セガサミーホールディングスの里見治紀です。

「人生で一番大事なことは何か」という問いに対し、エンタテインメントという「感動」を売る世界の経営を担う者として、また一人の人間として、私の考えを深くお伝えしたいと思います。

3,500字という限られた、しかし想いを込めるには十分なこの場を借りて、私が歩んできた道のりと、その中で確信に至った「人生の核心」についてお話しします。


1. 究極の問い:「感動」こそが人生の目的である

私が経営者として、そして人生の旅人として最も大切にしている言葉は、セガサミーグループのミッションでもある「感動体験を創造し続ける(Constantly Creating, Forever Captivating)」という言葉に集約されます。

結論から申し上げれば、人生で一番大事なこと、それは「自分自身が感動し、そして他者を感動させること」です。

なぜ「感動」なのか。私たちは衣食住が満たされただけでは、真に「生きている」とは実感できません。心が震えるような体験、誰かと分かち合う喜び、何かに没頭して時間を忘れる瞬間――。こうした「感情の揺らぎ」こそが、人生の質を決定づけるからです。

私は日々、ゲームやパチンコ・パチスロ、リゾート、アニメーションといったエンタテインメントを通じて、世界中の人々に「遊び」を提供しています。しかし、私たちが売っているのはソフトウェアのデータやプラスチックの塊ではありません。その先にある「驚き」「熱狂」「癒やし」、つまり「心の動く瞬間」を提供しているのです。

人生も同じです。どれだけ高い地位に就き、どれだけ資産を築いたとしても、そこに心が動く体験がなければ、それはただの「生存」に過ぎません。「心を動かす側」に回ること。これが、私が考える人生の醍醐味です。


2. 「Game Changer」として生きる

では、どうすれば人生において感動を生み出し続けることができるのか。そのための指針として、私はグループの従業員にも常に「Game Changer(ゲームチェンジャー)であれ」と伝えています。これは私自身の座右の銘でもあります。

人生において一番大事なことの二つ目は、「既存のルールに縛られず、自ら変化を起こす勇気を持つこと」です。

私は創業者の息子として生まれました。周囲からは「二代目」という色眼鏡で見られることも少なくありませんでした。もし私が、父が作ったレールの上をただ歩むだけの人間であれば、セガサミーの未来も、私自身の人生も、停滞していたでしょう。

私は大学卒業後、あえて父の会社に入らず、証券会社という全く異なる厳しい環境に身を置きました。その後、米国でMBAを取得し、海外の厳しいビジネスの最前線を経験しました。それは、「里見治の息子」としてではなく、「一人のプロフェッショナル」として自分を確立したかったからです。

人生の主導権(コントローラー)を他人に渡してはいけません。世の中が決めた「正解」や、前例という名の「壁」に突き当たったとき、それをどう乗り越えるか、あるいはどう壊して新しいルールを作るか。その挑戦のプロセス自体が、最大の感動を生むのです。

「現状維持は退化である」。この危機感を持ち、常に自分自身をアップデートし続けること。それが、豊かな人生を切り拓く唯一の道だと信じています。


3. 「ロジック」と「パッション」の融合

私はUCバークレーでMBAを取得しましたが、そこで学んだ「ロジック(論理)」は経営において不可欠です。しかし、ロジックだけで人は動きませんし、面白いものは生まれません。人生を豊かにするために大事なのは、「冷徹なまでのロジック」と「燃え上がるようなパッション(情熱)」を高い次元で両立させることです。

ビジネスにおいても人生においても、数字やデータは嘘をつきません。しかし、数字だけを見ていては、世界を熱狂させる「ソニック」のようなキャラクターは生まれませんし、革新的なリゾート施設も作れません。

「なぜこれをやるのか」という強い想い(パッション)があり、それを実現するための緻密な戦略(ロジック)がある。この両輪が揃ったとき、人生という名のゲームは爆発的な加速を見せます。

皆さんも、自分の好きなこと、熱中できることに対して、徹底的に戦略的になってみてください。好きなことを「単なる趣味」で終わらせるのか、それとも「自分の人生を定義する価値」にまで昇華させるのか。その差は、情熱を支える論理的な思考があるかどうかにかかっています。


4. グローバルな視点と多様性の受容

私が人生において大きな影響を受けたのは、海外での経験です。多様な人種、文化、価値観が混ざり合う環境で揉まれたことで、私の視野は劇的に広がりました。

人生で大事なことの四つ目は、「自分の『当たり前』を疑い、広い世界に触れ続けること」です。

日本という国は素晴らしい文化を持っていますが、時に同質性が強すぎて、異質なものを排除してしまう傾向があります。しかし、エンタテインメントは国境を越えます。ソニックが世界中で愛されているのは、そこに普遍的な「楽しさ」と、それぞれの文化に寄り添う「柔軟性」があるからです。

自分の殻に閉じこもらず、自分とは全く異なるバックグラウンドを持つ人の意見に耳を傾ける。旅をし、本を読み、未知の体験に飛び込む。そうして得られた多角的な視点は、人生におけるあらゆる決断を助け、あなたの人間としての器を大きくしてくれます。


5. 誠実さと信頼:人間関係の土台

経営者として、多くのリーダーや成功者を見てきましたが、最後に残るのはやはり「誠実さ」です。

どれほど能力が高くても、不誠実な人間は、一時的には成功しても長続きはしません。エンタテインメントという仕事は、多くのクリエイター、エンジニア、パートナー企業との信頼関係の上に成り立っています。一人の力で作れるものには限界があるのです。

人生において一番大事な資産は、銀行の預金残高ではありません。「あなたが困ったときに助けてくれる人の数」であり、「あなたと一緒に感動を分かち合いたいと思ってくれる人の数」です。

誠実であるということは、自分に嘘をつかないということでもあります。自分の信念を曲げてまで得た成功に、真の感動はありません。泥臭くても、真正面から向き合い、約束を守る。その積み重ねが「信頼」という名の最強の武器になります。


6. 「遊び」を真剣に捉える

セガサミーのDNAには「遊び」があります。私は、人生そのものを「壮大な遊び」だと捉えています。

ここで言う「遊び」とは、決して不真面目ということではありません。むしろその逆です。子供が泥だらけになって遊ぶときのように、損得勘定を抜きにして、その瞬間に全てを注ぎ込む。その「真剣な遊び」の精神こそが、イノベーションの源泉であり、生きる喜びそのものです。

大人はいつの間にか、「効率」や「生産性」という言葉に縛られ、心の余裕を失ってしまいます。しかし、効率だけを求めた人生に、どんな面白いストーリーがあるでしょうか。

無駄だと思えることにこそ、実は宝物が隠れています。寄り道をし、失敗をし、時には負けて悔し涙を流す。その全てが、あなたの人生という物語を豊かにするエッセンスです。「人生というゲームを、誰よりも真剣に、誰よりも楽しむこと」。この姿勢を忘れないでください。


7. 次世代への継承:何を残すか

最後に、私は「継続性」についてお話ししたいと思います。セガサミーグループを100年、200年続く企業にしたいと願っていますが、これは私個人のエゴではありません。

人生で大事なことの最後は、「自分が受け取ったバトンを、より良い形で次の世代へ渡すこと」です。

私たちは先人たちが築き上げた文明や文化、恩恵の上に生きています。ならば、私たちもまた、後の世を生きる人たちのために何かを残すべきです。それはビジネスでの成功かもしれませんし、育てた子供たちへの愛情かもしれません。あるいは、誰かを笑顔にしたという小さな記憶かもしれません。

私はエンタテインメントを通じて、子供たちが夢を持てる社会を作りたいと考えています。私の仕事が、誰かの人生に彩りを与え、その人がまた誰かに優しくなれる。そんな「感動の連鎖」を作ることが、私の使命だと思っています。

あなたの人生が終わるとき、世界はあなたが生まれる前よりも少しだけ良くなっているでしょうか。そう自問自答しながら生きることは、人生に深い意味を与えてくれます。


結びに代えて

人生で一番大事なこと。それは特定の「物」や「状態」を指すのではありません。

  • 「感動」という目的を忘れず、
  • 「Game Changer」として自ら変化を起こし、
  • 「パッションとロジック」を武器に、
  • 「誠実さ」を持って世界と繋がり、
  • 「真剣に遊び」、
  • 「次世代のために尽くす」。

これらの要素が複雑に絡み合い、響き合うプロセスそのものが、最も大事なことなのだと私は確信しています。

人生というステージには、予期せぬトラブルやバグがつきものです。しかし、それすらも「面白い展開になってきた」と笑い飛ばせる強さを持ってください。あなた自身が、自分の人生という物語の最高のプロデューサーであり、主人公なのです。

世界をもっと面白く、もっと熱くしていきましょう。私もセガサミーという旗を掲げ、常に先陣を切って走り続けます。

共に、素晴らしい感動体験に満ちた人生を歩んでいきましょう。