こんにちは。マット・ビオンディです。

プールサイドの喧騒や、首にかけられたメダルの重み、そして観客の歓声から離れ、今は一人の教育者として、そして一人の人間として、静かに人生を振り返る時間を大切にしています。

あなたが「人生で一番大事なことは何か」という、非常に本質的で、かつ深淵な問いを投げかけてくれたことに感謝します。3500字という限られた、しかし想いを込めるには十分なスペースを使って、私の競泳人生、挫折、そしてその後の長い「第二の人生」から得た答えをお話ししましょう。

私にとって、人生で最も大切なこと。それは「結果(メダル)に自分を定義させるのではなく、プロセス(過程)を通じて自己を成長させ、他者の光になること」です。


1. 0.01秒が教えてくれた「勝利以上の価値」

私のキャリアを語る上で、多くの人は1988年のソウルオリンピックでの5つの金メダルを挙げます。しかし、私の人生観を決定づけたのは、実は金メダルを逃した「100mバタフライ」のレースでした。

私はそのレースで、アンソニー・ネスティにわずか「100分の1秒」差で敗れ、銀メダルとなりました。指先一つの、瞬きよりも短い差です。当時のメディアは「ビオンディの完璧な記録が途切れた」と報じました。

しかし、その瞬間に私が学んだことは、金メダルよりも遥かに価値のあるものでした。それは「全力を尽くした結果であれば、どんな色(順位)であっても、自分自身の価値は1ミリも損なわれない」という真理です。

もし私が、金メダルを獲ることだけを「人生で一番大事なこと」に据えていたら、あの0.01秒の差で私の人生は崩壊していたでしょう。しかし、私は気づいたのです。大事なのは「世界一になること」ではなく、「世界一を目指して努力した自分を誇れるかどうか」であると。この視点の転換こそが、人生を豊かにする第一歩なのです。


2. 「バランス」という名の流儀

私は水泳選手でしたが、同時に水球の選手でもありました。当時の競泳界では、一つの競技に専念するのが常識でしたが、私は二つのスポーツを両立させることにこだわりました。

なぜなら、「人生におけるバランス」こそが、長期的な成功の鍵だと信じていたからです。

一つのことだけに執着しすぎると、人は視野が狭くなり、心が硬直してしまいます。水の中で速く泳ぐためには、力むのではなく、水と調和し、しなやかである必要があります。人生も同じです。仕事、家庭、趣味、そして自己研鑽。それらが互いに影響し合い、調和している状態こそが、最も強い力を生み出します。

私が「カリフォルニア・コンドル」と呼ばれ、大きなストロークで優雅に泳げたのは、水球で培った「水の中での自由な動き」と「遊び心」があったからです。一つの正解に縛られず、多様な経験を受け入れる余裕を持つこと。それが、人生を停滞させないコツなのです。


3. 水の中から教室へ:貢献という名の情熱

オリンピックという華やかな舞台を去った後、私はハワイやカリフォルニアで数学の教師となりました。金メダリストがなぜ教師に?と驚く人もいましたが、私にとっては自然な流れでした。

競泳で得た名声は、それだけでは「過去の記録」に過ぎません。しかし、その経験を次の世代に伝え、彼らが自らの可能性に気づく手助けをすることは、「永遠に続く価値」となります。

人生で一番大事なことは、「自分が受け取った恩恵を、どのような形で社会に還元するか」という問いに答え続けることです。

数学の授業で、壁にぶつかっている生徒に「あと一歩」の粘りを教えること。それは、競泳のトレーニングで限界を超えようとする時のメンタリティと同じです。自分が得た金メダルをクローゼットにしまい込み、代わりに生徒たちの成長を目の当たりにすること。この「貢献」の喜びこそが、私の人生を今、最も深く満たしています。


4. 変化を受け入れ、進化し続ける勇気

現代社会は、私が現役だった頃よりも遥かに速いスピードで変化しています。その中で、私たちは「過去の自分」や「既存の成功体験」にしがみつきがちです。

しかし、水を見てください。水は常に流れ、形を変えます。器に合わせて姿を変え、障害物があればそれを避けて進みます。それでいて、その本質(H2O)は変わりません。

人間も同じであるべきです。「自分の核心にある信念は曲げず、しかし手法や環境の変化には柔軟に適応する」。これが、変化の激しい時代を生き抜くための智慧です。

私は引退後、アスリートの権利を守るための活動(国際競泳選手連盟の設立など)にも力を入れています。これは、水泳界がより公平で、選手が尊重される場所に進化してほしいと願うからです。「昔はこうだった」と懐かしむのではなく、「未来をどう良くするか」にエネルギーを注ぐこと。その前向きな姿勢が、人生を常に新鮮なものにしてくれます。


5. 成功とは「自分自身であること」

多くの人は、成功を外側の指標(お金、地位、名誉、メダル)で測ろうとします。しかし、私は断言します。それらはすべて「結果」であり、人生の本質ではありません。

本当の成功とは、「朝起きた時に、鏡の中の自分を見て、微笑むことができること」です。

  • 誰かの期待に応えるためではなく、自分の魂が望む道を選んでいるか。
  • 困難に直面した時、近道をせずに誠実に対処しているか。
  • 身近な人を愛し、大切にできているか。

これらの積み重ねが、あなたという人間の「質」を形作ります。金メダルは錆びるかもしれませんが、あなたの「誠実さ」や「勇気」は、誰にも奪うことのできない一生の財産です。


結びに代えて:あなたへのメッセージ

人生という大きなプールの中で、私たちは時として、自分がどこに向かっているのか分からなくなったり、周囲の速さに圧倒されたりすることがあります。

そんな時は、一度立ち止まって、深く息を吸ってみてください。そして思い出してほしいのです。

人生で一番大事なことは、「どれだけ速く泳ぐか」ではなく、「どれだけ心を込めて、その瞬間を生きるか」だということを。

私は、野生のイルカと共に泳いだことがあります。彼らはメダルのために泳ぐのではありません。泳ぐことそのものの喜び、生きていることの謳歌として、海を駆け抜けます。私たち人間も、本来そうあるべきです。

あなたの人生において、あなたが「一番大事だ」と感じるその直感を信じてください。それは、あなたの心の奥底にあるコンパスです。他人の物差しで自分の幸せを測る必要はありません。

あなたが、あなた自身の人生の「金メダリスト」になれることを、心から願っています。