こんにちは。スティーブン・ヘイズです。

あなたが「人生で一番大事なことは何か」という、人間にとって最も深遠で、かつ切実な問いを投げかけてくれたことに感謝します。私は心理学者として、また一人の人間として、長年この問いに向き合ってきました。

私の答えは、一言で言えば「心理的柔軟性(Psychological Flexibility)」を持って、自らの「価値(Values)」に飛び込むことです。

しかし、これだけでは不十分でしょう。なぜこれが人生で最も重要なのか、そして私たちの心がどのように私たちを罠にかけるのか、3500字程度の対話を通じて、私の研究と人生の経験から導き出した「核心」をお話ししましょう。


1. 私たちの「心」という名の独裁者

まず理解してほしいのは、人間の「苦しみ」の正体です。

私は長年、RFT(関係枠理論)という言語と認知の研究を行ってきました。そこで分かったのは、人間は他の動物とは決定的に異なる「進化の代償」を払っているということです。

私たちの祖先は、草原でライオンに襲われないよう、危険を予測し、分析し、回避する能力を発達させました。これは生存には非常に有利でしたが、現代の私たちにとっては大きな問題を引き起こしています。私たちの「思考(マインド)」は、外側の世界の問題を解決するのと同じやり方で、自分の「内側の世界(感情や思考)」を解決しようとし始めたのです。

マインドはこう言います。

「不安を感じてはいけない。不安を取り除かない限り、幸せにはなれない」

「過去の失敗を忘れるな。それを反省し続けなければ、また同じ過失を犯すぞ」

「自分はダメな人間だ。だから、目立つことをしてはいけない」

私たちは、自分の思考を「絶対的な事実」として受け取ってしまいます。これを私たちは「認知的フュージョン(癒着)」と呼びます。思考と自分がぴったりくっついてしまい、思考という眼鏡を通してしか世界が見えなくなっている状態です。

しかし、人生で一番大事なことへ向かう第一歩は、この「思考は単なる言葉の羅列に過ぎない」と気づくことなのです。

2. 痛みは敵ではない

私はかつて、深刻なパニック障害に苦しんでいました。

大学の会議中、あるいは講義中、突然心臓が激しく打ち、息ができなくなり、「ここで死ぬのではないか」という恐怖に襲われました。私はその恐怖から逃げようと必死でした。発作が起きないように自分の行動を制限し、不安を感じないように自分をコントロールしようとしました。

しかし、皮肉なことに、「不安を避けようとすればするほど、不安は増大し、人生の活動範囲は狭まっていく」のです。

これを私は「体験的回避」と呼んでいます。多くの人が、苦痛な感情や記憶を避けようとして、人生の大切な部分を犠牲にしています。お酒に逃げる、人間関係を断つ、新しい挑戦をあきらめる……。

人生で大事なこと。それは、「痛みを取り除くこと」ではなく、「痛みと共に歩むこと」にあります。

愛する人を失えば悲しみがあります。新しい挑戦をすれば不安があります。それは生きていれば当然の反応です。痛みを消そうとすることは、生きている証を消そうとすることと同じなのです。

3. 「価値(Values)」:あなたの人生の北極星

では、痛みと共にどこへ向かうべきか。それが「価値(Values)」です。

多くの人が「目標(Goals)」と「価値」を混同しています。

目標は、達成すれば終わるものです。「結婚する」「昇進する」「100万ドル稼ぐ」といったものはすべて目標です。目標は達成された瞬間に過去のものになります。

一方で「価値」は、進行方向そのものです。

「愛し上手なパートナーであること」「誠実な人間であること」「創造的であること」「好奇心を持って学ぶこと」。これらは一生終わることのない「プロセスの質」です。

人生で一番大事なことは、「自分が何に命を燃やしたいのか」という独自の価値を定義し、それに従って行動することです。

想像してみてください。あなたの80歳の誕生日に、親しい人たちが集まってあなたの人生を讃えてくれています。そこで彼らに「あなたという人間が、どのような価値観を体現していたか」を語ってもらうとしたら、何と言ってほしいでしょうか?

その答えの中に、あなたの本当の価値が眠っています。

4. 心理的柔軟性の6つの柱

私が提唱したACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)では、人生を豊かにするための「心理的柔軟性」を6つのプロセスで説明しています。これが、私が考える「より良く生きるための技術」の全容です。

  1. 脱フュージョン(Defusion): 思考を事実としてではなく、単なる「言葉」や「イメージ」として眺めること。マインドが「お前は失敗する」と言っても、「私は、お前は失敗するという思考を持っているのだな」と一歩引いて気づくことです。
  2. アクセプタンス(Acceptance): 嫌な感情や感覚を、変えようとしたり追い払ったりせず、そのままにしておく場所を作ること。心の中に、その痛みが存在することを許可することです。
  3. 今、この瞬間との接触(Present Moment): 過去の執着や未来への不安に生きるのではなく、今ここで起きていることに意識を向けること。
  4. 文脈としての自己(Self-as-Context): あなたはあなたの「思考」や「感情」そのものではありません。それらが通り過ぎていくのを眺めている「場(コンテナ)」のような存在です。この「観察する自己」に気づくと、どんな苦難の中でも揺るがない視点が得られます。
  5. 価値(Values): 先ほど述べた通り、人生における心の底からの願い、進むべき方向性です。
  6. コミットした行為(Committed Action): 自分の価値に沿って、実際に具体的な一歩を踏み出すこと。たとえ不安があっても、価値のために動くことです。

この6つが組み合わさったとき、私たちは「心理的柔軟性」を手に入れます。それは、「不快な思考や感情に振り回されず、今の状況を受け入れ、自分の価値に沿った行動を粘り強く続ける能力」です。

5. 愛、つながり、そして弱さ

人生の後半戦において(あなたは今、その素晴らしい時期にいらっしゃいますね)、もう一つ欠かせない視点があります。それは「つながり」です。

私たちは言葉を使って自分を守ろうとするあまり、他者との間に壁を作ってしまうことがあります。しかし、心理的柔軟性が高まると、自分の「弱さ(Vulnerability)」を隠す必要がなくなります。

「私は今、不安を感じている」「私はあなたの助けが必要だ」。

自分の痛みを受け入れた人は、他者の痛みに対しても深い共感を持つことができます。

私はよくこう言います。「愛と気づき(Awareness)が、人生の究極の目的である」と。

自分自身の内面的な体験をジャッジせずに気づくこと。そして、その気づきを他者や世界へと広げていくこと。

「人生で一番大事なこと」は、何かの成果を上げることでも、誰かに勝つことでもありません。

それは、「たとえ心が傷つく可能性があっても、心を開き、自分が本当に大切だと思うもの(人、活動、信念)に対して、全身全霊で関わり続けるプロセス」そのものなのです。

6. あなたへのメッセージ

あなたは今、1968年生まれとしての豊かな経験を持ち、箕面市の穏やかな環境の中で、人生の真理を探求されていますね。

もし、私の理論をあなたの日常に落とし込むなら、明日からこう自問してみてください。

「もし、この不安や自己批判が、私の行動を制限する力を持っていないとしたら、私は今、何をするだろうか?」

マインドの騒がしいお喋り(「もう遅すぎる」「そんなの無駄だ」「失敗したら恥ずかしい」)は、そのままにしておいてください。それを消す必要はありません。ラジオのBGMのように流しておけばいいのです。

そのBGMをバックにしながら、あなたの「価値」という北極星の方角へ、小さく一歩を踏み出してください。WordPressで偉人の知恵をまとめることも、アロマの香りで誰かを癒やす計画を立てることも、すべてはあなたの価値の表現です。

人生は、問題解決の連続ではありません。

人生は、今、この瞬間に展開されている「プロセス」を生き切るための冒険です。

痛みは、あなたが「何かを深く大切に思っている」という証拠です。

不安は、あなたが「自分のコンフォートゾーンを超えて成長しようとしている」という証拠です。

それらを「敵」として戦うのをやめ、「旅の連れ」として受け入れたとき、あなたは真の自由を手にするでしょう。


スティーブン・ヘイズとしての結論:

人生で一番大事なこと。

それは、「心を開き(Open)、今ここに存在し(Present)、大切なことに向かって進む(Doing what matters)」。この3つのシンプルな、しかし一生をかける価値のあるサイクルを回し続けることです。

あなたの人生という壮大な物語において、あなたが「マインド」の奴隷ではなく、自らの「価値」の書き手となることを心から応援しています。