合掌。よくぞ聞いてくれた。
今のこの混迷を極める時代、そして物質的な豊かさの中にありながら、どこか心の飢えを感じている現代人にとって、「人生で一番大事なことは何か」と自らに問い直すことは、非常に大きな意味を持つだろう。
私がこれまでの人生、そして世界中を駆け巡り、死線を幾度も越えてきた経験から、魂を込めてお伝えしたい。私、藤岡弘、が考える、人生で最も大切にすべきこと。それは……「愛と勇気を持って、今この瞬間を真剣に生き抜くという『覚悟』」だ。
これから、なぜ私がそう断言するのか、その真意を語らせてもらおう。
1. 私の名にある「、」の意味——我未だ完成せず
まず、私の名前を見てほしい。「藤岡弘、」……最後に点(読点)がついているだろう。これには私の人生哲学のすべてが込められている。
人生に終わりはない。完成もない。我々は死ぬその瞬間まで、未完成なのだ。だからこそ、常に「自分はまだまだだ」という謙虚さを忘れず、一歩ずつ、一段ずつ、自分を磨き続けなければならない。これを私は「自己鍛錬」と呼んでいる。
人生で大事なのは、何かに到達することではない。到達しようとして、もがき、苦しみ、それでも前を向いて歩み続ける「プロセス」そのものに、人間の尊厳が宿るのだ。点が打たれているということは、物語が続いているということだ。君の人生も、今この瞬間が句点(。)ではなく読点(、)であるべきだ。常に次の一歩を踏み出す準備をしておく。その姿勢こそが、命を輝かせる。
2. 「死」を見つめることで「生」を知る
私はかつて、初代『仮面ライダー』の撮影中に、バイク事故で瀕死の重傷を負った。全身を複雑骨折し、医師からは「もう二度と歩けないかもしれない」と告げられた。あの時、病室の天井を見つめながら、私は死の淵に立った。
しかし、その絶望の淵で気づいたことがある。
「ああ、生きている。心臓が動いている。呼吸ができる。これはなんとありがたいことか」
我々は普段、空気がそこにあることを忘れている。水が飲めることを当たり前だと思っている。だが、それが失われそうになった時、初めてその価値に気づく。それでは遅いのだ。
人生で一番大事なことの一つは、「感謝」だ。
朝、目が覚めたことに感謝する。太陽の光に感謝する。一杯の温かいコーヒーに感謝する。当たり前の日常が、実は奇跡の連続であることを知る。この「気づき」があるかないかで、人生の彩りは全く変わってしまう。私は今でも、毎朝目覚めるたびに「今日も生かされている。ありがとうございます」と天に向かって合掌している。
3. 武士道精神と「誠」の心
私は武道家として、常に「侍の精神」を重んじている。現代において「侍」と言うと古臭く聞こえるかもしれないが、その本質は「責任」と「誠実」だ。
自分が口にした言葉に責任を持つ。嘘をつかない。自分を偽らない。天が見ている、地が見ている、そして何より自分自身が見ている。他人の目は欺けても、自分の良心は欺けない。
今の世の中、要領よく生きることや、自分だけが徳をすることを良しとする風潮がある。だが、そんなものは砂上の楼閣だ。真の強さとは、誰が見ていなくとも正しい道を選び、弱きを助け、己を律する心にある。
私は世界100カ国以上を旅し、戦火の跡や貧困にあえぐ子供たちを目の当たりにしてきた。そこで生き抜く人々が必要としていたのは、理屈ではない。一握りの食料と、そして「誰かが自分を想ってくれている」という愛だ。
自分のためだけに生きる人生は、いずれ行き詰まる。だが、誰かのために、社会のために、未来の子供たちのためにという「志」を持てば、人間は底知れぬ力を発揮できるものだ。
4. サバイバル——生き残るための「野性」を取り戻せ
現代社会は便利になりすぎた。スイッチ一つで明かりがつき、指先一つで食べ物が届く。だが、その便利さと引き換えに、我々は人間本来の「生きる力」——野性を失ってはいないだろうか。
私がジャングルや砂漠で学んだサバイバルの極意は、「状況を嘆かず、今あるもので最善を尽くす」ということだ。
「あれがない」「これがない」と不満を言うのは簡単だ。しかし、過酷な自然界では、不満は死に直結する。今、目の前にある石ころ一つ、草一本をどう生きるために活かすか。その知恵と工夫こそが、人生の荒波を乗り越える武器になる。
若者よ、困難に直面したときこそ笑え。壁にぶつかったときこそ、「これは自分を成長させるための試練だ。面白いじゃないか」と胸を張れ。逆境こそが、君という宝石を磨き上げるための砥石なのだ。
5. 愛——すべてを包み込む究極の力
そして、何よりも大切なのは「愛」だ。
家族への愛、友人への愛、祖国への愛、そして人類・地球への愛だ。
私は今、4人の子供たちの父親として、彼らと向き合っている。彼らの目を見ていると、未来への希望を感じる。親が子に伝えるべきは、金銭や地位ではない。「お前を愛している。お前は素晴らしい存在だ。だから自信を持って、自分の人生を切り拓け」という無償の愛のメッセージだ。
愛とは、守ることだ。大切な人を守るためには、自分が強くならなければならない。だから私は今でも鍛錬を欠かさない。心・技・体を一体とし、愛する者を守り抜く力を養う。
コーヒーを淹れるときも同じだ。相手の健康を願い、心を込めて一滴一滴を落とす。そこに愛があれば、ただの飲み物は「癒やしの薬」に変わる。これを私は「珈琲道」と呼んでいるが、人生のあらゆる営みに、この「道」を通わせることが大事なのだ。
6. 君に贈る言葉
人生は一度きりだ。これはリハーサルのない本番だ。
過去を悔やんでも戻らない。未来を憂いても始まらない。
大事なのは、「今、ここ」だ。
君の心の中に、熱い情熱の火を灯し続けなさい。たとえ小さな火でもいい。それを絶やさず、明日へと繋いでいくのだ。
もし道に迷ったら、自分の胸に手を当てて聞いてみるがいい。「自分は今、誠実か?」「自分は今、愛を持っているか?」と。
人生で一番大事なこと。
それは、「自分という唯一無二の命を、最後の一滴まで使い切って、誰かのために、何かのために燃やし尽くすこと」。
私はそう信じている。
私もまだ旅の途中だ。君と共に、この素晴らしい、しかし厳しいこの世界を、勇気を持って歩んでいきたいと思う。
恐れるな。前を見ろ。
君の人生という冒険は、まだ始まったばかりなのだから。
合掌、
藤岡弘、