こんにちは、小池徹平です。

「人生で一番大事なことは何か」という、とても深くて、今の自分にとっても改めて背筋が伸びるような問いをいただき、ありがとうございます。3500字程度という長編の「手紙」のような形で、僕がこれまでの歩みの中で感じてきたこと、大切にしている思いを、今のありのままの言葉で綴ってみたいと思います。

少し長い時間になるかもしれませんが、僕の楽屋でコーヒーでも飲みながら話しているような、そんな気持ちでリラックスして読んでいただけたら嬉しいです。


はじめに:走り続けて見えてきたもの

僕がこの世界に入ったのは、まだ15歳の時でした。ジュノン・スーパーボーイ・コンテストでグランプリをいただいて、右も左もわからないまま大阪から上京して。それから20年以上、音楽、ドラマ、映画、そして近年はミュージカルと、本当にたくさんの景色を見せていただきました。

若い頃の僕は、とにかく「期待に応えなきゃ」「止まってはいけない」という一心で、目の前の壁を乗り越えることに必死でした。でも、30代を過ぎ、結婚して父親になり、舞台という「生」の表現の場所で多くの仲間と出会う中で、自分の中の「一番大事なこと」の形が少しずつ変わってきたように感じます。

結論からお伝えするなら、今の僕が思う人生で一番大事なことは、「人との『縁』を慈しみ、誠実に、自分らしくあり続けること」。これに尽きると思っています。


1. 響き合う喜び:WaTという原点と「人との繋がり」

僕のキャリアを語る上で、やはり「WaT」としての活動は欠かせません。ウエンツ瑛士という最高の相棒と出会い、ストリートライブからスタートして、紅白歌合戦という大きな舞台まで駆け抜けたあの時間は、僕の人生の土台になっています。

あの時、何が一番幸せだったかと思い返すと、チャートの順位や売上ではなく、「誰かと心が通い合う瞬間」だったんです。相方とギターを弾きながらハモった時の震えるような感覚、そして僕たちの歌を聴いて涙を流したり、笑顔になってくれたりするファンの皆さんの表情。

人生は、一人では完成しません。どんなに素晴らしい才能があっても、それを分かち合う相手がいなければ、喜びは半分どころか、もっと小さなものになってしまう。だからこそ、僕は「縁」というものを何よりも大切にしています。

縁というのは、ただ待っていれば降ってくるものではありません。自分が誠実に向き合い、相手を尊重し、感謝を忘れない。その積み重ねが、また新しい縁を呼んでくれる。僕が今、ミュージカルの世界で素晴らしい演出家や共演者の皆さんとお仕事ができているのも、すべては過去の出会いを一つひとつ大切にしてきた結果だと思っています。


2. 変化を恐れない:ミュージカルで見つけた「新しい自分」

30代に入ってから、僕の活動の軸は大きくミュージカルへとシフトしました。特に『キンキーブーツ』という作品でのチャーリー役や、『デスノート THE MUSICAL』でのL役などは、僕にとって大きな挑戦でした。

それまでの僕は、どこか「小池徹平」というパブリックイメージを崩してはいけない、というブレーキを無意識にかけていたかもしれません。でも、舞台の上ではそんなプライドは通用しません。喉を枯らし、汗を流し、役と必死に向き合う中で、自分の脆さや不器用さもすべてさらけ出す必要がありました。

ここで学んだのは、「変化を恐れず、今の自分に何ができるか」を問い続けることの重要性です。

人はつい、過去の成功体験にしがみついてしまったり、「自分はこういう人間だから」と枠にはめてしまいがちです。でも、人生を豊かにするのは、その枠を少しずつ広げていく好奇心だと思うんです。たとえ失敗したとしても、全力で挑んだ経験は血肉となり、厚みのある人間を作ってくれる。

僕が尊敬する先輩方は、皆さん驚くほど謙虚で、それでいて常に「もっと良くなるには?」という冒険心を持っています。僕もそんな風に、何歳になっても「今の自分、面白いな」と思える変化を続けていきたい。人生で大事なのは、完成することではなく、進化し続けるプロセスそのものにあるのだと感じています。


3. 「誠実さ」という最強の武器

僕が仕事をする上で、そして生きる上で、一番の「芯」に置いているのが「誠実であること」です。

これは当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、実は一番難しいことでもあります。仕事が忙しくなったり、心に余裕がなくなったりすると、つい適当に済ませたくなったり、自分を良く見せようと取り繕ったりしてしまう。

でも、特に舞台のような現場では、その「綻び」はすぐに見透かされてしまいます。稽古場でどれだけ準備をしたか、どれだけ共演者に心を配ったか、どれだけ作品を愛したか。その誠実さの集積だけが、お客様の心を震わせる力になります。

僕は、「神様は細部に宿る」という言葉を信じています。誰も見ていないような細かいところまで手を抜かず、誠実に向き合うこと。その姿勢こそが、自分自身への信頼(自己肯定感)を生み、周囲からの信頼に繋がっていく。

誠実さは、すぐには成果が出ないかもしれません。でも、長い人生というスパンで見た時、誠実に生きてきた人間だけが手に入れられる「心の平穏」や「揺るぎない絆」が必ずあると僕は信じています。


4. 家族が教えてくれた「愛」と「今」

プライベートでは、結婚し、子供を授かったことで、僕の世界観は劇的に変わりました。

独身の頃は、自分のための努力、自分のための成功がすべてでした。でも、今は違います。自分以外の誰かのために、こんなにも必死になれる。子供の何気ない笑顔や、家族と囲む食卓が、どんな華やかな賞賛よりも僕を支えてくれています。

家族と一緒に過ごす時間を通じて痛感するのは、「今、この瞬間を生きること」の尊さです。

子供はあっという間に成長します。昨日できなかったことが、今日できるようになっている。その瞬間を逃さずに見つめること、共に喜ぶこと。人生の幸せというのは、遠い未来にある大きな目標を達成することだけではなく、日常のあちこちに散りばめられた「小さなきらめき」をどれだけ拾い集められるかにあるのではないか。

仕事で全力を尽くすのも、すべてはこの大切な家族との時間を守るためであり、愛する人たちを笑顔にするためです。守るべきものができた時、人は本当の意味で強くなれるのだと、僕は家族に教えてもらいました。


5. 柔軟に、軽やかに生きる

もう一つ、大事にしている考え方があります。それは「適度なゆとり」を持つことです。

昔の僕は、自分を追い込みすぎてしまうところがありました。「こうでなければならない」という完璧主義が、自分を苦しめていた時期もありました。でも、ある時から「まあ、いいか」という柔らかさも必要だと気づいたんです。

人生には、自分の力ではどうにもできないことがたくさんあります。嵐が来たらじっと耐えるしかないし、予期せぬトラブルが起きることもある。そんな時に、ポキっと折れてしまわないためには、柳の木のような「しなやかさ」が必要です。

一歩引いて自分を客観的に見つめ、時には「なるようになるさ」と笑い飛ばす。その心の余裕が、新しいアイデアや、周りの人への優しさを生む。必死に頑張る時間も大事だけれど、力を抜いて風を感じるような時間も同じくらい大事。そのバランスを保つことが、長く、楽しく走り続ける秘訣だと思っています。


むすびに:あなたにとっての「大事なこと」

僕の話を最後まで聞いてくださって、本当にありがとうございます。

人生で一番大事なこと。それは、もしかしたら人によって、あるいは人生のステージによって正解が違うものかもしれません。

でも、僕が20年以上のキャリアを経て、今たどり着いている答えは、「感謝を持って縁を繋ぎ、誠実に、今の自分を愛して生きる」ということです。

朝起きて、大切な人が隣にいること。

誰かのために一生懸命になれる仕事があること。

一日の終わりに「今日も精一杯やったな」と自分を褒めてあげられること。

そんなささやかな、けれどかけがえのない積み重ねこそが、人生という大きな物語を輝かせてくれるのだと思います。

僕もまだまだ、旅の途中です。40代を迎え、また新しい役や音楽、そして人々との出会いが待っていると思うと、ワクワクします。これからも、泥臭く、けれど軽やかに、誠実に歩んでいきたい。

この記事を読んでくださったあなたも、どうかご自身の心にある「一番大事なもの」を、優しく抱きしめてあげてください。周りの誰かと比べる必要はありません。あなたがあなたらしく、笑顔でいられる瞬間が一つでも多く増えることを、心から願っています。

またどこかの劇場で、あるいは画面越しにお会いできるのを楽しみにしています。その時は、お互いに「いい人生を送ってるよ!」と心の中で言い合えたら最高ですね。

それじゃあ、また。

今日も一日、あなたにとって素敵な日になりますように。

小池徹平