私はユー・エス・エス(USS)の安藤之弘として、これまでの歩みを振り返りながら、「人生で一番大事なことは何か」という問いに対し、私の経営哲学と人生観を交えてお話しさせていただきます。

私が歩んできた道は、一言で言えば「不透明な世界に光を当て、信頼という橋を架ける」という挑戦の連続でした。中古車オークションという事業を通じて、私が何を学び、何を信じてきたのか。約3500字という限られた、しかし深い考察を許されるこの場を借りて、私の真意を伝えたいと思います。


序章:人生の価値を決める「公平性」という名の基盤

私が1980年に中古車オークションの事業を始めたとき、中古車業界はいわゆる「三悪」などと呼ばれることもある、非常に不透明な世界でした。価格はあってないようなもの。売り手と買い手の情報格差が大きく、信頼よりも駆け引きが優先される。そんな状況を目の当たりにしながら、私は確信しました。「これからは、正直者が馬鹿を見ない、公平で透明な市場を作らなければならない」と。

この経験から得た、人生で一番大事なことの第一の答えは、「信用を築くための『場』と『仕組み』に誠実であること」です。

人生とは、自分一人の力で成し遂げられることはたかが知れています。しかし、自分が作った仕組みや、自分が提供する価値が、多くの人にとって「便利で、公平で、安心できるもの」になったとき、それは社会的な大きなうねりとなります。私にとってのそれは中古車オークションでしたが、これはあらゆる職業、あらゆる人生の局面においても共通することです。

第一章:信用こそが、唯一の枯れない資本である

ビジネスにおいても人生においても、最大の資産は「お金」ではなく「信用」です。

USSがなぜ、業界シェア4割という圧倒的な地位を築けたのか。それは単に会場を広げたからではありません。「USSに行けば、適正な価格で、確実に売買ができる」という信用を、40年以上の歳月をかけて積み上げてきたからです。

信用を築くには、三つの要素が必要です。

1つ目は、「ルールを守ること」。

2つ目は、「検査(事実)を誤魔化さないこと」。

3つ目は、「常に相手の利益を先に考えること」です。

人生の成功とは、どれだけの人に「あなたがいれば安心だ」と言ってもらえるかにかかっています。一時の利益のために嘘をつけば、その場は凌げるかもしれませんが、積み上げた信用は一瞬で崩れ去ります。私が経営において、車両の検査基準を厳格化し、デジタル化を推進したのは、人間が介在することによる「主観」や「不正」を排除し、徹底的に客観的な信用を担保したかったからです。

自分の人生を振り返ったとき、周囲に信頼できる人が何人いるか。そして、自分自身が誰かの信頼に応える存在であり続けているか。それこそが、人生の豊かさを測る唯一の物差しであると私は確信しています。

第二章:合理性の追求と、変化への勇気

次に大事なことは、「変化を恐れず、常に合理的な選択を続けること」です。

私は業界に先駆けて、コンピューターによるセリシステムや、衛星放送を活用した遠隔入札システムを導入しました。当時は「顔を合わせないで商売ができるか」「手競りこそがオークションの醍醐味だ」という強い反発もありました。しかし、私は確信していました。アナログな手競りでは処理できる台数に限界があり、参加できる人数も限られる。より多くの人が、よりスピーディーに、より広範囲で取引できるようにすることこそが、会員の皆様の利益に繋がるのだと。

伝統を守ることは大切ですが、それが単なる「慣習」や「既得権益」になってしまっているのなら、壊す勇気を持たなければなりません。人生において、私たちはしばしば「今までこうだったから」という理由で、非効率な道を選んでしまいがちです。しかし、時代は刻一刻と変化しています。

その変化の荒波の中で、何が最も合理的(合理的とは、関わるすべての人にとって最適であること)かを考え抜き、決断する。この「決断の質」が、人生の質を決めます。合理性を突き詰めると、最終的には「誠実さ」に辿り着きます。なぜなら、不誠実なことは中長期的には必ず非効率を招くからです。

第三章:プラットフォームとしての生き方——「利他」の精神

私はUSSを、単なる「会社」ではなく、一つの「プラットフォーム(基盤)」であると考えてきました。

オークション会場という場を提供し、そこで会員様が商売を成立させ、利益を上げ、家族を養っていく。USSが儲かる前に、まず会員様が潤う仕組みを作ること。これが私の「利他」の考え方です。

人生において一番大事なことの三つ目は、「自分が他者の成功の助けになっているか」という視点を持つことです。

自分一人が勝つ「Win-Lose」のモデルは長続きしません。自分が勝つことで、周りも勝ち、社会も良くなる「三方よし」の精神。これを具現化するのがプラットフォームという考え方です。

自分の才能や時間、資産を、自分一人の贅沢のために使うのではなく、誰かの活動を支えるための土台として提供する。そうすることで、自分一人では到底見ることができなかった景色を、多くの仲間と共に眺めることができるようになります。

「人から何を奪えるか」ではなく、「人に何を与えられるか」。

この問いを自分に投げかけ続けることが、結果として自分自身に最大の豊かさを呼び込む唯一の法則なのです。

第四章:継続という名の執念

どんなに素晴らしい志も、どんなに優れたシステムも、続けなければ意味がありません。

私がUSSをここまで大きくできたのは、私に特別な才能があったからではなく、誰よりも「継続」にこだわったからです。

毎週決まった時間にオークションを開催する。雨の日も風の日も、景気が良い時も悪い時も、一回も休まずにマーケットを開き続ける。この「当たり前のことを、当たり前に続ける」ことの難しさと、その先にある圧倒的な力を、私は身をもって知っています。

人生においても、多くの人が途中で諦めてしまいます。壁にぶつかったとき、批判されたとき、結果が出ないとき。しかし、そこで歩みを止めれば、それまでの努力はすべてゼロになります。

私が大切にしているのは、「一歩先を読む執念と、それを形にするまでやり抜く忍耐」です。

IT化も、全国展開も、最初からすべてが順調だったわけではありません。むしろトラブルの連続でした。しかし、「これが業界の未来に必要なんだ」という確信があれば、どんな困難も「調整事項」に過ぎなくなります。情熱という言葉は少し気恥ずかしいですが、心の奥底で静かに燃え続ける「執念」こそが、人生を切り拓く原動力になります。

第五章:次世代へつなぐ——「無私」の境地

私は2023年に会長を退任し、名誉会長となりました。

長年築き上げてきたものを手放すことに、躊躇がなかったわけではありません。しかし、組織というものは、特定の個人に依存し続けてはいけないのです。

人生において、最後に大事なことは、「いかに綺麗に、次の世代へバトンを渡せるか」です。

自分が去った後も、自分が作った仕組みが回り続け、社会に貢献し続ける。それが創業者の最大の喜びであり、責任でもあります。

「自分が、自分が」という「我(が)」を捨て、組織や社会の永続性を優先する。この「無私の心」を持って物事に当たるとき、人は初めて本当の意味で自由になれる気がします。

私の人生は、中古車という「過去の所有物」に新しい価値を見出し、次の持ち主へと繋ぐ仕事でした。それは、命のリレー、想いのリレーにも似ています。私自身もまた、これまでの経験と知恵を、次の世代へと繋ぐリレーの一走者に過ぎません。


結び:人生で一番大事なこと

3500字という長い思考の旅を経て、改めて問いに答えます。

安藤之弘が考える、人生で一番大事なこと。それは、

「揺るぎない公平な基準を持ち、信頼という資産を積み上げながら、誰かの成功を支える『土台』であり続けること」

これに尽きます。

目先の数字や名声に惑わされてはいけません。

自分が、他者にとって、そして社会にとって、どれだけ「透明で信頼できる存在」であれるか。

自分が作った何かが、自分が死んだ後も誰かの役に立ち続けているか。

そのために、今日という日を誠実に生き、合理的な判断を下し、変化を恐れず、そして粘り強く継続する。

その積み重ねの先にしか、本当の「納得できる人生」はありません。

私は名古屋の地から、中古車業界の変革に挑みました。それは小さな一歩でしたが、信じた道を真っ直ぐに進んだ結果、今があります。

皆さんも、自分の中にある「これこそが正しい」と信じる正義や公平性を大切にしてください。それがたとえ今は理解されなくても、誠実に続けていれば、必ず共鳴する仲間が現れ、大きな力となります。

人生は、壮大なオークションのようなものです。

あなたの「価値」を決めるのは、あなた自身の言葉ではなく、あなたがこれまでの人生で積み上げてきた「行動」と、それによって得られた「周囲からの信頼」という名の落札価格なのです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

皆さんの人生が、透明で、力強く、そして多くの実りある信頼に満ちたものになることを心より願っております。