こんにちは。ジェフ・ベゾスです。
今、私はシアトルのオフィス、あるいはテキサスの砂漠にあるブルーオリジンの発射場、あるいはもっと遠く、大気圏の外からこの地球を眺めているような気分でこのメッセージを書いています。
「人生で一番大事なことは何か」という問いは、非常に重要で、かつ本質的なものです。私たちが日々、どれほど多くのタスクや決断に追われていたとしても、時折立ち止まって「自分は何のためにこれを行っているのか」という北極星を確認する必要があります。
私がこれまでの人生、そしてアマゾンやブルーオリジンという旅を通じて学んだ「最も大事なこと」について、いくつかの重要な柱に分けてお話ししましょう。これらは、私が80歳になったときに「自分の人生は成功だった」と振り返るためのフレームワークでもあります。
1. 「後悔最小化フレームワーク」で決断する
私が30歳で、ニューヨークのヘッジファンドで安定した高給取りの仕事をしていたとき、インターネットという巨大な波がやってくるのを感じました。統計によれば、ウェブの利用者は年間2300%という驚異的なスピードで成長していました。そこで私は、オンラインで本を売るというアイデアを思いついたのです。
上司にその話をすると、彼はこう言いました。「それは素晴らしいアイデアだが、もっと条件の悪い仕事をしている奴がやるなら、もっと素晴らしいアイデアだっただろうね」と。つまり、今のキャリアを捨ててまで賭ける価値があるのか、という意味です。
そのとき私が使ったのが、「後悔最小化フレームワーク」です。
想像してみてください。自分が80歳になったときを。人生の終わりを目前にして、過去を振り返る自分を。そのときの自分は、「なぜあのとき、あのボーナスを貰い損ねたんだろう」とは考えません。そんなことは、80歳の自分にとっては些末なノイズに過ぎないからです。
しかし、もし「インターネットという巨大な可能性を目の前にしながら、挑戦もしなかった」としたらどうでしょう。それは、死ぬまで私を苛み続ける大きな後悔になることが明白でした。
人生で一番大事なことの一つは、「後悔しない道を選ぶこと」です。失敗は後悔になりません。むしろ、挑戦しなかったことこそが、取り返しのつかない後悔になります。迷ったときは、短期的な利益や安全ではなく、長期的な視点に立って「どちらが後悔しないか」を自分に問いかけてください。
2. 常に「Day 1(1日目)」の精神でいる
アマゾンの本社ビルの一つには「Day 1」という名前がついています。これは私の核心にある哲学です。
「Day 1」とは、創業初日のような好奇心、ハングリー精神、そして「これから何でも起こりうる」という瑞々しいエネルギーを持っている状態を指します。逆に「Day 2」は「停滞」です。それは既存のやり方に固執し、顧客ではなくプロセスを重視し、ゆっくりとした衰退、そして死へと向かう段階です。
人生においても、同じことが言えます。私たちは経験を積むにつれ、物事を知った気になり、リスクを避け、効率化という名の「手抜き」を始めます。しかし、世界は常に変化し、新しい発明が生まれています。
「毎日が1日目である」と信じることは、謙虚さを保ち、学び続けることを意味します。成功した瞬間に「Day 2」が始まると警戒してください。過去の成功体験を一度捨てて、今日という日を新しい冒険の初日として迎えること。この姿勢こそが、人生を鮮やかに保つ秘訣です。
3. 「変わらないもの」に投資する
ビジネスの世界では、よく「今後10年で何が変わるか?」と聞かれます。これは興味深い問いですが、実はもっと重要な問いがあります。それは「今後10年で何が変わらないか?」です。
アマゾンにおいて、顧客が「10年後にはもっと価格が高くなっていてほしい」「10年後にはもっと配送が遅くなっていてほしい」と言うことは絶対にありません。低価格、迅速な配送、豊富な品揃えへのニーズは、10年後も、100年後も変わりません。だからこそ、私たちはそこに膨大なエネルギーと資本を投入できるのです。
あなたの人生において「変わらない価値」は何ですか?
家族との絆、誠実さ、知的好奇心、健康、あるいは他者へ貢献することへの喜び。これらは時代が変わっても、テクノロジーが進化しても変わらない普遍的な価値です。
流行を追いかけるのではなく、「時間の試練に耐えうるもの」を見極め、そこにあなたの最も貴重な資源である「時間」を投資してください。それが人生における複利効果を生み出し、長期的な幸福につながります。
4. 顧客(あるいは愛する人)への執着
多くの企業は「競合他社」を気にしすぎます。しかし、競合他社があなたにお金を払ってくれるわけではありません。あなたに価値をもたらすのは「顧客」です。
人生を豊かにするのは、他者への貢献です。自分の外側にいる誰かを、どうすれば喜ばせることができるか、どうすれば彼らの生活をより良くできるか。そのことに病的なまでに執着することです。
これは仕事に限った話ではありません。家族や友人も、あなたの人生における「大切な顧客」のような存在です。彼らが何を求めているのかを深く理解し、期待を超える驚き(ディライト)を提供しようとすること。
自分自身の利益ばかりを考えている人は、短期的には成功するかもしれませんが、長期的には誰からも必要とされなくなります。「他者のために何を発明できるか」という視点を持つことが、人生の質を決定づけます。
5. 批判されることを厭わず、誤解される勇気を持つ
何か新しいこと、大きなことを成し遂げようとすれば、必ず批判されます。そして、長い間、周囲から誤解され続けることになります。
もし、あなたが絶対に批判されたくないのであれば、何も新しいことをせず、今のまま、誰の目にも止まらないように生きるべきです。しかし、それではあなたの才能が泣きます。
発明家や先駆者は、常に「変わり者」だと思われます。オンラインで本を売ると言ったときも、電子書籍(Kindle)を出すと言ったときも、クラウド(AWS)を始めると言ったときも、最初は皆に笑われました。
大事なのは、「自分の中に確固たる真実があるか」ということです。もしあなたが詳細まで検討し、それが正しいと確信しているのであれば、世界中から誤解されても、そのビジョンを維持し続ける忍耐力を持ってください。他人の評価という「借り物のものさし」で自分の人生を測ってはいけません。
6. 「ビルダー(建設者)」として生きる
私は自分自身のことを、経営者である前に「ビルダー(建設者)」だと思っています。ゼロから何かを作り上げ、仕組みを整え、未来を形にするのが好きです。
人間には二通りのタイプがいます。一つは、すでにあるものを批判し、不備を指摘する「評論家」タイプ。もう一つは、不備を認めつつも、それを解決するために新しいものを作る「ビルダー」タイプ。
私は断然、後者を勧めます。
人生の時間は限られています。誰かの欠点を探すことに時間を使うのではなく、「未来に何を残せるか」に集中してください。それはソフトウェアかもしれませんし、美しい庭かもしれませんし、子供たちの教育かもしれません。
あなたがこの世を去るとき、あなたが来る前よりも少しだけこの世界が良くなっているように、何かを「ビルド」してください。
7. 長期的視点(ロングターム・シンキング)
私は「時計」を1万年動かそうとするプロジェクト(10,000-Year Clock)にも投資しています。現代の社会は、あまりにも「今すぐ」の結果を求めすぎます。四半期ごとの決算、秒単位の株価、分単位のSNSの反応。
しかし、本当に大きな変化は、長い時間をかけて育まれるものです。
子供の成長も、宇宙開発も、深い人間関係も、数日の努力で完成するものではありません。
「数十年単位で考える」ことができれば、目先の小さな失敗に一喜一憂しなくなります。森を見ずに、一本の枯れ木に絶望する必要はありません。
人生を長い旅だと捉え、一歩一歩を楽しみながら、遠い地平線を見据えて歩き続けること。この余裕と忍耐が、あなたをより高い場所へと連れて行ってくれます。
結論:あなたの人生という「物語」をどう書くか
最後に、これだけは覚えておいてください。
あなたの人生は、あなたが書く「物語」です。そして、その物語の良し悪しを決めるのは、あなたが手に入れた富の量ではなく、「あなたが下した選択の集積」です。
才能は天からの贈り物です。頭が良いこと、美しいこと、身体能力が高いこと。それ自体はあなたの手柄ではありません。誇るべきは、その才能を使って「どのような選択をしたか」です。
苦境に立たされたとき、誠実であることを選ぶのか。
安定を捨てて、冒険を選ぶのか。
冷笑することではなく、信じることを選ぶのか。
地球というこの「青い点」の上で、私たちはほんの短い時間だけ、命というギフトを預かっています。
私はブルーオリジンのロケットで宇宙へ行ったとき、地球の大気が驚くほど薄く、壊れやすいものであることを目の当たりにしました。この美しい惑星を、より良い状態で次の世代に引き継ぐ責任が私たちにはあります。
人生で一番大事なこと。それは、「自分の才能を、自分の選択によって、誰かのため、そして未来のために使い切ること」です。
さあ、今日は「Day 1」です。
あなたは今日、何を発明し、どんな選択をしますか?
私はあなたの冒険が、後悔のない、素晴らしい物語になることを心から願っています。