こんにちは、コシノジュンコです。
「人生で一番大事なことは何か」という問いですね。私にとって、人生とは常に「今」をどうデザインし、どう未来へと繋げていくかという終わりのない挑戦です。3,500字という限られた枠の中ではありますが、私がこれまでの人生で掴み取ってきた、そして今もなお大切にしている「生きていく上での真理」について、私の言葉でお話ししましょう。
1. 「対極」があるからこそ、美しさは生まれる
私のデザイン哲学の根本には「対極(アンチノミー)」という考え方があります。丸と四角、白と黒、東洋と西洋、過去と未来。これらは一見すると反発し合うものですが、実はぶつかり合い、融合する瞬間にこそ、凄まじいエネルギーと新しい美が生まれるのです。
人生も同じです。順風満帆な時だけが素晴らしいわけではありません。苦労や挫折、あるいは自分とは全く異なる価値観との衝突。そうした「影」があるからこそ、人生の「光」が強く輝きます。私は、自分の中に常に「反対のもの」を置くようにしています。安定したら壊す。完成したら次へ行く。そうやって自分の中に摩擦を起こし続けることが、生きる力になるのです。
2. 「今」を全力で面白がる、圧倒的なスピード感
よく「将来のために」と今の苦労を正当化する人がいますが、私はそうは思いません。人生で一番大事なのは、「今、この瞬間」をどれだけ面白がれるかです。
ファッションの世界は、常に半年先、一年先を見て動きます。けれど、その未来を作るのは「今」の私の直感とエネルギーです。迷っている時間はもったいない。「面白い!」と思ったら、その瞬間に動く。このスピード感こそが、運を引き寄せる鍵になります。
私はよく「回遊魚」だと言われます。止まったら死んでしまう(笑)。でも、それは決して疲れることではなく、動いている状態こそが一番自然で、一番エネルギーが湧いてくる状態なのです。皆さんも、準備が整うのを待つのではなく、走りながら考えてみてください。その疾走感の中にこそ、人生の醍醐味があります。
3. 「驚き」を提供し続けること、自分を更新すること
表現者として、そして一人の人間として、私が最も恐れているのは「慣れ」です。自分自身に飽きてしまうこと、周囲の期待を裏切らない程度の無難な答えを出してしまうこと。これは、生きながらにして止まっているのと同じです。
人生を豊かにするのは、他ならぬ「驚き(サプライズ)」です。誰かを驚かせたい、世界をあっと言わせたいというサービス精神。それがあるからこそ、新しいアイデアが生まれます。そして、人を驚かせるためには、まず自分が自分自身の変化に驚かなければなりません。
80歳を過ぎてもなお、私は「次はどんな面白いことをしてやろうか」とワクワクしています。2025年の大阪・関西万博もそうですが、常に新しい舞台に自分を立たせること。自分の「殻」を自分で破り続けること。この「自己更新」のプロセスこそが、若さを保ち、人生に飽きないための唯一の方法なのです。
4. 人との「縁」をデザインする
私の人生を振り返ると、そこには常に素晴らしい出会いがありました。文化服装学院時代の仲間たち、パリで出会ったクリエイター、そして私の母・小篠綾子。
母はよく「あんた、ええ格好しなはれや」と言っていました。それは単に高い服を着ろということではなく、「人前に出る人間としての矜持を持て」という意味だったと解釈しています。
人は一人ではデザインできません。人との出会いという「点」が、対話や経験を通じて「線」になり、やがて人生という大きな「面」になっていく。この「縁」をいかに大切にし、面白く繋げていくか。私は仕事を通じて、服を作るだけでなく「人間関係の場」を作ってきました。能の世界とコラボレーションしたり、スポーツ界と関わったりするのも、異なる世界の人々と火花を散らすことで、想像もしなかった新しい景色が見たいからです。
5. 健康とは「気合」と「胃袋」である
少し具体的なお話をしましょう。私がこれほどまでに精力的に活動できるのは、何より健康だからです。人生において、身体は最大の資本です。
私の健康法はシンプル。「よく食べ、よく笑い、よく寝る」。これに尽きます。特に「食」は大切です。美味しいものを、大好きな人たちと、楽しく食べる。この生命の根源的な喜びを疎かにして、良い仕事などできるはずがありません。
そしてもう一つは「気合」です。病は気からと言いますが、本当にその通り。明日、面白い約束がある、新しいプロジェクトが始まる。そう思っているだけで、細胞は活性化します。人生で一番大事なことの一つは、自分の機嫌を自分で取り、自分の身体を最高のコンディションに保つセルフプロデュース能力なのです。
6. 日本人としての誇りと、世界への視点
私は1978年から22年間、パリ・コレクションに参加しました。そこで痛感したのは、「世界で戦うには、自分は何者であるかを知らなければならない」ということです。
西洋の真似事をしても、彼らには勝てません。私の中に流れる日本のDNA、日本独特の美意識や精神性を、いかに現代のファッションとして再構築するか。そこを突き詰めたからこそ、世界は私を受け入れてくれました。
皆さんも、どこへ行っても「自分のルーツ」を忘れないでください。それは決して古いものに固執することではありません。歴史や文化という土壌をしっかり踏みしめた上で、自由に枝葉を広げる。その強さこそが、本当の意味での「個性的」ということなのです。
7. 「失敗」という言葉を辞書から消す
よく「失敗したらどうしよう」と不安になる人がいますが、私には「失敗」という概念がありません。それは単なる「一つの経験」であり「次の成功へのデータ」に過ぎないからです。
思い通りにいかなかったら、やり方を変えればいいだけのこと。それを「失敗」と名付けて落ち込むのは時間の無駄です。私の人生は、試行錯誤の連続でした。でも、そのたびに「次はこうしよう」という新しいエネルギーが湧いてきました。
大事なのは、転ばないことではなく、転んだ時にタダでは起きないこと。その土性っ骨(どしょうぼね)こそが、人生を切り拓く力になります。
結びに:人生を最高の一本のアートに
最後に、あなたに伝えたいことがあります。
あなたの人生のデザイナーは、あなた自身です。親でも、先生でも、社会でもない。あなたが今日何を着て、誰と会い、何を食べるか。その一つひとつの選択が、あなたの人生を形作っていきます。
人生で一番大事なこと。それは、「自分という存在を、最後まで諦めずに、徹底的に面白がり、デザインし尽くすこと」です。
世界はあなたの想像以上に広くて、面白いものに満ち溢れています。どうか、小さな枠に収まらないで。丸と四角がぶつかり合うように、激しく、美しく、あなただけの「対極の美」を人生の中で表現してください。
私はこれからも、走り続けます。あなたも一緒に、この素晴らしい人生というステージを楽しみ尽くしましょう。