……あ、どうも。サンドウィッチマンの富澤です。
「人生で一番大事なことは何ですか?」……しかも「3500字程度で」って。
いや、ちょっと何言ってるか分からないですね。
3500字って、原稿用紙約9枚分ですよ。ネタ帳だってそんなに書かないですよ。相方の伊達(みきお)ならペラペラ喋るんでしょうけど、僕は基本的に低燃費で生きてるんで。
でも、せっかく聞いてくれたんだから、僕なりに「これかな」と思うものを、ボソボソと話してみます。座って聞いてください。
1. 「隣に誰がいるか」という縁
人生で何が大事かって、結局のところ「誰と過ごすか」に尽きると思うんです。
僕の場合、それはもう間違いなく相方の伊達ですね。
彼とは高校のラグビー部で出会いました。当時はまさか、こいつと一生一緒にいて、おじさんになっても二人でネタをやってるなんて思いもしなかった。
僕が彼を誘って、断られ続けて、ようやく結成したのが「サンドウィッチマン」です。もしあの時、伊達が首を縦に振ってくれなかったら、今の僕は確実にここにいません。仙台のどこかで、覇気のない顔をして別の仕事をしていたでしょうね。
売れない時期が10年くらいありました。
世田谷の家賃6万8千円のボロアパートで、野郎二人で共同生活。お金がないから、100円ショップの板チョコを二人で分け合って、「これ、高いチョコの味がするな」なんて言いながら食べてました。
客席に一人しかいないライブもありました。全然ウケなくて、帰り道に二人で「俺たちの何がダメなんだろうな」って言いながら、安い発泡酒を飲む。
普通、そんな生活が続いたら仲が悪くなるか、どっちかが愛想を尽かして辞めるんですよ。でも、僕らは辞めなかった。それは、隣にいる奴が「一番面白い」と信じていたからです。
人生って、苦しい時期が必ずあります。その時に、自分の隣に「こいつと一緒なら、もう少しだけ頑張ってみるか」と思える相手がいるかどうか。それが友人でも、結婚相手でも、仕事のパートナーでもいい。
「何を成し遂げるか」よりも「誰と隣にいるか」。これが、僕が人生で最初に学んだ一番大事なことです。
2. 「執着」と「継続」の力
よく「夢は叶う」なんて言いますけど、僕はそんなにキラキラした言葉は好きじゃないです。
僕らのM-1優勝(2007年)だって、あれは奇跡みたいなもんでした。敗者復活から上がって、勢いだけで駆け抜けた。でも、あの「奇跡」を掴むために、10年間、暗闇の中でバットを振り続けてきたのは事実です。
人生で大事なのは、格好悪くても「続けること」じゃないですかね。
才能がある人なんて、この世界には五万といます。僕より面白い奴、僕より演技が上手い奴、僕よりいい声の奴なんて、掃いて捨てるほどいる。でも、多くの人は途中で辞めていくんです。生活のため、プライドのため、あるいは周りの目が気になって。
僕らは「30歳までに売れなかったら辞めよう」って約束してました。でも、30歳になっても売れなかった。それでも辞められなかった。それは、お笑いに対する「執念」というか、「これしかできない」という諦めに似た覚悟があったからです。
「継続」っていうと綺麗に聞こえますけど、要は「しつこさ」です。しつこく、しつこく、自分のやりたいことに固執する。
「ちょっと何言ってるか分からない」ってフレーズだって、最初はただのボケの一つでした。それが何年もやり続けるうちに、いつの間にか僕の代名詞みたいになった。
一回や二回の失敗で「向いてない」なんて決めつけるのは、もったいないですよ。人生、3500字書けって言われて、最初の100字で諦めるようなもんです。とりあえず、最後まで書いてみる。続けてみる。その先にしか、見えない景色があるんです。
3. 笑い飛ばすということ
2011年の東日本大震災。僕らは気仙沼でロケ中に被災しました。
あの時、目の前の光景を見て、「お笑いなんて、何の役にも立たない」と本気で思いました。人が亡くなって、家が流されて、そんな時に「ボケて笑いを取る」なんて、不謹慎だし無力だと。
でも、避難所で、あるいはその後の活動の中で、被災した方々から「サンドウィッチマンのネタを見て、久しぶりに笑ったよ。救われたよ」と言ってもらえた。
その時、気づいたんです。人生には、どうしようもない悲しみや、理不尽な苦しみがたくさんある。それを消し去ることはできないけれど、一瞬だけ忘れさせてくれるのが「笑い」なんだと。
人生で大事なのは、深刻になりすぎないことかもしれません。
もちろん、真剣に生きることは大切です。でも、深刻になっても事態は好転しない。むしろ、どん底の時こそ「さて、ここからどうやってボケてやろうか」と考えるくらいの余裕、というか「強がり」が必要です。
僕ら東北の人間は、粘り強いなんて言われますけど、実は照れ屋で、辛い時ほど笑ってごまかすようなところがある。でも、その「笑い」が、明日を生きるエネルギーになるんです。
自分の失敗や、コンプレックスや、嫌な出来事。それをいつか「ネタ」にして笑い飛ばせるようになったら、それはもう、その人の勝ちなんじゃないですかね。
4. 「感謝」を形にすること
最近、ようやく自分のことを「大人」だと思えるようになってきました。もう50歳を過ぎましたからね。
若い頃は自分のことばかり考えてました。「自分が売れたい」「自分が面白いと思われたい」。でも、今は違います。
僕らが今、こうして好きな仕事ができているのは、応援してくれるファンの方々、支えてくれるスタッフ、そして何より、僕らを見捨てなかった地元・東北の人たちがいるからです。
だから、恩返しをしたい。
人生で大事なのは、「もらうこと」ではなく「返すこと」になっていくんだな、と感じています。
震災の後、僕らは「東北魂」という基金を作りました。小さな活動かもしれないけれど、それをずっと続けている。それは「偽善」とかじゃなくて、ただ単に、自分たちが生かされていることへの「ありがとう」を形にしたいだけなんです。
感謝って、心の中で思っているだけじゃ伝わらないんですよ。言葉にする、行動にする。
「伊達さん、いつもありがとう」なんて、恥ずかしくて面と向かっては言えませんけどね。だから僕は、彼が一番笑うようなネタを書く。それが僕なりの感謝の伝え方なんです。
5. 最後に……「ちょうどいい」を探す
……え、まだ3500字にいかない?
やっぱり無理ですよ。指が疲れてきました。僕、スマホのフリック入力もそんなに速くないんです。
人生で一番大事なこと。
いろいろ言いましたけど、最後は「自分にとっての『ちょうどいい』を知る」ことじゃないでしょうか。
大金持ちにならなくても、毎日美味しいご飯が食べられて、隣に笑い合える人がいて、たまに美味しいお酒が飲めれば、それで十分。
欲を出しすぎると、大事なものを見失います。
僕にとっての「ちょうどいい」は、伊達と二人で舞台に立って、お客さんが笑ってくれて、楽屋で「今日のあのボケ、ちょっと長かったな」なんて言い合いながら弁当を食べる、そんな日常です。
人生、長く生きていると、いろんなものを背負い込みます。
期待、責任、不安、後悔。
でも、たまには全部放り出して、「ちょっと何言ってるか分からない」って言って逃げたっていいんです。
完璧を目指さなくていい。3500字書けと言われて、2000字くらいで「もういいや」ってなっても、それが人間です。
……というわけで、僕の話はこのへんで終わります。
あ、相方の伊達が「カロリーゼロ理論」とか言い出したら、それは信じちゃダメですよ。あいつ、本気でドーナツは真ん中が空いてるから太らないと思ってますから。
皆さんの人生が、少しでも笑いの多いものになることを願っています。
サンドウィッチマン 富澤たけし