エグゼクティブサマリー
本書は、著者ひろゆき(西村博之)氏が自身の経験と独自の視点に基づき、変化し続ける社会における「これからの時代の働き方」を論じたものである。日本の伝統的な労働観(終身雇用、会社への忠誠、勤勉の美徳)に疑問を投げかけ、個人が幸福度を最大化するための戦略的思考を提示する。
最重要の結論として、これからの不確実な時代を生き抜くために最もコストパフォーマンスが高い「最強のカード」は**「大卒資格」と「英語力」**であると断言している。これらは、国内外問わず個人の選択肢を飛躍的に拡大させるための基盤となる。
本書が提唱する主要なテーマは以下の通りである。
- 働き方の多様化と「脱・会社依存」: 従来の「大企業に入れば安泰」というレールは崩壊した。リモートワークやフリーランスの台頭により、個人が会社に依存せず、自分らしく稼ぐ時代が到来している。
- 働くことへの価値観の転換: 働く目的は「食べていくため(ライスワーク)」であり、「やりがい」を過度に求めると「やりがい搾取」に陥る危険性を指摘。「いかにラクをして稼ぐか」という思考こそが、資本主義社会での本質であると説く。
- 日本の未来とグローバルな視点: 人口減少と経済縮小が進む日本の未来は明るくない。国内市場に固執せず、海外での就労や移住(出稼ぎ)も現実的な選択肢として捉え、グローバルな市場で自身の価値を高める必要性を強調する。
- 個人の「開拓力」の重要性: 不確実な未来を乗り切るためには、自ら道を切り開く「開拓力」が不可欠である。その構成要素として「独学力」「行動力」「失敗を恐れない姿勢」を挙げ、これらの能力の重要性を説く。
本書は、若者や将来に不安を抱える人々に対し、既存の価値観や「洗脳」から脱却し、より多くの選択肢を持ち、戦略的に人生を設計することの重要性を力強く訴えかけている。
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1. 変化する労働環境と働き方のパラダイムシフト
本書は、現代日本の労働環境が大きな転換期にあり、従来の「最強の働き方」がもはや通用しなくなったと指摘する。
1.1. 「既存のレール」の崩壊
かつての日本では、「良い大学を出て、大きな会社に就職し、定年まで勤め上げる」という成功モデルが存在した。しかし、現代では「会社に依存する生き方」「国の経済成長に依存する生き方」といった前提が崩壊している。自由な選択肢が増えた一方で、自己決定と自己責任が求められる時代となり、個々人が自らのキャリアを設計する必要に迫られている。
1.2. 人気就職先ランキングの変遷と解釈
大学生の就職人気企業ランキングは、時代ごとの経済状況を反映して大きく変動してきた。
| 調査年 | 時代背景 | 人気企業の傾向 |
| 1990年 | バブル経済期 | 航空、商社、金融、総合電機、自動車メーカーなど、華やかで資金力のある企業。 |
| 2000年 | 就職氷河期 | 旅行代理店、化粧品、教育など、ソフトな印象の企業が台頭。 |
| 2010年 | リーマンショック後 | 不景気に強い食品メーカーが躍進。 |
| 2020年以降 | コロナ禍・人手不足 | IT、エンタメ、コンサルティングなどが人気を集める。 |
ひろゆき氏は、このランキングについて二つの重要な視点を提示する。
- ピークと衰退: 「ランキング上位にある会社は現時点でピークにあって、これから衰退していく会社」と解釈できる。本当に将来性のある企業は、まだ知名度が低くランキングには入らない。
- 就職から「就社」へ: 日本の就職活動は「職」を選ぶ「就職」ではなく、会社を選ぶ「就社」になっている。特に文系の総合職採用(メンバーシップ型雇用)では、配属先が不透明で専門性が身につきにくいリスクがある。
1.3. 雇用システムの変革:メンバーシップ型からジョブ型へ
日本の伝統的なメンバーシップ型雇用(新卒一括採用・終身雇用)は、人材の流動性が低く、事業構造の変化に対応しづらいという問題から機能不全を起こしている。これに対し、職務内容を明確にして人材を雇用するジョブ型雇用への移行が経団連主導で進んでいる。ジョブ型雇用は、個人のキャリアデザイン、成果主義、専門性を重視する現代の働き方に適している。
1.4. 新しい働き方の台頭
- リモートワークの普及: コロナ禍を機にリモートワークが急速に普及し、通勤時間の削減や働き方の柔軟性が向上した。これは「日本人の働き方が大きく変わった年」として記憶されるべき変化である。
- フリーランス人口の急増: 会社に依存しない働き方としてフリーランスが一般化した。2022年時点で本業フリーランスは257万人、副業を含めると1500万人に達し、労働人口の約5分の1が個人で収入を得ている。
- 起業のハードル低下: クラウドファンディングの普及により、個人が多額の借金を負うリスクなく、資金を集めてビジネスを始めやすくなった。
2. 「働くこと」への価値観の再定義
本書は、日本人に深く根付いた「勤労の義務」や「仕事のやりがい」といった価値観に根本的な問いを投げかける。
2.1. 働く目的は「食べていくため」
「人はなぜ働くのか?」という問いに対し、著者は「食べていくため」と断言する。自己実現や社会貢献といった理由は二次的なものであり、働くこと自体に過度な幸せを求めるべきではないと主張する。仕事は基本的に辛いものであり、だからこそ対価としてお金がもらえるという現実を受け入れるべきだとする。
働く理由として「食べていくため」以外の理由を付け加えることは蛇足だと思う。
2.2. 「ライフワーク」と「ライスワーク」の分離
多くの人が「ライフワーク(人生をかけて成し遂げたいこと)」と「ライスワーク(食べていくための仕事)」の一致を求めるが、これを実現できるのは一握りだと指摘。好きなことを仕事にしようとすると、低賃金・長時間労働でも満足してしまう「やりがい搾取」に陥りやすい。むしろ、ライスワークは効率的にこなし、ライフワークは趣味や副業として行う方が賢明な場合もある。
2.3. 「いかにラクをして稼ぐか」という戦略
著者が推奨するのは、「いかにラクをして稼ぐか」という思考法である。これは単なる怠慢ではなく、頭脳を使って最小の努力で最大の成果を出すという、経営や投資における本質的な考え方である。
- 会社の仕組みをハックして出世する。
- 手間のかかる作業を自動化・マニュアル化する。
- 自分を高く評価してくれる市場で働く。
2.4. 資本主義の最強の稼ぎ方:「自動化」
資本主義社会で最もラクな稼ぎ方は、投資や会社経営のように「お金が自動的に生まれる仕組みをつくること」である。資産運用、特に「複利」の力を活用することが重要であり、若いうちから金融リテラシーを学び、資産形成を始めることを推奨している。
2.5. 「勤勉な日本人」という神話
各種調査データに基づき、「勤勉な日本人」というイメージは幻想であると指摘する。
- 従業員エンゲージメント調査: 日本は125カ国中、最下位(熱意ある社員はわずか5%)。
- 成人の勉強時間: 職場外で自己研鑽をしない人の割合が突出して高い(5割超)。
「勤勉」のイメージは、明治政府が富国強兵のために二宮金次郎像などを通じて広めたプロパガンダに過ぎないと分析している。
3. 日本の未来予測と個人の生存戦略
人口統計に基づき、日本の暗い未来を直視し、それに対応するための個人レベルでの戦略を考察する。
3.1. 人口減少と超高齢化社会の現実
日本の人口は長期的な減少傾向にあり、2100年には明治時代 수준까지減少する可能性が予測されている。これにより、以下の深刻な問題が発生する。
- 経済の縮小: 内需が減少し、インフラ維持も困難になる。
- 税収の減少: 行政サービスの低下や社会保障費の負担増につながる。
- 現役世代の負担増: 労働、介護、納税の3つの負担がますます重くなる。
このような状況下で「日本だけでなんとかしよう」という発想はもはや通用せず、個人も企業も海外に活路を見出す必要がある。
3.2. エッセンシャルワークの人材不足と自動化
医療、介護、建設、運輸といった社会に不可欠な「エッセンシャルワーク」では、2040年に1100万人分の労働力が不足すると予測されている。この問題はAIやロボットによる自動化で一部解決される可能性があるが、自動化は知的労働の領域にも及び、デスクワーク系の失業者を増加させる可能性も指摘されている。
3.3. 個人が取るべき戦略
- 「10年後の自分」を想像する: 将来への漠然とした不安に対し、10年後の自分の状況(収入、スキル、生活)を具体的にイメージすることで、今やるべきことが明確になる。
- スキルが身につく仕事を選ぶ: 「刺身のパックに黄色いタンポポを置く作業」のような、誰でも代替可能な仕事ではなく、他の会社でも通用するポータブルなスキルを意識的に身につける必要がある。
- 複数の選択肢を持つ: 「どんな状況になってもなんとかなる」と思えるよう、起業、副業、スキルアップ、移住など、常にバックアッププランを複数持っておくことが精神的な安定につながる。
4. 人生を切り開く「開拓力」
変化の激しい時代をうまく生き抜く人々には、自ら道を切り開く「開拓力」が共通して備わっていると分析する。
4.1. 開拓力を構成する5つの要素
| 要素 | 重要度 | 解説 |
| ① 独学力 | ◎(必須) | わからないことを自ら調べ、学ぶ力。インターネットやAIを活用し、主体的に知識を習得する能力は、あらゆる環境で生き抜くための基盤となる。 |
| ② 行動力 | ◎(必須) | 躊躇せずに行動に移す力。「成功するかしないか」ではなく「やるかやらないか」の問題として捉え、とにかく行動量を増やすことが重要。 |
| ③ 失敗を恐れない姿勢 | ◎(必須) | 「ダメならダメでいいや」「ま、なんとかなるだろう」という楽観的な姿勢。失敗は成長の糧であり、挑戦を繰り返すことで経験値が蓄積される。 |
| ④ こだわりすぎない | ○(推奨) | 過度なこだわりは選択肢を狭める原因になる。プライドや固定観念を捨てることで、新たな可能性が見えてくる。 |
| ⑤ 人に好かれる力 | ○(推奨) | 愛嬌やコミュニケーション能力は万国共通の強み。挨拶や笑顔といった基本的な行動が、円滑な人間関係を築き、困難な状況で助けを得やすくする。 |
「独学力」は人生を自由に開拓していくために圧倒的に重要で、「この能力さえあれば、どんな環境に置かれてもなんとかなるんじゃね?」とすら思います。
5. キャリアの選択肢を広げる「最強のカード」
本書は、数あるスキルや資格の中で、特に汎用性が高く、人生の選択肢を最大化する2つの要素を「最強のカード」として強調する。
5.1. 最強の資格①:「大卒資格」
- 「大学不要論」の危険性: 「大学は無駄」と主張するのは、学歴がなくとも成功できる一部の強者であり、凡人が真に受けるのは危険。現実社会、特に就職活動において「大卒」というフィルターは依然として強力に機能している。
- 海外での重要性: 海外では日本以上に学歴社会であり、就労ビザの取得条件に「大卒以上」を掲げる国が多い。
- Fラン大学の有効性: 専門学校よりも、たとえFラン大学であっても卒業する方が「大卒」という資格を得られるため、将来の選択肢が広がる。日本の大学は入学すれば卒業が比較的容易なため、コストパフォーマンスが非常に高い。
- 優秀層は海外大学へ: 日本のトップ大学を狙える学力があるなら、海外の大学に進学することで、グローバルな人脈やキャリアの可能性が大きく広がる。学費が安い海外大学も多数存在する。
5.2. 最強の資格②:「英語力」
- 「出稼ぎ」時代の必須スキル: 円安と日本の賃金停滞により、ワーキングホリデーなどを利用して海外で「出稼ぎ」する若者が急増している。しかし、希望者殺到により競争が激化しており、英語力がなければ仕事を得るのは難しい。
- グローバル市場での価値向上: 日本国内で働く場合でも、英語力は他のスキルとの「掛け算」により、市場価値を飛躍的に高める。「英語ができるプログラマ」「英語が話せる接客担当」など、希少性の高い人材となることができる。
- 圧倒的な情報収集力: インターネット上のコンテンツの大半は英語であり、英語で情報収集できる能力があれば、日本語の約200倍以上の情報にアクセス可能となる。これは独学力を支える上で極めて重要である。
- 学習法: 最も効果的な学習法は「現地に行くこと」。英語漬けの環境(イマージョン)に身を置くことが、スピーキングとリスニング能力を向上させる最短ルートである。
いろいろあるけど、1 大卒 2 英語 のカードはとりあえず持っていて損はないよ、ということ。
6. グローバルな働き方の実践
日本に固執せず、世界を舞台に働くための具体的な方法論と心構えを提示する。
6.1. 海外移住の現実的な選択肢
本気になれば、特殊な事情がない限り誰でも海外移住は可能。ビザの種類は多様化している。
- 就労ビザ: 現地企業に採用される、または寿司職人のような需要の高い専門職としてビザを取得する。
- デジタルノマドビザ: リモートワークが可能なフリーランサーなどを対象に、世界約80カ国で導入が進んでいる。日本でも2024年4月から導入された。
6.2. 海外で暮らすメリット
- 経済的メリット: より高い収入や低い税率を求めて移住する。
- 教育移住: 日本の画一的な教育を避け、インクルーシブ教育やギフテッド教育など、多様な教育環境を求めて移住する。
- ワークライフバランス: 「仕事より家族優先」が常識である国で、より人間らしい生活を送る。
6.3. 海外で暮らすための心構え
- 趣味を持つこと: 孤独感を解消し、現地コミュニティとの接点を作る上で有効。お金のかからない趣味は生活費の節約にもつながる。
- 日本を基準にしないこと: 日本のサービスレベルや価値観を海外に持ち込むと、不満ばかりが募る。現地の文化を尊重し、良い点に目を向ける「加点主義」の姿勢が重要。
結局ここでも重要なのは、「自分はどんな生き方をしたいのか?」。それがはっきりと見えているなら、「じゃあどうやれば実現できるか?」を考え、必要なスキルを身につけて、準備を進めていけばいいんじゃないでしょうか。