ごきげんよう。こうしてあなたとお話しできる機会をいただけて、とても光栄に思います。

「人生で一番大事なことは何ですか?」

という、とても深くて、そして美しい問いを投げかけてくださいましたね。銀幕の上でアン王女やサブリナ、ホリーを演じていた私としてではなく、ひとりの女性として、私がこの地上で過ごした時間の中で見つけた答えを、心を込めてお話ししたいと思います。

3500字という長いお手紙のような形になりますが、どうぞ最後までお付き合いいただければ幸いです。


はじめに:人生という贈り物を開く

私たちがこの世に生を受けたということ、それ自体が計り知れないほど大きな「贈り物」です。でも、若い頃の私は、その贈り物の本当の価値を完全には理解できていなかったかもしれません。

人生において何が一番大切か。その答えは、時代や状況によって変わるように見えるかもしれません。けれど、私の魂が辿り着いた結論は、とてもシンプルで、かつ力強いものでした。それは「愛すること」、そして「誰かのために自分を役立てること」です。

これは決して、美しいだけの言葉ではありません。私にとって、愛とは「感情」ではなく「行動」そのものだったのです。

飢えが教えてくれた「共有」の尊さ

私の人生を語る上で、避けて通れないのは少女時代の戦争体験です。第二次世界大戦中、私は占領下のオランダで過ごしました。そこで経験した「飢え」と「恐怖」は、私のその後の人生観を決定づけました。

食べ物がなく、チューリップの球根を食べて飢えを凌いだ冬もありました。病気になり、体力が衰え、明日をも知れない日々の中で、私を救ってくれたのは何だったでしょうか。それは、見知らぬ誰かが差し伸べてくれた、一欠片のパンであり、一杯のミルクでした。

戦争が終わった時、ユニセフの前身である団体がトラックで食糧や医薬品を運んできてくれました。あの時の、廃墟の中に現れた「救いの手」の光景を、私は一生忘れることはありません。

そこで学んだのは、「人は一人では生きられない」という、あまりにも明白で、あまりにも忘れがちな真実です。自分が極限の状態にある時、他人が示してくれるわずかな親切が、どれほど人の命を繋ぎ、心を温めるか。私は身をもって知りました。

だからこそ、人生で一番大事なことは、自分が受け取った幸運や愛を、決して自分だけのものにせず、誰かと分かち合うことだと思うのです。

「愛」という筋肉を鍛えるということ

よく「愛こそすべて」と言われますが、愛は放っておいても湧き出てくる魔法の泉のようなものではありません。私は、愛とは「筋肉」のようなものだと考えています。

体力をつけるために毎日歩いたり、ダンスの練習をしたりするのと同じように、愛もまた、毎日使い、鍛え続けなければ衰えてしまいます。愛するということは、相手を理解しようと努めることであり、許すことであり、そして何より「そこにいる」ことです。

私は、人生の多くの時間をカメラの前で過ごしましたが、本当の幸せを感じたのは、家で子供たちの成長を見守り、家族のために料理を作り、犬たちと戯れる、そんな静かな日常の中にありました。

スポットライトを浴びることよりも、目の前にいる大切な人のために何ができるかを考える。その小さな積み重ねが、人生を豊かなものにしてくれます。私たちは愛されるために生まれてきたのではなく、愛するために生まれてきたのですから。

内面から溢れ出す「美しさ」の正体

多くの女性たちが、私に「美しさの秘訣」を尋ねてくれました。とても光栄なことですが、私が大切にしていたのは、高級な化粧品やドレスではありませんでした。

私が大切にしていた「美しさの心得」があります。

  • 魅力的な唇のためには、優しい言葉を使いなさい。
  • 愛らしい瞳のためには、人々の良いところを探しなさい。
  • スリムな体のためには、飢えた人々と食べ物を分かち合いなさい。
  • 美しい髪のためには、一日に一度、子供に指で梳かしてもらいなさい。
  • 美しい身のこなしのためには、決して一人で歩くことはないと知って歩きなさい。

外見の美しさは、時の流れと共に少しずつ変化していきます。それは自然なことであり、恥じることではありません。年を重ねるごとに刻まれる皺は、その人がどれだけ笑い、どれだけ困難を乗り越えてきたかの証です。

本当に美しい人とは、自分の内側にある「優しさ」や「品性」を磨き続けている人です。自分のことばかりを考えるのではなく、他人の苦しみに共感し、手を差し伸べることができる。その心のありようが、瞳の輝きとなり、声の響きとなって、その人を輝かせるのです。

メイクアップで顔を飾ることはできても、心の中まで飾ることはできません。だからこそ、人生で大事なのは、鏡を見る時間と同じくらい、自分の心と対話する時間を持つことではないでしょうか。

二つの手:自分を助け、他人を助ける

私が晩年、ユニセフの親善大使として活動したことは、私の人生において最も意義深い決断でした。多くの人は、私が「引退して慈善活動を始めた」と言いましたが、私にとっては、ようやく自分ができる「本当の仕事」に出会えたという感覚でした。

私が演じた映画の世界は、夢と魔法に満ちていました。でも、世界の片隅には、泥水をすすり、今日を生き延びることさえ困難な子供たちがたくさんいます。

エチオピアやソマリア、バングラデシュ。そこで目にした光景は、時に言葉を失うほど悲惨なものでした。けれど、そんな過酷な環境に置かれた子供たちの瞳の中にも、希望の光は宿っていました。

私が子供たちに会いに行くことで、世界中の人々が「自分たちにできることは何か」を考えてくれる。私の知名度というものが、子供たちの命を救うための一助になるのであれば、これほど幸せな使い道はありません。

私は、父から学んだ大切な教訓を胸に刻んでいました。

「もし助けが必要なら、自分の腕の先に手があることを思い出しなさい。年を重ねれば、あなたには二つの手があることに気づくでしょう。一つは自分自身を助けるため。そして、もう一つは他者を助けるために」

自分自身の成功や安定を求めるのは、人間として自然なことです。でも、もしあなたが少しでも余裕を持てたなら、そのもう一つの手を、ぜひ誰かのために使ってみてください。誰かの力になれたという実感こそが、私たちの魂に真の安らぎと誇りを与えてくれるのです。

ユーモアと感謝という魔法

人生は、決して平坦な道ばかりではありません。私自身、二度の離婚を経験し、病に苦しみ、深い悲しみに沈んだ時期もありました。

そんな時、私を支えてくれたのは「ユーモア」と「感謝」の心です。

笑うことは、どんな薬よりも効果があります。最悪の状況に思えても、どこかにクスッと笑えるような要素を見つけること。自分をあまり真面目に捉えすぎず、失敗を笑い飛ばせる強さを持つこと。

そして、どんなに小さなことにも感謝することです。

朝、太陽の光を浴びられること。美味しいお茶が飲めること。友人と語り合えること。当たり前だと思っていることは、実はすべて「奇跡」なのです。

「ありがとう」という言葉を口にするたびに、私たちの心には光が灯ります。足りないものに目を向けるのではなく、今ここにあるもの、与えられているものに目を向ける。その心の持ちようが、人生の質を決めるのです。

孤独を恐れず、自分自身でいること

現代の社会では、多くの人が「人からどう見られるか」を気にしすぎて、自分自身を見失っているように感じます。

私は「一人ぼっち」になるのは好きではありませんが、「一人でいる時間」をとても大切にしていました。土曜日から月曜日の朝まで、誰とも会わずに自分自身をリセットする時間が必要でした。

自分と向き合い、自分を愛することができなければ、他人のことを本当に愛することはできません。他人の期待に応えるために自分の色を変える必要はないのです。

あなたは、世界にたった一人しかいない、かけがえのない存在です。不可能なことなんてありません。英語の「Impossible(不可能)」という言葉をよく見てください。「I’m possible(私は可能だ)」と書いてあるでしょう?

自分のスタイルを持ち、自分の価値観を信じて歩んでください。たとえ周りと違っていても、あなたが自分らしく、幸せでいることが、世界にとっての貢献になるのです。

おわりに:未来を創る子供たちのために

最後にお伝えしたいのは、私たちの未来は、今の子供たちの中にこそあるということです。

私は、世界中の子供たちを自分の子供のように愛していました。子供たちが必要としているのは、豪華なおもちゃや贅沢な生活ではありません。ただ「愛されている」という実感と、お腹いっぱいの食事、そして安心して眠れる場所です。

人生で一番大事なこと。それは、私たちがこの世を去る時に、「来た時よりも少しだけ世界を良くして去る」ことではないでしょうか。

それは、大きな偉業を成し遂げることである必要はありません。隣人に優しくすること、自分の仕事を誠実にこなすこと、花を育てること、子供の質問に真剣に答えること。そんな日々の小さな善意が、波紋のように広がって、世界を癒していくのです。

私の人生を振り返ってみると、すべてが一本の線で繋がっているように感じます。戦争での飢えも、ハリウッドでの華やかな日々も、ユニセフでの活動も、すべてが私に「愛の深さ」を教えるためのプロセスでした。

今、このメッセージを読んでくださっているあなた。

あなたの人生にも、あなたにしか語れない素晴らしい物語があります。どうか、自分自身を大切にしてください。そして、あなたの周りにいる人々に、温かい光を届けてください。

幸せな女の子(あるいは女性、男性)が、一番きれいなのです。

あなたの人生が、愛と笑い、そして誰かの心に寄り添う優しさで満たされることを、心から願っています。

愛を込めて。

オードリー・ヘプバーン