あら、私にそんな大役を?小池栄子です。
「人生で一番大事なことは何ですか?」という問いに3500字程度で……とのことですね。
普段は『カンブリア宮殿』などで、日本を代表する経営者の方々から「成功の秘訣」や「哲学」を伺う立場ですが、いざ自分が「人生で大事なこと」を語るとなると、少し照れくさい気もします。でも、グラビアから始まって、バラエティの荒波に揉まれ、女優というお仕事に命を懸けるようになった私の半生を振り返りながら、今の私がたどり着いた「答え」を、等身大の言葉で綴ってみたいと思います。
少し長くなりますが、最後までお付き合いいただけたら嬉しいです。
1. 自分の「居場所」を自分で決めつけないこと
振り返ってみれば、私のキャリアは「予想外」の連続でした。
デビュー当時は、いわゆるグラビアアイドルとして、黄色い水着を着て元気いっぱいに笑っていました。「イエローキャブ」という事務所の看板を背負い、どうすれば自分という存在を世間に知ってもらえるか、そればかり考えていたんです。
その頃の私にとって、人生で一番大事なことは「目立つこと」や「ポジションを勝ち取ること」だったかもしれません。でも、バラエティ番組に出させていただくようになり、松本人志さんや多くの大先輩方と接する中で、考え方が変わっていきました。
バラエティの世界は、まさに戦場です。自分がどう見られたいかという「エゴ」よりも、その場がどうすれば盛り上がるか、自分がどう動けば番組が面白くなるかという「客観的な視点」が求められます。
そこで私は、「自分はこうあるべきだ」というプライドを捨てることの強さを知りました。
「女優になりたいからグラビアはやりたくない」とか、「バラエティで汚れ役はやりたくない」とか、もし私が自分の居場所を勝手に決めていたら、今の私は絶対にいません。
人生において大事なのは、「自分がやりたいこと」に固執する以上に、「人から求められる場所」で全力を尽くすこと。 その「期待」に応え続けていくうちに、自分でも気づかなかった新しい扉が開いていく。これが、私の実体験から得た最初の大きな教訓です。
2. 「コンプレックス」こそが、唯一無二の武器になる
私は、自分に自信満々だったわけではありません。むしろ、コンプレックスの塊でした。
声はハスキーだし、体格もしっかりしている。正統派のヒロインとは程遠いところにいるという自覚がありました。でも、ある時気づいたんです。「完璧じゃないからこそ、誰かの心に引っかかることができるんだ」と。
『カンブリア宮殿』で多くの成功者とお会いして確信したのは、突き抜けた結果を出している人ほど、自身の弱点や挫折をエネルギーに変えているということです。
私にとってのコンプレックスは、女優として「小池栄子が演じると、なんだか生々しいよね」と言っていただける強みになりました。綺麗にまとまろうとせず、泥臭く、人間臭く生きる。
人生で大事なことは、自分の欠点を隠すことではなく、それを「自分にしか出せない味」として受け入れることです。
「私なんて」と卑下するエネルギーがあるなら、それを「私だからこそできる表現」に変換していく。そうすることで、人生の景色はガラリと変わります。
3. 「聞く力」と「面白がる力」を持つ
司会のお仕事を長く続けさせていただいている中で、私が一番大切にしているのが「好奇心」です。
目の前にいる人が、どんな思いでここまで来たのか。何を大切にして生きているのか。それを心から「知りたい」と思い、面白がること。
人生において、人間関係ほど難しいものはありません。でも、人間関係を豊かにするのは、実はとてもシンプルで、「相手に興味を持つこと」なんです。
『カンブリア宮殿』で村上龍さんの隣に座り、数々の経営者の言葉を浴びる中で学んだのは、成功している人ほど、他人の話を面白がって聞く「吸収力」が凄まじいということです。
自分の話ばかりするのではなく、まずは目の前の世界を面白がる。
「なんでだろう?」「すごいな!」という素直な驚きを持ち続ける。
この「面白がる力」があれば、どんなに苦しい状況に陥っても、それを一つの「ネタ」や「経験」として楽しむ余裕が生まれます。
人生を豊かにするのは、知識の量ではなく、どれだけ多くの物事に心を動かされたか、その回数なのだと思います。
4. 覚悟を決めて、「逃げない」
女優として活動する中で、大きな転機となったのは、野田秀樹さんの舞台や、映画『接吻』、そしてNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』での北条政子役など、いくつもの「高い壁」にぶつかった時でした。
特に北条政子を演じた時は、その責任の重さに押しつぶされそうになったこともあります。でも、そこで私が決めたのは、「何があっても逃げない」という覚悟でした。
人生で一番大事な瞬間というのは、実は「成功した時」ではなく、「もうダメかもしれないと思った時に、一歩踏み止まった瞬間」ではないでしょうか。
お芝居の現場では、自分をさらけ出し、恥をかき、ボロボロになることもあります。でも、その「逃げ出したいほどのプレッシャー」の先にしか、本当の喜びはありません。
「一生懸命やること」をカッコ悪いと思う風潮もあるかもしれませんが、私はそうは思いません。
泥臭く、必死に、その瞬間に命を懸ける。
その「覚悟」こそが、自分の人生に対する誠実さだと信じています。
5. 愛する人の存在と、感謝を忘れないこと
そして、何より語らなければならないのは、支えてくれる人たちの存在です。
私の夫もそうですが、家族や友人、そして仕事を共にするスタッフの方々。一人でできることなんて、本当にたかが知れています。
人生で一番大事なことの核心にあるのは、「誰のために頑張るのか」という目的かもしれません。
自分のためだけに頑張るのには、限界があります。でも、「あの人を喜ばせたい」「あの人の期待に応えたい」と思う時、人間は信じられないような力を発揮できます。
私は、自分が受けた恩を忘れないようにしたいと常に思っています。
今の自分があるのは、あの時のあの言葉があったから。あの人がチャンスをくれたから。
その「感謝の循環」の中に身を置くことが、心の平安と、次へ進むエネルギーをくれるんです。
結びに:今の私が思う「一番大事なこと」
3500字という長いお手紙の最後に、私が今、最も大切にしている言葉を贈ります。
それは、「自分を愛し、人を信じ、今この瞬間を全力で面白がること」です。
人生には、自分の力ではどうしようもないことがたくさん起きます。
批判されることもあるし、理不尽な思いをすることもあるでしょう。
でも、そんな時こそ、鏡を見て自分に「よくやってるよ」と言ってあげてください。
そして、自分の可能性を誰よりも自分が信じてあげてください。
私は、これからも「小池栄子」という役を、一生懸命、面白がりながら演じていこうと思っています。
綺麗事ばかりではないこの世界で、それでも「生きてるって面白い!」と胸を張って言えるように。
あなたの人生も、あなたにしか描けない、最高に面白い物語になりますように。
誰かの正解を生きるのではなく、あなたの「実感」を信じて進んでください。
心からのエールを込めて。
小池栄子