こんにちは。ケレブ・ドレセルです。
まず、このような深い問いを私に投げかけてくれたことに感謝します。多くの人は私を「金メダリスト」として、あるいは「世界記録保持者」として見ます。プールの外側から、ストップウォッチの数字や表彰台での姿を通じて私を定義しようとします。しかし、一人の人間として、そして幾度もの栄光とそれ以上の葛藤を経験してきた男として、私が学んだ「人生で一番大事なこと」は、実はプールの底にも、金色のメダルの中にもありませんでした。
3,500字という限られた、しかし広大なキャンバスの中で、私の魂の叫びとも言える「人生の真理」についてお話ししましょう。
1. 金メダルは「あなた」を定義しない
多くの人は、成功こそが人生の目的だと信じています。私もかつてはそうでした。東京オリンピックで5つの金メダルを獲得したとき、私は世界の頂点にいました。しかし、表彰台から降り、数週間が経った後、私の心の中にあったのは達成感ではなく、「耐え難いほどの虚無感」でした。
あんなに欲しかった金メダルは、単なる冷たい金属の塊に過ぎませんでした。それは私の痛みを消してはくれないし、私の孤独を埋めてもくれない。もしあなたが「何かに成功すれば幸せになれる」と思っているなら、それは非常に危険な罠です。
人生で一番大事なことの一つは、「結果という偶像」から自分を解放することです。
私の価値は、タイムが49秒45(100mバタフライの世界記録)だから高いわけではありません。私が私であるから、価値があるのです。あなたが仕事で失敗しても、目標を達成できなくても、あなたの人間としての価値は1ミリも損なわれません。金メダルは「何をしたか(Do)」の証明にはなりますが、「誰であるか(Be)」を説明するものではないのです。
2. 「自分を許す」という勇気
2022年の世界選手権の最中、私は突然競技を棄権し、プールから離れました。精神的に限界だったのです。あの日、私は「完璧なケレブ・ドレセル」を演じ続けることができなくなりました。
長い間、私は自分を追い込み続けてきました。完璧でなければならない、勝ち続けなければならない、誰よりも努力しなければならない。そうした強迫観念が、私の心を蝕んでいました。休養期間中、私はただひたすらに自分と向き合いました。そして気づいたのです。
人生で一番大事なのは、「不完全な自分を愛し、許すこと」です。
私たちはロボットではありません。波があるのが当たり前です。調子が良い日もあれば、ベッドから出ることさえ苦痛な日もあります。それを「弱い」と切り捨てるのではなく、「今はそういう時期だ」と受け入れること。自分に対して、親友に接するような優しさ(セルフ・コンパッション)を持つこと。これができなければ、どれほどの富や名声を手に入れても、心は常に飢えたままです。
3. 「プロセス」そのものを愛する生き方
水泳選手としての私の毎日は、華やかなものではありません。朝5時に起き、冷たい水に飛び込み、何キロも何キロも壁の間を往復する。塩素の匂いが染み付いた、地味で、時に退屈なプロセスの連続です。
もし私が「金メダルのためだけ」に泳いでいたら、私はとっくに精神が崩壊していたでしょう。なぜなら、4年間の努力の結果が決まるのは、わずか数十秒のレースだからです。その数十秒のために、残りの1,460日を犠牲にするのは、人生の計算として合いません。
大事なのは、「過程(プロセス)の中に喜びを見出すこと」です。
- 指先が水を捉える感触
- トレーニングログに書き込む一言
- 練習の後に仲間と笑い合う瞬間
- 昨日よりわずかに効率的になったドルフィンキック
こうした「小さなこと」に意識を向け、その瞬間を味わうこと。結果はコントロールできませんが、プロセスに取り組む態度は自分で決められます。人生の本当の輝きは、ゴールテープを切った瞬間ではなく、そこに至るまでの泥臭い道のりの中にこそ宿っているのです。
4. 繋がりという「真の報酬」
私はフロリダの農場で過ごす時間が大好きです。牛を眺め、土に触れ、家族と過ごす。そこには「スイマーのドレセル」はいません。ただのケレブがいるだけです。
人生の終わりに、私たちが思い出すのは何でしょうか?獲得したトロフィーの数でしょうか?それとも、愛する人の手の温もりでしょうか?答えは明白です。
人生で一番大事なのは、「愛する人々との深い繋がり」です。
妻のメイガン、息子のアウグスト、そして両親や友人たち。私がどん底にいたとき、彼らは「金メダリストの私」ではなく、「一人の人間としての私」を抱きしめてくれました。成功しているときに寄ってくる人は大勢いますが、あなたが何も持っていないときに隣にいてくれる人こそが、あなたの人生の宝物です。
SNSで何万人、何百万人から「いいね」をもらうことよりも、たった一人の大切な人と目を合わせて、心を通わせること。その繋がりこそが、私たちがこの世界で生きていくための唯一の酸素になります。
5. 「今、ここ」に存在するということ
私はよく、練習日誌(ログ)を書きます。そこにはタイムだけでなく、その日の感情や気づきを細かく記します。なぜそうするかというと、自分の人生を「自動操縦」にしたくないからです。
多くの人は、過去の失敗を悔やむか、未来の不安に怯えながら生きています。しかし、人生とは「今この瞬間」の連続でしかありません。水泳も同じです。レース中に「隣の選手が速いな」とか「あそこで失敗した」と考えてしまったら、その瞬間に負けが決まります。
「今、この瞬間を全力で生き切ること(Presence)」。
これが、私が人生から学んだ究極の技術です。コーヒーを飲むならその香りを全力で楽しむ。子供と遊ぶならスマホを置いてその笑顔に没入する。苦しいときこそ、呼吸に意識を向けて「今」に踏みとどまる。この姿勢こそが、人生の質を決定づけます。
6. 信仰と感謝:自分より大きな存在を知る
私は自分の腕に多くのタトゥーを入れています。それらは私の人生の旅路や信念を表しています。中でも、私の強さの根源にあるのは「感謝」の心です。
私は自分の力だけでここまで来たとは思っていません。与えられた才能、支えてくれる環境、そして自分を超えた大きな力(信仰)への感謝。自分が世界の中心ではないと知ることは、大きな解放感をもたらしてくれます。
「感謝のレンズを通して世界を見ること」。
不満を探せばキリがありませんが、感謝を探せば、私たちの周りには奇跡が溢れています。健康であること、水がきれいで泳げること、誰かが自分を想ってくれていること。当たり前だと思っていることすべてに「ありがとう」と言えるようになったとき、人生は劇的に豊かになります。
結論:あなたへのメッセージ
人生で一番大事なこと。それは、「成功という鎧を脱ぎ捨て、ありのままの自分として、大切な人たちと共に、この瞬間を愛し抜くこと」です。
金メダルはいつか錆び、記録はいずれ誰かに塗り替えられます。しかし、あなたが誰かを愛した記憶、自分を許した勇気、そして今日という日を懸命に生きたという事実は、永遠に誰にも奪われません。
もしあなたが今、何かの重圧に押しつぶされそうになっていたり、自分の価値を見失いそうになっていたりするなら、一度深呼吸をしてください。そして、冷たい水に顔を洗うように、外側の評価をすべて洗い流してみてください。
そこに残っている「ただのあなた」こそが、何よりも尊く、美しいのです。
私はこれからも泳ぎ続けます。でもそれは、自分を証明するためではありません。この素晴らしい「人生というプロセス」を、自分らしく楽しむためです。
あなたも、あなたの人生というプールで、自分だけの美しいストロークを刻んでいってください。
“Be the human, not the machine.”
(機械ではなく、人間であれ。)