LINEヤフー株式会社の代表取締役社長を務めております、出澤剛です。

「人生で一番大事なことは何か」という問いに対し、私のこれまでの歩み――朝日生命からライブドアへ、そしてLINE、そしてヤフーとの経営統合を経て今に至る道のりの中で確信したことを、お話しさせていただきます。

3,500字という限られた、しかし深い考察を許容する枠組みの中で、私が大切にしている「誠実さ」「変化への適応」、そして「繋がり」の真意についてお伝えできればと思います。


1. 激動の中で見つけた「誠実さ」という錨

私のキャリアを語る上で避けて通れないのは、ライブドア事件という荒波の中での経験です。朝日生命という伝統的な企業から、当時の最先端を走っていたITベンチャーの門を叩き、そこで直面したのは、文字通り「会社が崩壊するかもしれない」という極限状態でした。

2007年、混乱の最中に33歳で社長を引き受けることになった際、私が最も痛感したのは、「信頼は築くのに一生かかるが、失うのは一瞬である」という冷厳な事実です。

人生で一番大事なことの一つ目は、いかなる状況下でも「誠実であること」だと考えています。これは単に嘘をつかないということではありません。顧客に対して、社員に対して、社会に対して、そして何より自分自身に対して、真正面から向き合う姿勢のことです。

ライブドアの再建期、私はステークホルダーの方々に現状を包み隠さず話し、一つひとつ信頼を回復していくしか道はないと覚悟を決めました。派手なビジョンを掲げるよりも、目の前にある問題を誠実に解決し、約束を守り続けること。その積み重ねが、後にLINEというサービスを世に送り出すための土台となりました。

人生には、自分の力ではどうしようもない外部要因による危機が必ず訪れます。その時、最後に自分を支えてくれるのは、それまでに積み上げてきた「誠実な行動の蓄積」だけなのです。

2. 「Wow」を生み出すための徹底したユーザー目線

LINEというサービスは、2011年の東日本大震災をきっかけに「大切な人と繋がっていたい」という切実な願いから生まれました。当時、私たちはまだ小さな組織でしたが、そこには「ユーザーを感動させるサービスを作りたい」という純粋な情熱がありました。

私たちが掲げたスローガンは「Wow」です。これは「期待をいい意味で裏切る感動」を意味します。

人生において、あるいは仕事において、一番大事なことの二つ目は、「他者のために驚きと喜びを創造し続けること」です。

自分の利益や効率を優先するのではなく、「このサービスを使う人は何を求めているのか」「どうすればその不便を解消し、笑顔にできるのか」を徹底的に考え抜く。これはビジネスに限らず、あらゆる人間関係の真理でもあります。

誰かの役に立っている、誰かを喜ばせているという実感こそが、人が生きていく上での最大のエネルギー源になります。LINEが爆発的に普及したのは、機能が優れていたからだけではありません。日本中の、そして世界中の人々の「寂しさを埋めたい」「喜びを分かち合いたい」という感情に、どこまでも誠実に、そして迅速に寄り添い続けたからだと思っています。

3. 変化を「生存」ではなく「成長」の機会とする

IT業界は変化のスピードが極めて速い世界です。今日正解だったことが、明日には通用しなくなります。ライブドアからNHN Japan、LINE、そしてZホールディングスとの統合を経てLINEヤフーへと、私の環境も劇的に変化し続けました。

このような経験を通じて学んだのは、「変化を拒むことは、停滞ではなく後退である」ということです。人生で大事なことの三つ目は、「自己否定を恐れず、常に自分をアップデートし続ける勇気」です。

過去の成功体験に固執することは、一種の麻薬のようなものです。しかし、成功すればするほど、それを捨てるのは難しくなります。私が常に意識しているのは、「アンラーニング(学習棄却)」です。一度学んだやり方を一度捨て、新しい状況に合わせて学び直す。

ヤフーとLINEの統合という巨大なプロジェクトを率いる際も、それぞれの会社が持つ「プライド」や「成功の定石」が時には壁となりました。しかし、私たちは「ユーザーのために最高の体験を届ける」という一点において、過去のやり方を捨てる勇気を持たなければなりませんでした。

人生は、不確実性の連続です。不確実であることを不安がるのではなく、新しい自分に出会えるチャンスだと捉える。そのマインドセットがあるかどうかが、人生の豊かさを左右すると確信しています。

4. 多様性が生む「繋がり」の力

LINEヤフーは今、日本最大級の利用者数を抱えるプラットフォームとして、大きな責任を担っています。ここには多様なバックグラウンドを持つ数万人の社員がいます。

私は、リーダーの役割とは「異なる強みを持つ個々人が、同じ方向を向いて力を発揮できる場を作ること」だと考えています。人生において大事なことの四つ目は、「異質なものを受け入れ、対話を通じて新しい価値を共創すること」です。

自分と同じ考えを持つ人とだけ一緒にいるのは楽ですが、そこから新しいものは生まれません。自分とは異なる意見、異なる文化、異なる価値観に触れたとき、衝突を恐れずに「なぜ相手はそう考えるのか」を深く理解しようとする姿勢。それが、1+1を3にも5にもしていくのです。

コミュニケーションとは、単なる情報の伝達ではありません。心の奥底にある思いを交換し、共鳴させることです。LINEというコミュニケーションアプリを作ってきたからこそ、私は「対話の力」を誰よりも信じています。

5. 結論:人生で一番大事なこととは

さて、ここまで「誠実さ」「ユーザー目線(他者への貢献)」「変化への適応」「多様性と対話」についてお話ししてきました。これらを総括して、私、出澤剛が考える「人生で一番大事なこと」を一つの言葉にするならば、それは以下のようになります。

「志を高く持ち、不確実な未来を楽しみながら、誠実に歩み続けること」

人生には正解がありません。しかし、自分なりに「こうありたい」という高い志(ミッション)があれば、道に迷っても戻ることができます。私の場合は、それが「ITの力で人々の生活をもっと豊かに、便利に、楽しくしたい」という思いでした。

そして、その歩みは決して一人ではできません。

誠実であることで信頼を築き、

変化を楽しみながら自己を更新し、

対話を通じて他者と繋がり、

新しい価値を共に創り出す。

3500字という言葉を尽くしても語り尽くせないほど、人生は奥深く、挑戦に満ちています。しかし、結局のところ、最後に残るのは「自分がどれだけの人と心を通わせ、どれだけ社会にポジティブな変化をもたらすことができたか」という一点に集約されるのではないでしょうか。

LINEヤフーという会社も、私個人も、まだ道の半ばです。これからも、変化を恐れず、誠実に、そしてワクワクしながら、新しい未来を創っていきたいと考えています。

この記事が、あなたの人生を考える上での何らかのヒントになれば幸いです。


この内容は、出澤剛氏のこれまでの公的な発言、経営哲学、キャリアの変遷をベースに、ご要望の「人生で一番大事なこと」というテーマで構成したロールプレイ・エッセイです。