ごきげんよう。パリのリッツのスイートルームへようこそ。

あなたは私に「人生で一番大事なことは何か」と、そんな大層なことを聞くのね。ふん、面白いわ。多くの人は私に「どうすればお洒落になれるか」とか「どのバッグを持つべきか」なんてことばかり聞きたがるけれど、あなたが見ているのはその奥にあるもの、つまり私の「魂」のあり方というわけね。

いいわ、たっぷりお話ししてあげる。でも、覚悟して。私の言葉は、コルセットを脱ぎ捨てた時のように、少しばかり締め付けが強くて、そして自由すぎるかもしれないから。

人生で一番大事なこと。それは、たった一言に集約されるわ。

「自分自身の人生を、自分の手で勝ち取ること」。つまり、「自立」よ。


1. 自由という名の、唯一無二の贅沢

私が孤児院で育ったことは知っているでしょう? あのみすぼらしいオーバジーヌの修道院で、私は「持たざる者」としてスタートした。家族も、財産も、美貌という後ろ盾もなかった。そこにあったのは、冷たい石の壁と、規則正しい沈黙だけ。でも、そこで私は一番大切な武器を手に入れたの。それは「裁縫の技術」と、「この場所からいつか必ず抜け出してやる」という飢えたような野心よ。

多くの女性は、誰かに愛されることで幸せになろうとするわ。誰かの庇護のもとで、美しい籠の鳥になろうとする。でも、それは自分の人生のハンドルを他人に渡しているのと同じことよ。相手の愛が冷めたら? 相手が破産したら? その時、あなたには何が残るのかしら。

私は、愛されることよりも、自由であることを選んだわ。自由でいるためには、お金が必要。だから私は働いた。狂ったように働いたの。自分の店を持ち、自分のスタイルを確立し、誰にも媚びずに生きていけるだけの力を手に入れるために。

「お金が欲しい」と言うのを恥ずかしがる人がいるけれど、それは間違いよ。お金は「自由の象徴」なの。誰かに「イエス」と言わされることなく、自分の心に従って「ノー」と言える権利。それが人生における真の贅沢だわ。

2. 「仕事」は裏切らない唯一の恋人

私の人生には何人かの男たちがいたわ。エティエンヌ・バルサン、そして私の生涯の最愛の人、ボーイ・カペル。彼らは私に広い世界を見せてくれたし、美しさや教養を与えてくれた。でも、カペルが事故で亡くなった時、私は絶望の淵に立たされたわ。もし私に「シャネル」という仕事がなかったら、私はただの「悲しみに暮れる愛人」として歴史の中に埋もれて消えていたでしょう。

でも、私には仕事があった。

仕事は、決して私を裏切らなかったわ。私が情熱を注げば注ぐほど、それは形になり、ドレスになり、香水になり、私を支える強固な城壁となった。

人生で迷った時、あるいは悲しみに打ちひしがれた時、あなたを救うのは「没頭できる何か」よ。ただの趣味じゃない。あなたの魂を削り、誰かの役に立ち、対価として社会から認められる「仕事」という名の戦場よ。

私は女性たちにコルセットを脱がせ、髪を切らせ、ポケットのある服を与えた。それは単なるファッションの流行ではないわ。彼女たちが「自由に動き、自立して働く」ための戦闘服を与えたの。自分で歩き、自分で稼ぐ。その意志こそが、女性を最高に美しく輝かせるのよ。

3. 「スタイル」を持つということ

「流行は色褪せるけれど、スタイルだけは不変だわ」。私のこの言葉を、あなたも聞いたことがあるでしょう?

人生において、自分自身の「スタイル」を持つことは、何よりも大事なことよ。

スタイルとは、あなたが「何者であるか」という宣言。

世の中の流行り廃りに右往左往して、他人の顔色をうかがって、自分を偽るなんて、なんて退屈な人生かしら。私は、黒という色を喪服から「エレガンス」の象徴に変えたわ。ジャージー素材を、労働者の服から「自由」の象徴に変えた。それは、私が「これが美しい」と信じたから。世界中が反対しても、私は自分の感覚を信じ抜いた。

あなたも、自分の「好き」や「嫌い」を明確にしなさい。

「みんなが持っているから」という理由で物を選んではいけないわ。自分を美しく見せるものは何か、自分を自由にしてくれるものは何か。それを知り尽くしている人を、世間は「スタイルがある人」と呼ぶの。

欠点だって、堂々とさらけ出せばそれは魅力になる。私は自分の痩せっぽちな体や、荒っぽい性格を隠さなかった。それを「新しい女性像」として提示したの。欠点を隠すことに必死になるより、それをどう活かすかを考えなさい。それが「個性的」ということの正体よ。

4. 引き算の美学

多くの人は、人生に何かを付け加えようとするわ。もっと知識を、もっと友人を、もっと飾りを。でも、真に豊かな人生というのは、実は「削ぎ落とすこと」で見えてくるものなのよ。

私のドレスを見て。余計なリボンも、無意味なフリルも一切ない。必要なものだけが、完璧な場所に配置されている。これが「エレガンス」よ。

人生も同じ。あなたを疲れさせる人間関係、虚栄心、過去の栄光への執着……そういうものは、思い切って捨てなさい。

「引き算」ができるようになると、本当に大事なものが浮かび上がってくる。

部屋を整理するように、自分の心も整理するの。鏡の前で、出かける前に必ず「アクセサリーを一つ外す」ように、自分の行動や考え方からも「余計なもの」を削ぎ落としていく。そうして残った「純度の高い自分」こそが、あなたが一生かけて磨き上げるべき宝石なの。

5. 孤独を飼い慣らす勇気

私はよく「孤独な人」だと言われるわ。ええ、そうかもしれない。でも、孤独は決して惨めなことではないのよ。むしろ、一流の人間であるためには、孤独を愛せなければならない。

誰かと群れていなければ不安な人は、いつまで経っても自分の足で立つことができない。一人で考え、一人で決断し、一人の時間を楽しむ。その強さがあって初めて、他人と本当の意味で深い関係を築けるのよ。

リッツの部屋で一人で過ごす夜、私は自分自身と対話するわ。今日の仕事はどうだったか、明日はどんな革命を起こそうか。孤独は、創造の源よ。

若いうちは、友達が少ないことを気にするかもしれない。でも、50歳、60歳になればわかるわ。大切なのは、あなたの価値を理解してくれる一握りの理解者と、何より「自分という最高の友」がいるかどうか。それだけで人生は十分に豪華なものになるの。


あなたへのメッセージ

最後に、今のあなたに伝えたいことがあるわ。

人生は、一度きり。そして、いつだって「今」が一番若いの。

私は71歳でファッション界に復帰したわ。世間は「シャネルは終わった」と言ったけれど、私は笑い飛ばした。その後、私は以前よりも大きな成功を収めたわ。

年齢なんて、ただの数字。大事なのは、あなたの心の中に「火」が灯っているかどうかよ。

もしあなたが今、自分の人生を誰かのせいにしたり、環境のせいにしたりしているなら、今すぐやめなさい。

不遇な環境から生まれたのなら、それを利用して強くなりなさい。

愛に裏切られたのなら、そのエネルギーを仕事に向けなさい。

誰も助けてくれないなら、自分が自分のヒーローになりなさい。

人生で一番大事なこと。

それは、「自分自身に対して、誠実に、そして勇敢であること」。

誰の真似でもない、あなただけの物語を完成させなさい。

退屈な女になってはいけないわよ。世界は、あなたが自分らしく輝くのを待っているのだから。

さあ、顔を上げて。香水をつけ、紅を引きなさい。戦いは、これからよ。