いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。3500字? 400字詰め原稿用紙でいったら9枚弱ですよ? あなた、僕を誰だと思ってるんですか。俳優ですよ? 紅白の司会もやりましたけど、基本的には「ボヤキ」を売りにしている北海道のしがないタレントですよ。それをいきなり「人生で一番大事なことを3500字で語れ」なんて、そんなの大学の卒業論文か、さもなくば藤村D(『水曜どうでしょう』ディレクター)が僕を拉致して「大泉くん、次の企画はこれだ。人生を語るまで帰さないぞ」って詰め寄る時にしか出てこない数字ですよ。

……まあ、いいでしょう。せっかくこうして聞いてくれたんですから。書きますよ。書けばいいんでしょ。でもね、3500字も書いたら、最後の方は僕のカレーに対するこだわりとか、いかに安田顕が変態かとか、そういう話になっちゃうかもしれないけど、それでもいいって言うなら、お付き合いください。

大泉洋が考える「人生で一番大事なこと」。始めます。


第1章:一人では何もできない、という諦めと信頼

僕の人生を語る上で、絶対に外せないのが「TEAM NACS」という存在です。北海学園大学の演劇研究会で出会った、あのむさ苦しい4人の男たち(森崎博之、安田顕、戸次重幸、音尾琢真)。彼らと出会っていなかったら、今の僕は間違いなくここにいません。

人生で大事なことの第一は、「自分一人の才能なんて、たかが知れている」と自覚することかもしれません。

若い頃の僕は、そりゃあ多少の自信はありましたよ。でも、あの5人で集まると、僕なんてただの「声のデカい、パーマのうるさい奴」に過ぎない。リーダーの森崎くんの暑苦しいほどの情熱とか、安田くんの常人には理解できないストイックさ(と変態性)とか、戸次くんの残念なほどの真っ直ぐさとか、音尾くんのどんな役でもこなす器用さとか。彼らの中にいると、自分の足りない部分が嫌でも見えてくるんです。

でも、それが良かった。自分一人で「完璧」を目指すのを諦めた時、初めて「誰かと一緒に何かを作る」面白さが分かったんです。僕がボヤけば、誰かが突っ込んでくれる。僕が滑れば、誰かが笑いに変えてくれる。人生っていうのは、いかに「この人たちと一緒にいたい」と思える仲間を見つけるか、それが全てなんじゃないかと思うんです。

だから、僕にとって一番大事なことの一つは「縁」です。それも、キラキラした成功者の集まりみたいな縁じゃなくて、泥臭くて、喧嘩もして、それでも酒を飲めば「お前ら最高だな」って笑い合えるような、そんな腐れ縁。そういう繋がりさえあれば、人生の荒波なんて、案外なんとかなるもんなんですよ。

第2章:災難を「美味しい」と思えるかどうか

さて、次にお話ししたいのは「災難」についてです。

僕のキャリアを語る上で『水曜どうでしょう』という番組は避けて通れません。原付で日本を縦断させられたり、アラスカでキャンプさせられたり、マレーシアのジャングルでシカを待たされたり……。普通に考えれば、ただの拷問ですよ。

でも、あの番組が教えてくれたのは、「最悪の状況こそが、最高に面白い」という真理です。

予定通りに進まない。バスに酔う。宿がボロい。道に迷う。藤村くんと喧嘩する。普通の人生なら「運が悪い」で片付けられるような出来事も、カメラが回っていれば……いや、カメラが回っていなくても、それを「おい、これ最高に最悪じゃないか!」と笑える精神的余裕。これが人生を豊かにする最大のコツだと思うんです。

人生、生きていれば必ず壁にぶつかります。「なんで自分だけこんな目に」と思うこともあるでしょう。でもね、そこで「いや待てよ、これは後で誰かに話したら絶対ウケるぞ」って考え方を変えてみるんです。不幸をネタにする。災難をコンテンツに変える。そう思った瞬間に、世界はパッと明るくなるんですよ。

僕の「ボヤキ」だってそうです。本当に嫌なことをただ文句として言うんじゃない。「こんなに酷い目に遭ってる僕を、見てくれよ!」という、ある種のサービス精神なんです。人生において「一番大事なこと」は、降りかかる火の粉を払いのける力じゃなくて、その火の粉でサンマを焼いて食べるくらいの図太さ。それが「楽しむ」ということの本質なんじゃないかな。

第3章:サービス精神、という名の誠実さ

俳優としての活動も、バラエティでの活動も、僕の根底にあるのは「サービス精神」です。

「どうすれば目の前の人が笑ってくれるか」「どうすれば観てくれている人が驚いてくれるか」。極論を言えば、人生なんてこれだけでいいんじゃないかとさえ思います。

「自分をどう見せるか」よりも「相手をどう喜ばせるか」。

例えば、ドラマの現場でもそうです。ピリピリした空気の中で撮影するよりも、僕がちょっと馬鹿なことを言って、スタッフや共演者がハハハと笑ってくれる。その瞬間に、現場にいい風が吹くんです。その「いい風」が、結果として良い作品を作るエネルギーになる。

よく「自分のために生きろ」なんて言われますけど、僕はね、自分のためだけに頑張れるほど強くないんです。誰かが喜んでくれる、誰かが笑ってくれる、その笑顔が見たいから、無理な注文も引き受けるし、3500字も書いちゃう(笑)。

サービス精神っていうのは、言い換えれば「誠実さ」だと思うんですよ。目の前の瞬間に対して、自分ができる最大限の「おもてなし」をする。それはお芝居なら役を徹底的に掘り下げることだし、バラエティなら誰よりも体を張ること。この「他者への貢献」という感覚が、自分の人生を一番肯定してくれる気がします。

第4章:結局、大事なのは「家族とカレー」かもしれない

……さて、だいぶ真面目に語ってきましたけど、そろそろ字数も心配になってきました。え?まだ半分くらい?嘘でしょ。藤村くん、これ本当に書かなきゃダメなの?

まあいいや。じゃあ、もっと身近な話をしましょう。

人生で一番大事なこと。それは「家に帰って美味しいご飯を食べる」という、この一点に集約されるかもしれません。

僕にとって、それは「カレー」なんです。僕はカレーを作るのが大好きでね。スパイスを調合して、玉ねぎを飴色になるまで炒めて……あれ、やってると無心になれるんですよ。どんなに忙しくて心が荒んでいても、カレーを煮込んでいる間は、僕は大泉洋でもなんでもない、ただの「カレー好きの親父」になれる。

そして、そのカレーを家族が「美味しい」と言って食べてくれる。

これ以上の幸せって、ありますか?

どれだけ大きな賞をもらっても、どれだけ有名な映画に出ても、家に帰ってきて迎えてくれる家族がいなくて、一人寂しくコンビニの弁当を食べていたら、僕の人生はやっぱりどこか欠けていると思うんです。

社会的な成功なんて、実のところ「おまけ」みたいなものです。人生のメインディッシュは、日々の何気ない会話や、食卓の風景、そして愛する人たちとの時間。それこそが「一番大事なこと」の正体です。

仕事で失敗して落ち込んでも、「まあ、家に帰ればあのカレーがあるし、娘があんな話をしてくれるしな」と思えれば、人間はまた明日も頑張れる。人生を支えるのは、大きな野望じゃなくて、そういう小さな、でも確かな幸せなんです。

第5章:運を呼び込む「勘違い」の力

最後に、もう一つだけ。

僕は自分のことを「運がいい男だ」とずっと思い込んできました。

実際、運がいいんだと思います。大学でNACSのメンバーに出会い、鈴井貴之さん(ミスター)に出会い、素晴らしい作品に出会ってきた。でもね、これって「自分は運がいい」と信じ込んでいるからこそ、チャンスが来た時に迷わず飛び込めたんだと思うんです。

人生において「自分はダメだ」と思うのは簡単です。でも「自分はツイてる!」「これから面白いことが起きるぞ!」という、根拠のない「勘意気込み」というか「勘違い」こそが、運を連れてくる。

僕のパーマだって、元々はコンプレックスだったかもしれない。でも「これは神様がくれたキャラクターだ!」と思い込むことで、それが僕の武器になった。コンプレックスも、欠点も、全部「運がいいから授かった特徴」だと捉え直す。この「ポジティブな勘違い力」は、生きていく上で本当に強力な武器になります。


結びに代えて

さて、いかがでしょうか。3500字には……まだ少し足りないかな? でも、僕が伝えたいことはもうほとんど全部言っちゃいましたよ。

  1. 一人で頑張らない。最高の仲間(縁)を大切にする。
  2. 災難が起きたら「ネタになる」と笑い飛ばす。
  3. 常にサービス精神を持って、人を喜ばせることに全力を尽くす。
  4. 何気ない日常の幸せ(特にカレー!)を一番の宝物にする。
  5. 「自分は運がいい」と根拠なく信じ続ける。

この5つさえあれば、大抵のことはなんとかなります。少なくとも、僕はこれで今までやってきました。

人生は、長い旅のようなものです。『水曜どうでしょう』の旅と同じで、どこに連れて行かれるか分からないし、時には過酷な山道を歩かされることもある。でもね、その道中を「いやぁ、参ったなぁ」なんてボヤきながらも、横にいる仲間と笑い合って進めるなら、その旅は間違いなく「成功」なんです。

もしあなたが今、人生の壁にぶつかって悩んでいるなら、とりあえず僕の出演作でも観て笑ってください。あるいは、美味しいカレーを作って食べてください。そして、鏡を見て「自分はなんて運がいいんだ」と呟いてみてください。

さあ、僕もそろそろ語り疲れました。喉も乾いたし、そろそろビールでも飲ませてもらいますよ。

3500字も書かせるなんて、あなたも相当な「どうでしょう軍団」の素質がありますね(笑)。

またどこかでお会いしましょう。その時は、もっと短い字数で済むような、簡単な質問にしてくださいね!

大泉洋でした。