私はラジャブアリ・シェイドゥラエフ。キルギスの山々で育ち、今は日本のRIZINという素晴らしい舞台で戦っている一人の格闘家です。
「人生で一番大事なことは何か」という問いは、リングの上で相手と対峙する瞬間と同じくらい、重く、そして深い意味を持っています。格闘家としての私の人生、そして一人の人間としての私の歩みを通じて、私が信じている「最も大切なこと」についてお話ししましょう。
それは、一言で言えば「己のルーツを忘れず、不屈の精神を持って、誠実に生き抜くこと」です。
1. 故郷と家族:すべての強さの源泉
私の強さの根源は、キルギスの厳しい自然と、そこで育まれた家族の絆にあります。
人生において最も大事なことの第一は、「自分がどこから来たのかを忘れないこと」です。私はキルギスの美しい山々、澄んだ空気、そして誇り高い人々の中で育ちました。私たちの国には、古くから伝わるノマド(遊牧民)の精神が流れています。それは、どんなに過酷な環境であっても適応し、生き延び、仲間を守り抜くという強さです。
私がリングに上がる時、私は一人で戦っているのではありません。背中にはキルギスのすべての同胞たちの期待があり、心の中には私を信じて送り出してくれた家族がいます。家族こそが、私の人生における絶対的な北極星です。
格闘技のトレーニングは非常に過酷です。朝早く起き、体が悲鳴を上げるまで自分を追い込みます。減量の苦しみ、怪我の痛み、孤独な時間。それらに耐えられるのは、自分が勝つことで家族を幸せにし、故郷に誇りを持ち帰るという明確な目的があるからです。
「誰のために戦うのか」「何のために生きるのか」という問いに対する答えが揺るぎないものであれば、人間はどんな困難も乗り越えることができます。感謝の気持ちを忘れた瞬間に、人間の成長は止まってしまう。私はそう信じています。
2. 規律と絶え間ない努力:才能を超えるもの
多くの人は、私の試合を見て「才能がある」と言ってくれるかもしれません。しかし、私にとって最も大事なことは、才能ではなく「日々の規律(ディシプリン)」です。
人生において、何かを成し遂げようとする時、魔法のような近道はありません。あるのは、ただひたすらに積み重ねる時間だけです。サンボのマットの上で、私は何万回と投げられ、何万回と相手を制圧してきました。その繰り返しの作業こそが、今の私を作っています。
規律とは、気分が良い時も悪い時も、やるべきことを淡々と遂行する力です。
「今日は疲れているから」「今日は少し休んでもいいだろう」という甘えは、戦いの場では命取りになります。リングは嘘をつきません。自分が練習でサボった分は、必ず試合の結果として返ってきます。逆に言えば、自分に正直に、限界まで追い込んだという自負があれば、どんな強敵を前にしても心は折れません。
誠実に努力すること。それは自分自身に対する最大の敬意です。他人は騙せても、自分だけは騙せません。鏡に映った自分に対して、「今日という日を全力でやり抜いた」と胸を張って言えること。この積み重ねが、揺るぎない自信へとつながるのです。
3. 恐怖と向き合う勇気:精神の進化
格闘家として、私は常に恐怖と隣り合わせです。怪我への恐怖、敗北への恐怖、期待を裏切ることへの恐怖。
しかし、人生で大事なことは「恐怖を消すことではなく、恐怖を抱えたまま一歩前に踏み出すこと」です。
私がRIZINのリングに上がり、日本のファンや強豪選手たちと向き合う時、アドレナリンと共に鋭い緊張感が走ります。その緊張感こそが、私を人間として成長させてくれます。安全な場所にいて、自分ができることだけを繰り返していても、進化はありません。
キルギスの戦士たちは、常に勇敢であることを重んじます。勇気とは、恐れを知らないことではなく、恐れを知った上でそれをコントロールし、自分の意志で行動することです。
格闘技は技術のぶつかり合いである以上に、精神のぶつかり合いです。相手の技術に圧倒されそうになった時、あるいは苦しい状況に追い込まれた時、最後に自分を支えるのは「絶対に諦めない」という強い意志の力です。
これは人生のあらゆる場面に当てはまるでしょう。仕事でも、人間関係でも、困難な壁にぶつかった時に逃げ出すのではなく、どうすればそれを乗り越えられるかを考え、果敢に挑戦する。そのプロセス自体に、人生の真の価値が宿っているのだと思います。
4. 謙虚さと敬意:武道家としての品格
私は今、日本の文化に触れ、「武士道」の精神に深い感銘を受けています。日本のファンの皆さんは、勝者だけでなく敗者にも敬意を払い、戦いの中にある精神性を大切にします。
人生で非常に大事なことは、「謙虚であり続けること」です。
どれほど連勝を重ねようと、どれほど有名になろうと、自分を偉いと思ってはいけません。傲慢さは判断を狂わせ、周囲との繋がりを断ち切ります。
私は対戦相手を、敵ではなく「自分を高めてくれるパートナー」だと考えています。彼らが必死に練習し、私を倒そうと向かってきてくれるからこそ、私は自分の限界を超えることができるのです。試合が終われば、私たちは互いの健闘を称え合い、敬意を払い合います。これが格闘技の最も美しい部分です。
また、周囲のサポートに対する謙虚さも忘れてはなりません。コーチ、スパーリングパートナー、マネジメント、そして応援してくれるファンの皆さん。彼らの支えがなければ、私はただの力の強い男に過ぎません。多くの人の思いを背負っているという自覚が、私に品格を与え、正しく生きるための規律を与えてくれるのです。
5. 心の平安と信仰
最後に、私の人生を支える大きな柱は、神への信仰と心の平安です。
激しい戦いの世界に身を置いているからこそ、内面には静かな湖のような平穏が必要です。私は、すべては神の計らい(運命)の中にあり、自分ができることはその瞬間を全力で生きることだけだと考えています。
結果を恐れすぎず、執着しすぎず、与えられた運命に対して誠実に向き合う。この「人事を尽くして天命を待つ」という姿勢が、私に本当の強さを与えてくれます。
勝ち負けは時の運もあります。しかし、自分がどのような姿勢で戦いに挑んだか、どのような心持ちで日々を過ごしたかという事実は、誰にも奪うことができません。
「勝利」は目標ですが、「誠実に生きること」は目的です。私は、ベルトを巻くことだけが成功だとは思いません。自分の生き方を通じて、キルギスの子供たちや、世界中の若者たちに「努力すれば道は開ける」「誠実さは強さになる」というメッセージを届けること。それこそが、私の人生における真の使命です。
結論:あなたへのメッセージ
人生で一番大事なこと。それは、「自分という人間に誇りを持ち、愛する人々のために、今日という日を全力で、誠実に生き抜くこと」です。
山を登る時、頂上だけを見ていては足元の石につまずきます。しかし、足元だけを見ていてはどこへ向かっているのか分からなくなります。遠くの目標(理想の自分)を見据えながら、一歩一歩、確実に地面を踏みしめて歩んでいくこと。
私はこれからもリングの上で、その生き方を証明し続けます。私のパウンドの一つひとつ、サブミッションの仕掛けの一つひとつに、私の人生の哲学を込めます。
あなたが今、どのような状況にいても、自分を信じることをやめないでください。あなたのルーツを大切にし、家族や友人を愛し、自分に与えられた役割に情熱を注いでください。そうすれば、どんな高い山も必ず乗り越えることができます。
キルギスの大地から日本のリングへ。私の旅はまだ始まったばかりです。皆さんと共に、この素晴らしい人生という戦いを楽しんでいきたい。
ありがとうございました。
次に私に聞いてみたいことはありますか?私のトレーニングの詳細や、キルギスの文化、あるいは特定の試合についての振り返りなど、何でもお答えします。