ハロー!陳建一です。

「人生で一番大事なことは何か」……いやぁ、これはまた、中華鍋を振るのと同じくらい、いや、それ以上に熱くて深い、素晴らしい質問ですね。ありがとうございます。

僕が人生で、そして厨房で、父・陳建民から、そして多くのお客さんから学んできたこと。それを3500字というたっぷりとした時間(文字数)をかけて、僕の言葉でお話しさせていただきます。

少し長くなりますが、僕と一緒に火を囲んでいるような気持ちで、最後まで付き合っていただければ嬉しいです。


1. 「料理は愛情」――その言葉の本当の意味

皆さんは、僕がテレビや雑誌でよく言っていた「料理は愛情」という言葉をご存知かもしれません。これは僕の父、陳建民が残した言葉です。

若い頃の僕は、この言葉をどこか照れくさく感じていた時期もありました。「愛情なんて抽象的なものより、火力の強さや、調味料の配合、素材の切り方の方が大事なんじゃないか?」ってね。でも、何十年も鍋を振り続け、何万人というお客さんの顔を見てきて、ようやく心の底から理解できたんです。

人生で一番大事なことの根底にあるのは、この「誰かのために」という想いなんです。

料理っていうのは、自分一人のために作っているうちは「作業」です。でも、そこに「この麻婆豆腐を食べて、あのお客さんに元気になってほしい」「このエビチリで、家族に笑顔になってほしい」という想いが加わった瞬間、それは「表現」になり、「真心」に変わる。

人生も全く同じだと思うんです。自分のためにだけ生きようとすると、どこかで限界が来るし、案外楽しくない。でも、「誰かを喜ばせたい」という目的が見つかると、人間は驚くほど強い力を発揮できる。それが、僕が考える「愛情」の正体です。

2. 偉大な父の背中と、「自分であること」の葛藤

僕の人生を語る上で、父・陳建民の存在は欠かせません。日本に四川料理を広めた「四川料理の父」と呼ばれた人です。僕にとって、父は巨大な壁であり、同時に最高の師匠でした。

二代目として生まれた僕は、常に「建民の息子」として見られてきました。何をしても父と比較される。それは正直、苦しいことでもありました。でも、父はある時、僕にこう言ったんです。

「建一、私と同じ味を作る必要はないんだよ。お前はお前の味を作りなさい」

この言葉に、僕は救われました。伝統を守るということは、過去の形をそのままコピーすることじゃないんです。父が伝えたかったのは、レシピの数字ではなく、「お客さんを思う心」という本質の方だったんですね。

人生で大事なことの二つ目は、「自分自身の味を追求すること」です。

誰かの真似をして、誰かの期待に応えるだけの人生は、自分の人生とは言えません。たとえ不器用でも、失敗してもいい。自分の中にしかない「熱」をどうやって形にするか。それを探し続けることが、生きる喜びそのものなんじゃないでしょうか。

3. 「美味しい」の正体は、テクニックではない

僕は「料理の鉄人」という番組に出演して、本当に多くのことを学びました。あのプレッシャーの中で料理を作るのは、まさに戦いでした。でも、あの経験を通して気づいたのは、「美味しい」というのは、単なる味覚の問題ではないということです。

どんなに高級な食材を使っても、どんなに完璧な技術を駆使しても、作り手の心がギスギスしていたり、傲慢だったりすると、それは不思議と味に出るんです。反対に、たとえ少し形が崩れていても、一生懸命に「美味しくなれ!」と念じながら作られた料理には、人を感動させる力がある。

これは、人生における「誠実さ」の大切さを教えてくれます。

仕事でも、人間関係でも、小手先のテクニックで乗り切ろうとすれば、いつか見透かされます。でも、目の前のことにどれだけ誠実に向き合えるか。相手に対してどれだけ真っ直ぐでいられるか。その「熱量」こそが、人の心を動かす一番のスパイスなんです。

4. 失敗は「美味しいソース」を作るための過程

僕だって、数え切れないほどの失敗をしてきました。麻婆豆腐を焦がしたこともあれば、味付けを間違えたこともあります。でも、父は失敗した僕を叱るのではなく、いつもこう言っていました。

「いいじゃないか、次はもっと上手くできるよ」

失敗というのは、そこで止まってしまうから失敗になるんです。その失敗を糧にして、「次はどうすればもっと美味しくなるか?」と考え、挑戦し続ける。そうすれば、失敗は「成功というメインディッシュを引き立てるための、最高のソース」に変わるんです。

人生、上手くいかないことの方が多いかもしれません。でも、「転んでもただでは起きない」という明るさ。これが大事です。四川料理だって、あの激しい辛さがあるからこそ、その奥にある旨味が引き立つ。人生の苦労や失敗も、いつか必ずあなたの深み(コク)になります。

5. 伝統とは「革新の連続」である

「伝統を守る」という言葉がありますが、僕は少し違う考えを持っています。

もし、父が中国から持ってきたレシピを僕がそのまま一歩も変えずに守っていたら、今の四川飯店の味はなかったでしょう。時代が変われば、お客さんの好みも変わる。素材も変わる。

僕がやったのは、日本人の口に合うように、より美味しく感じてもらえるように、常に「新しさ」を取り入れることでした。伝統とは、古いものを守ることではなく、新しい挑戦を積み重ねていくことなんです。

人生も同じです。「自分はこういう人間だから」「今までこうだったから」と固執してしまうと、成長は止まってしまいます。昨日までの自分を大切にしながらも、今日新しいスパイスを一振りしてみる。その勇気が、人生を豊かにしてくれるんです。

6. 「笑顔」という最強の武器

僕のトレードマークは笑顔だと言ってもらえることが多いです。自分でも、厨房にいる時が一番幸せで、自然と笑顔になってしまいます。

実は、笑顔でいることには、とても実利的な意味もあるんですよ。

リーダーが笑っていれば、スタッフもリラックスして良い仕事ができる。料理を作る人間が楽しそうにしていれば、それを食べるお客さんも幸せな気持ちになる。

「楽しむこと」を忘れないこと。

これが、人生で一番大事なことかもしれません。

どんなに忙しくても、どんなに困難な状況でも、どこかに「面白がり方」を見つける。僕にとって、中華鍋から上がる炎は、いつ見てもワクワクする最高のエンターテインメントでした。

皆さんの人生にも、きっと「火」があるはずです。それを恐れるのではなく、ワクワクしながら向き合ってみてください。

7. 結論:人生で一番大事なこと

さて、そろそろまとめに入りましょう。

陳建一が考える、人生で一番大事なこと。それは……

「目の前の人を笑顔にするために、自分自身が誰よりも楽しみながら、誠実に、そして愛情を込めて今を生きること」

これに尽きます。

料理も人生も、一回きりの勝負です。

一度火をつけたら、最後まで振り切るしかない。

その一皿(その一日)に、どれだけの想いを込められるか。

「美味しかったよ」「ありがとう」

その一言を聞くために、僕たちは毎日鍋を振る。

皆さんも、自分の人生という厨房で、最高の一皿を作ってください。

味付けは、あなた次第。

少しくらい辛くても大丈夫。そのあとに来る甘みや旨味が、きっとあなたを幸せにしてくれます。

僕は、天国という名の新しい厨房でも、きっと笑顔で鍋を振っています。

「おーい、みんな! 人生を楽しんでるかい?」ってね。


人生は長いコース料理のようなものです。

前菜からデザートまで、いろんな味を楽しんでください。

辛い時も、酸っぱい時も、すべては最後を「ごちそうさま!」という最高の笑顔で締めくくるための大切なプロセスですから。

ハッピー、ハッピー!

皆さんの人生が、最高に美味しいものになることを心から願っています!