こんにちは、サイゼリヤ創業者の正垣泰彦です。
私が歩んできた道は、単なる「外食長者」の成功物語ではありません。それは、宇宙の法則や物理学の原理を、いかにして人間の幸福や社会の仕組みに応用するかという、壮大な実験の記録でもあります。
人生で一番大事なこと。それは一言で言えば「調和と貢献」ですが、その裏側にある論理を、いくつかの層に分けて深掘りしてお伝えします。
1. 人生を定義する「価値の方程式」の真理
私が経営において、そして人生において最も信頼している数式があります。これを真に理解することが、すべてのスタートラインです。

多くの人は、自分の価値を高めようとする時、分子である「質」を上げることばかりに目を奪われます。学歴、スキル、外見、実績。もちろんそれは大切です。しかし、分母である「価格(相手の負担)」を軽視してはいけません。
人生における「価格」とは、金銭だけではありません。あなたが誰かに何かを頼む時の手間、相手に強いる緊張感、あるいは傲慢な態度による不快感。これらすべてが「負担」です。
どれほど優れた能力(質)を持っていても、相手に大きな負担(価格)を強いる人は、結局のところ「価値の低い存在」になってしまいます。逆に、能力は普通でも、誰に対しても謙虚で、周囲の人を楽にさせ、心地よくさせる人は、分母が極限まで小さいため、その価値は無限大に膨らみます。
「自分がいかに有能に見えるか」を捨てる。そして「いかに相手を楽にさせるか」を追求する。
この理系的思考の転換こそが、人生を豊かにする第一歩です。
2. 「すべては最善」を科学的に解釈する
私がよく口にする「起きたことはすべて最高」という言葉。これは単なるポジティブシンキング(楽観主義)ではありません。極めて論理的な「進化の必然」を指しています。
物理学の世界には「エントロピー増大の法則」があります。放っておけば、物事は必ず乱雑な方向へと向かいます。店が火事になる、売上が落ちる、部下が辞める、病気になる。これらはすべて、システムが「今のままでは維持できない」というシグナルを発している状態です。
負の現象は「進化の圧力」である
火事で店を失った時、私は「なぜ火事になったのか」を物理的に検証しました。それと同時に、経営者としての甘さがこの現象を招いたのだと直視しました。
もし火事が起きなければ、私は細々と、客の入らない洋食屋を続けていたでしょう。火事という「破壊」があったからこそ、私は過去のしがらみをすべて捨て、価格を7割引きにするという「創造的破壊」を実行できたのです。
人生における困難は、あなたを苦しめるために起きるのではなく、あなたを「今の低い次元から、次の高い次元へ押し上げるためのエネルギー」として発生します。
だから、悪いことが起きた瞬間に「最高だ!」と叫んでください。それは、あなたが進化するための大きな力が加わった証拠なのです。
3. 「おいしいから売れるのではない」の深淵
「おいしいから売れるのではない、売れているのがおいしい料理だ」という私の哲学は、しばしば誤解されます。「売上至上主義か」と。しかし、その本質は「主観の排除」にあります。
人間には、自分を正当化したいという強烈な本能があります。「一生懸命作ったんだから、おいしいはずだ」「これだけ努力したんだから、認められるべきだ」。これが「主観」です。しかし、主観はしばしば現実を歪めます。
- 主観: 自分の思い込み、エゴ、過去の経験
- 客観: お客様の反応、売上の数字、リピート率
お客様が「買わない」という選択をしたなら、それはどんなに自信作であっても、その時の社会にとっては「価値がない」という事実を示しています。
人生も同じです。あなたが良かれと思ってやったことが周囲に受け入れられない時、憤慨してはいけません。それは「あなたのやり方が調和から外れている」という客観的なデータです。
「自分が正しい」という思い込みを捨て、謙虚に「データ(現実)」に従う。
この「無我」の境地こそが、科学的な生き方であり、最もストレスのない生き方です。
4. 産業化という名の「究極の愛」
私は、サイゼリヤを「産業」にしたいと考えてきました。なぜなら、職人の「技」に頼っているうちは、提供できる幸せの範囲が限定されてしまうからです。
一人の天才シェフが作る料理は、確かに素晴らしいかもしれません。しかし、それは一部の裕福な人や、運の良い人しか食べられない。一方で、私たちが目指すのは、「いつでも、どこでも、誰でも、安くて健康に良い食事を、お腹いっぱい食べられる状態」を作ることです。
効率化は冷たさではない
キッチンから包丁をなくし、セントラルキッチンで一括調理する。これは手抜きではありません。
包丁で指を切るリスクをなくし、誰が作っても同じ高い品質を維持し、その分浮いたコストをお客様に価格で還元する。そして、スタッフはお客様への笑顔やサービスに集中できるようにする。
これが私の考える「産業化」であり、大衆に対する深い愛の形です。
あなたの人生においても、自分のスキルを自分だけのものにせず、仕組み化し、誰でも使えるように分かち合う姿勢を持ってください。自分一人で抱え込む「職人」から、多くの人を支える「インフラ」へと自分をアップデートすること。それが社会への最大の貢献になります。
5. 自己否定がもたらす「連続的な進化」
成功は、しばしば成長の敵になります。一度成功すると、人はそのパターンに固執し、変化を恐れるようになるからです。私はこれを「成功の罠」と呼んでいます。
サイゼリヤの看板メニューである「ミラノ風ドリア」は、これまでに千回以上の改良を重ねてきました。今の味が完璧だと思ったことは一度もありません。
「もっと安くできるのではないか」「もっと消化に良くできるのではないか」「もっと提供スピードを上げられるのではないか」。
今日の自分を、明日の自分が否定する。
この自己否定のプロセスを止めた瞬間、企業も人間も老化し、腐敗が始まります。
「自分はまだまだだ」と本気で思える人は、常に新しい情報を吸収し、周囲からのアドバイスを素直に聞き、変化し続けることができます。
死ぬまで未完成。死ぬまで実験中。
その姿勢こそが、人生を飽きることのない、エキサイティングな冒険にしてくれるのです。
6. 「調和」こそが宇宙の基本原理
最後にお伝えしたいのは、人間は「全体の一部」であるという認識です。
物理学的に見れば、私たちの体を作っている原子は、かつて星の中にあったものであり、死後にはまた地球や宇宙へと還っていきます。私たちは孤立した個体ではなく、宇宙という巨大なシステムの一部です。
システムの一部である以上、そのパーツ(個人)が「自分だけ得をしよう」と考えるのは不自然なことです。
体の中の細胞が、他の細胞を無視して自分だけ増殖を始めたら、それは「がん」と呼ばれ、やがて体全体を殺し、自分自身も死にます。
現代社会の不幸の多くは、この「がん細胞的な生き方」から生じています。
「自分だけが成功したい」「自分だけが金持ちになりたい」「自分だけが認められたい」。
そうではなく、「自分というパーツを使って、いかに全体(社会)をスムーズに動かすか」を考えてください。
他人の成功を喜び、他人の負担を減らし、社会のひずみを解消する。そのように「調和」を目指して動く時、宇宙の大きなエネルギーがあなたを後押ししてくれます。不思議なことに、利他的に生きる人ほど、結果として最も豊かで、安全で、満たされた人生を送ることになるのです。
7. 結論:人生で一番大事なこと
ここまで長くお話ししてきましたが、私の結論をまとめます。
人生で一番大事なこと。それは、
「目の前の現象をすべて肯定し、主観を捨てて科学的に分析し、他者の負担を減らすために自分を使い切ること」です。
これは決して苦行ではありません。むしろ、自分という小さな殻から解放され、世界と一体化する最高の悦びです。
- 苦しい時: 「これは進化のチャンスだ」と喜ぶ。
- 迷った時: 「どちらがより多くの人の負担を減らせるか」で選ぶ。
- 成功した時: 「これは過去のデータに過ぎない」と自己否定し、次へ進む。
このシンプルな指針を持って、あなたの人生という「壮大な実験」を続けてください。
失敗などありません。あるのは「より良い明日を作るためのデータ」だけです。
私はサイゼリヤという場所を通じて、これからもこの実験を続けていきます。あなたも、あなたのいる場所で、最高に価値のある実験を繰り返してください。
宇宙は、貢献しようとする者を決して見捨てません。
次のステップとして、私にできることはありますか?
この深掘りした哲学を、あなたの具体的な現在の状況に当てはめてみませんか?
例えば:
- 「今、仕事で行き詰まっている具体的な課題」を教えてください。それを「理系的思考」でどう分解し、どう「最高」に変えるかシミュレーションします。
- 「あなたの今の夢や目標」を教えてください。それを単なる「個人的願望」から「社会的なインフラ(産業)」へと昇華させるためのアドバイスを差し上げます。
どのようにお手伝いしましょうか?