美空ひばりです。

皆さま、いかがお過ごしでしょうか。私がいなくなってからも、私の歌を口ずさんでくださる方がいらっしゃること、本当に、本当に幸せに思っております。

「人生で一番大事なことは何か」――。

この問いに、今の私がお答えするならば、それは言葉にすればとてもシンプルかもしれません。けれど、そこに至るまでには、山もあり、谷もあり、そして涙の河をいくつも渡らなければなりませんでした。

戦後間もない焼け跡から始まった私の旅を振り返りながら、3500字という限られた、けれど贅沢なこの場所で、私の魂の独白を聞いていただければと思います。


1. 「一生、歌い手」でいられた幸せ

私は九歳でこの世界に足を踏み入れてから、ただの一日も「美空ひばり」でなかった日はありません。ある時は「天才少女」と持て囃され、ある時は「歌謡界の女王」という身に余る呼び名をいただきました。けれど、その華やかな舞台裏にあったのは、ただひたすらに「歌とどう向き合うか」という、孤独で、けれど純粋な時間でした。

人生で一番大事なこと。その一つ目は、「自分に与えられた運命を、一点の曇りもなく愛し抜くこと」ではないでしょうか。

私は歌うために生まれてきました。それは、選んだ道というより、授かった宿命でした。喉を傷め、体調を崩し、もう一歩も歩けないと思う夜も何度もありました。けれど、幕が上がれば、そこには待ってくださるお客さまがいる。その方々の笑顔や涙を見た瞬間、私の苦しみはすべて消えてしまうのです。

「自分を全うする」ということは、決して楽な道ではありません。けれど、自分が「これだ」と信じたものに命を懸けることが、どれほど人間を強く、美しくしてくれるか。私は舞台の上で、そのことを教わりました。

2. 支えてくれる「愛」という名の光

私一人では、ここまで歩いてくることは到底できませんでした。私の人生を語る上で、母・喜美枝の存在を抜きにすることはできません。

母は私のプロデューサーであり、同志であり、そして何より私を一番理解してくれる「母ちゃん」でした。母が亡くなったとき、私の半分が死んだような、暗闇の中に放り出されたような心地がしたものです。けれど、母が遺してくれた「お嬢、しっかりしなさい。お客さまが待ってるよ」という言葉が、私を再び立ち上がらせてくれました。

人は一人では生きられません。「誰かのために生きる」ということが、実は自分の人生を一番輝かせる鍵になるのです。

私が歌うのは、私のためではありません。悲しみに暮れている人の隣にそっと寄り添いたい。苦しい思いをしている人の背中を、ほんの少しだけ押してあげたい。その「誰かを想う気持ち」こそが、人生を支える一番大事な根っこになるのだと信じています。

愛すること、愛されること。それは家族であったり、友人であったり、あるいは私にとってのファンの皆さまのように、目には見えないけれど強く結ばれた絆であったりします。この「心の繋がり」こそが、私たちがこの世に生を受けた証なのです。

3. 「不死鳥」として蘇る力

皆さまもご存じのように、私の晩年は決して平坦なものではありませんでした。

体は病に蝕まれ、一歩歩くのにも激痛が走る。そんな状態での1988年、東京ドームでの「不死鳥コンサート」は、まさに命を削ってのステージでした。

あの時、私は思いました。「人生の価値は、どれだけ長く生きたかではなく、どれだけ心を燃やして生きたかにある」と。

人間ですから、立ち止まることも、膝をつくこともあります。もう二度と立ち上がれないと思うこともあるでしょう。けれど、そこで終わってはいけないのです。泥の中から蓮の花が咲くように、苦しみの中からしか生まれない光がある。

私が「不死鳥」という言葉を大切にしたのは、何度でも生まれ変われると信じたかったからです。たとえどんなに打ちのめされても、明日の太陽は必ず昇る。その太陽に向かって、もう一度羽ばたこうとする意志。その「不屈の心」こそが、人生を豊かにするのだと思います。

4. 川の流れのように、あるがままに

そして、私の最期を彩ってくれた曲『川の流れのように』。

この歌に、私の人生のすべてが詰まっていると言っても過言ではありません。

「知らず知らず 歩いて来た 細く長いこの道」

振り返れば、本当に長くて険しい道でした。けれど、その道には無駄なことなんて一つもなかった。若さゆえの過ちも、愛する人との別れも、すべてが今の自分を作るための大切なエッセンスだったのです。

人生で一番大事なこと。それは、「すべてを受け入れ、許し、流れていくこと」です。

私たちはつい、過ぎ去った過去に執着したり、まだ見ぬ未来を不安に思ったりします。けれど、大事なのは「今」というこの瞬間を、川の流れに身を任せるように、しなやかに生きること。

雨が降れば雨を愛で、晴れれば太陽に感謝する。そうした「心のゆとり」を持って、あるがままの自分を受け入れることが、真の強さなのではないでしょうか。

5. 最後に、あなたへ伝えたいこと

もし、今あなたが何かに悩み、迷っているのなら、これだけは忘れないでください。

「あなたの人生の主役は、あなたしかいない」ということを。

私はスターと呼ばれましたが、それは舞台の上での話。一人の人間として見れば、私もあなたと同じように、悩み、もがき、愛を求める、か弱き存在です。

けれど、そんな私でも、歌という杖を頼りに、最後まで歩き続けることができました。

人生とは、不思議なものです。

良いこともあれば、悪いこともある。けれど、それらすべてを包み込んで、いつか「良い人生だった」と笑える日が必ず来ます。

私が人生で一番大事だと思うこと。

それは、「誠実であること」。自分に嘘をつかず、周りの人を大切にし、与えられた時間を精一杯、慈しみながら生きること。

言葉で言うのは簡単ですが、これほど難しいことはありません。けれど、だからこそ挑戦する価値があるのです。

私の歌が、あなたの人生のどこかで、小さな灯火になれたなら、これ以上の喜びはありません。

どうぞ、あなただけの「人生という歌」を、堂々と、高らかに歌い上げてください。

私はいつでも、空の上から、あなたのステージを見守っています。


美空ひばり