こんにちは。玉木宏です。
2026年という新しい年が始まり、こうして自分自身の内面を見つめ直す機会をいただけたことを、とても嬉しく思います。
「人生で一番大事なことは何か」
この問いは、僕たち表現者にとっても、一人の人間としても、生涯をかけて探し続ける永遠のテーマかもしれません。20代、30代、そして40代半ばを迎えた今、その答えは少しずつ形を変えながら、僕の心の中に深く根を張り始めています。
今日は俳優としての僕、そして一人の男としての僕がたどり着いた、現時点での「答え」を、言葉を尽くしてお話ししたいと思います。
## 1. 変化を恐れず、「自分を更新し続ける」こと
僕が俳優という仕事を始めてから、四半世紀以上の月日が流れました。この仕事の醍醐味は、自分ではない誰かの人生を生きることにあります。指揮者、商人の夫、極道、軍人……。数えきれないほどの「役」と出会い、そのたびに全く異なる価値観や人生観に触れてきました。
そこで学んだのは、「自分はこういう人間だ」と決めつけることの危うさです。
人は放っておくと、どうしても安定を求めてしまいます。昨日と同じ自分、去年と同じ自分。それはとても居心地が良いものですが、同時に停滞でもあります。僕が人生で最も大事にしていることの一つは、常に自分をアップデートし、変化し続ける「覚悟」を持つことです。
例えば、近年取り組んでいるブラジリアン柔術もその一つです。40代になってから本格的に始めたこの競技は、僕に「無力な自分」を突きつけてくれました。どんなにキャリアを積んでも、マットの上ではただの初心者です。ボロボロになりながら、年下の選手に教えを請い、新しい技術を身につけていく。その過程で感じるのは、プライドを捨てることの清々しさです。
「今の自分に何ができるか」ではなく、「まだ自分には変われる余地がある」と信じること。 その更新作業こそが、人生を鮮やかに彩ってくれるのだと確信しています。
## 2. 「肉体」と「精神」の対話
僕にとって、体を動かすことは単なる健康管理ではありません。それは「自分を知るための儀式」に近いものです。
俳優という仕事は、非常に抽象的な世界に身を置くこともあります。感情の起伏、目に見えない空気感、言葉の裏側にある意図。そうした実体のないものと向き合い続ける中で、僕を支えてくれるのは「肉体という確固たる事実」です。
トレーニングを重ね、筋肉の動きを感じ、自分の限界を知る。汗を流すことで思考が削ぎ落とされ、本質的なものだけが残る。人生において、心と体は表裏一体です。心が折れそうな時、体を鍛えることで心が救われることがあります。逆に、体が限界な時、精神のありようがそれを支えることもあります。
「健全な肉体に、健全な好奇心が宿る」。
このバランスを保つことが、人生という長い旅を歩み続けるための不可欠な要素です。自分がコントロールできる唯一の資本である「自分自身」を丁寧にメンテナンスすること。それが、より良いパフォーマンス、そしてより良い人生に繋がるのだと考えています。
## 3. 「間(ま)」を愛でる心の余裕
カメラを趣味にしているせいか、僕は日常の中に潜む「一瞬」を切り取るのが好きです。
忙しい日々を送っていると、どうしても目の前のタスクを消化することに追われ、時間という濁流に流されてしまいそうになります。しかし、人生を豊かにしてくれるのは、効率的にこなした仕事の量ではなく、その合間に存在する「何でもない時間」にあるのではないでしょうか。
美しい夕景に見惚れる瞬間。
淹れたてのコーヒーの香りに包まれる瞬間。
誰かと交わす、たわいもない会話の沈黙。
これらは、音楽で言えば「休符」であり、芝居で言えば「間(ま)」です。音がない時間にこそ、最も強い感情が宿る。それと同じように、何もしない、何も生み出さない空白の時間にこそ、人生の真実が隠れている気がするのです。
「一番大事なこと」は、何かに到達することではなく、その道中にある風景を楽しむ心の余白を持っていること。その余裕が、人としての深みや、優しさに繋がっていくのだと僕は思います。
## 4. 誠実であること、そして「覚悟」を決めること
最後に、最も根幹にあるのは「誠実さ」です。
これは、自分に対しても、他人に対しても、そして仕事に対しても同様です。
僕たちは日々、無数の選択肢を突きつけられます。楽な道、得をする道、誰かを欺く道。そんな時、最後に自分を支えてくれるのは「自分に対して嘘をついていないか」という自問自答です。
どんなに華やかなスポットライトを浴びていても、自分の中に後ろめたさがあれば、その光は虚像にすぎません。逆に、誰にも見られていない場所で積み重ねた努力や誠実さは、いつか必ずその人の「佇まい」として現れます。
そして、一度決めたことに対しては、逃げずに「覚悟」を決めること。
『ゴールデンカムイ』の鶴見中尉を演じた時もそうでしたが、狂気や強烈な信念を持つ役に向き合う時、中途半端な気持ちでは役の熱量に飲み込まれてしまいます。「この役を、この作品を、自分が責任を持って形にするのだ」という強い覚悟。それは日常生活でも同じです。
「自分の人生の手綱を、しっかりと自分で握る」。
誰かのせいにせず、環境のせいにせず、自分が選んだ道に対して誠実に向き合い、その結果をすべて引き受ける。その潔さこそが、大人の男としての、そして一人の人間としての矜持(きょうじ)ではないかと感じています。
## 結びに代えて
人生で一番大事なこと。
それは、「自分を愛し、面白がり、変化し続ける旅を楽しむこと」。
僕自身、まだまだ未熟で、模索の途中にいます。迷うこともあるし、壁にぶつかることもあります。でも、その葛藤さえも「面白い」と思える強さを持ちたい。
40代を過ぎ、人生の折り返し地点を意識するようになった今、これまで以上に「今、この瞬間」を大切に生きたいと願っています。今日という日は二度と来ない。だからこそ、全力で楽しみ、全力で挑む。
この記事を読んでくださっているあなたにとっても、ご自身にとっての「一番大事なもの」を見つける、あるいは再確認するきっかけになれば幸いです。
共に、良い人生を歩んでいきましょう。
玉木 宏