように「自分は運が強い」と公言していれば、目の前の困難はすべて「成功へのプロセス」に書き換えられます。

言葉は、思考の枠組みを作ります。そして思考は行動を変え、行動は習慣を変え、習慣は運命を変えます。偉人たちの名言がなぜこれほどまでに人々の心を打つのか。それは、彼らが言葉によって自分の運命を切り拓いてきた「当事者」だからです。

人生で一番大事なことの一つは、自分を鼓舞し、進むべき道を照らしてくれる「自分だけの座右の銘」を持つことです。

5. 「利他」の精神が、結果として自分を救う

私がこれまでに見てきた「怪物」たちの多くは、一見すると強烈なエゴイストに見えるかもしれません。しかし、その根底には驚くほど純粋な「他者への貢献(利他)」の精神が流れています。

トヨタの「お客様第一」は単なるスローガンではありません。現場の工員一人ひとりが「後工程はお客様である」と考え、次へ最高のバトンを渡そうと必死になっています。松下幸之助の「水道哲学」も、良いものを安く大量に供給することで人々の生活を豊かにしたいという切なる願いから生まれました。

結局のところ、自分のためだけに頑張れる力には限界があります。しかし、「誰かのために」「社会のために」という目的が見つかったとき、人間は想像を絶する力を発揮します。

バフェットが資産のほとんどを寄付することを決めているのも、彼にとって富を蓄えることは「ゲームの結果」であり、その目的は社会への還元にあるからです。人生の終盤において、私たちが手元に残せるのは「自分が得たもの」ではなく、「自分が誰かに与えたもの」だけではないでしょうか。

6. 「今日」という現場を全力で生きる

最後に、最も基本的で、かつ最も困難なことをお伝えします。それは、「今、ここ」という現場を大切にするということです。

トヨタの改善に終わりがないように、人生にも完成はありません。私たちは常に「未完成のプロセス」の中にいます。だからこそ、将来の不安に怯えたり、過去の後悔に囚われたりするのではなく、今日一日の「現場」において、自分にできる最高の仕事をすること。

スティーブ・ジョブズは毎朝、鏡の中の自分に問いかけました。

「もし今日が人生最後の日だとしたら、私は今日やろうとしていることを本当にやりたいと思うだろうか?」

この問いかけは、私たちに「時間の有限性」を突きつけます。人生とは、1日1日の積み重ねであり、その1日をどう「改善」し、どう「納得」して終えるか。その連続こそが、後に振り返ったときに「良い人生だった」と言える唯一の道なのです。


結論:あなたにとっての「一番大事なこと」を見つけるために

私、桑原晃弥が考える「人生で一番大事なこと」をまとめれば、それは「自分自身の人生の経営者となり、知恵を絞り、変化を楽しみながら、歩みを止めないこと」です。

  • 現場(現実)を直視すること
  • 問い(Why)を持ち続けること
  • 不要なものを捨て、本質に集中すること
  • 良い言葉で自分を律すること
  • 誰かの役に立つ喜びを忘れないこと

これらの要素を、あなた自身の人生というキャンバスにどう描いていくか。それはあなたにしかできない「仕事」です。

偉人たちの言葉は、あくまで航海図に過ぎません。実際に船を出し、荒波を越えていくのはあなた自身です。たとえ失敗しても、それは「この方法ではうまくいかないという発見」に過ぎません。トヨタ流に言えば、そこからまた「改善」を始めればいいのです。

あなたの人生という現場に、今日も新しい知恵の光が差し込むことを願っています。まずは、今日この瞬間から、何か一つ「変えてみる」ことから始めてみませんか。


いかがでしたでしょうか。桑原晃弥としての視点から、人生の本質を語らせていただきました。