ユニ・チャームの高原豪久です。
「人生で一番大事なことは何か」という、非常に本質的で、かつ重みのある問いをいただきました。私自身、日々の経営判断や、創業者である父(高原慶一朗)から受け継いだDNAを次世代へつなぐプロセスの中で、常にこの問いと向き合い続けています。
3500字程度という限られた中ではありますが、私がこれまでの経営人生を通じて確信に至った「人生で最も大切なこと」、そしてそれを支える思考の枠組みについて、全力でお伝えしたいと思います。
はじめに:人生とは「価値を創造し続けるプロセス」である
私が考える人生で一番大事なこと。それは、一言で言えば「自らの志を具体的な『行動』へと変換し、他者や社会との『共振』を通じて、公衆(ステークホルダー)の幸せに貢献し続けること」です。
多くの人は「何を手に入れたか」「どのポジションに就いたか」を成功の指標にしがちですが、私はそうは思いません。人生の価値は、自分がどれだけ「成し遂げたか(Output)」ではなく、そのプロセスにおいてどれだけ「社会に必要とされる存在(Indispensable existence)になれたか」によって決まると考えています。
そのためには、抽象的な理想を語るだけでなく、徹底的に「実行」し、「習慣化」し、自分を高め続ける必要があります。具体的に、私が大切にしている5つの柱に沿ってお話ししましょう。
1. 「志」を立てる:何のために生きるかという原点
人生の土台となるのは、揺るぎない「志(パーパス)」です。
ユニ・チャームでは「NOLA & DOLA」(Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities)という理念を掲げています。これは、赤ちゃんからお年寄り、そしてパートナーアニマル(ペット)まで、すべての人の心と体の健康をサポートし、夢を叶えるお手伝いをする、という決意です。
個人の人生においても同様です。「自分は何のためにこの世に生を受けたのか」「誰を笑顔にしたいのか」という問いに対し、自分なりの答えを持っているかどうかが、逆境に立たされた時の踏ん張りや、決断のスピードを左右します。
志がない人生は、羅針盤のない航海と同じです。まずは、自分自身の存在意義を明確に定義すること。これがすべての出発点です。
2. 「SAPS手法」による徹底した自己研鑽:実行こそがすべて
志を立てたとしても、それが実行されなければ、ただの「空想」に過ぎません。私が経営において最も重視し、人生においても不可欠だと確信しているのが、独自のPDCAサイクルである「SAPS手法」です。
SAPSとは、Schedule(計画)、Action(実行)、Performance(成果確認)、Schedule(次なる計画)の略です。これを単なるビジネスツールではなく、人生の「OS」として組み込むことが重要です。
人生で一番大事なことの一つは、「やり切る力」です。
世の中には素晴らしいアイデアを持つ人はたくさんいますが、それを形にできる人はわずかです。なぜか。それは「継続」ができないからです。
私は「凡事徹底」という言葉を好みますが、当たり前のことを、誰も真似できないほど徹底的に、かつ習慣的にやり続ける。毎週、毎日の行動を振り返り、自らの弱さと向き合い、微修正を繰り返す。この地道なプロセスの積み重ねこそが、凡人を非凡へと変え、志を現実に変える唯一の道なのです。
「努力」を根性論で片付けてはいけません。努力を「仕組み化」し、「習慣」にまで昇華させること。これが人生を切り拓く技術です。
3. 「共振の経営」を人生に適用する:他者との響き合い
人生は一人では完結しません。私たちが提唱する「共振の経営」とは、経営層と思いが現場の一人ひとりにまで浸透し、全員が同じ目的意識を持って自律的に動く状態を指します。
これを人生に置き換えると、「周囲の人々と志を共鳴させ、大きなエネルギーを生み出すこと」と言えます。
家族、友人、同僚、そして顧客。自分が発する情熱や誠実さが、周囲の心に響き、それがまた自分に返ってくる。この「共振」が起きる時、個人の力は何倍にも、何十倍にも膨れ上がります。
そのためには、まず自分自身が「信じられる人間」である必要があります。言行一致を貫き、他者の痛みに共感し、利他の精神を持って接すること。自分が得をすること(利己)ばかりを考えている人の周りには、真の共振は起きません。「三方よし」をさらに進化させた、すべてのステークホルダーに対する責任を果たす姿勢こそが、結果として自分を最も高い場所へと引き上げてくれるのです。
4. 変化を恐れず、常に「現場・現物・現実」に学ぶ
今の時代、変化のスピードは凄まじいものがあります。昨日までの正解が、今日には不正解になることも珍しくありません。このような不透明な時代において大事なのは、「変化を楽しみ、自らを進化させ続ける適応力」です。
私は常に「現場・現物・現実」の三現主義を大切にしています。データや理論も重要ですが、真の答えは常に、お客様が困っている現場にあります。
人生においても、机上の空論に浸るのではなく、常に未知の世界に飛び込み、自分の目で確かめ、経験から学ぶ謙虚さを忘れてはなりません。
「自分はもう完成した」と思った瞬間に、成長は止まり、衰退が始まります。生涯学習者であり続けること。常に新しい視点を取り入れ、自分をアップデートし続けること。この「知的好奇心」と「謙虚さ」のセットが、人生を豊かにし続ける燃料となります。
5. 「心身の健康」という最大の資本
そして、これらすべてを支える基盤として、決して忘れてはならないのが「健康」です。
私は経営者として、自身の体調管理を仕事の最優先事項の一つと捉えています。強靭な精神は、健やかな体に宿ります。高いパフォーマンスを維持し、志を追いかけ続けるためには、自らの肉体を最高の状態にメンテナンスする責任があります。
食事、睡眠、運動。これらを疎かにして、大きな成し遂げを成すことは不可能です。健康を失えば、志を果たすための「時間」という最も貴重な資源も失うことになります。自分を大切にすることは、自分を頼りにしてくれる人々に対する最低限の礼儀であると考えてください。
結論:人生で一番大事なこととは
さて、ここまでお話ししてきたことを統合すると、私が行き着く答えはこうなります。
人生で一番大事なこと。それは、「今日という一日を、自分の志に向けて、誰よりも誠実に、かつ徹底的にやり抜くこと」です。
人生とは、遠い未来にあるゴールを指す言葉ではありません。今、この瞬間の「行動」の集積こそが、あなたの人生そのものです。
「いつかやろう」「準備ができたらやろう」という言葉は、人生において最も避けるべき慢心です。明日、自分がこの世を去るとしても、後悔しないだけの実行を今日できたか。誰かの役に立つ価値を提供できたか。
ユニ・チャームは、アジアで、そして世界でシェアを広げてきましたが、それは決して魔法を使ったわけではありません。現地の生活者の悩みに耳を傾け、一つひとつの商品を改良し、毎週の進捗を管理し、地道な努力を何十年と積み重ねてきた結果に過ぎません。
あなたの人生も同じです。
大きな夢を抱いてください。しかし、足元は一歩一歩、泥臭く歩んでください。
自分のためだけでなく、誰かの幸せのために汗をかいてください。
失敗を恐れず、その失敗をSAPS手法で成長の糧に変えてください。
そうして歩んだ道のりの先に、ふと振り返った時、「ああ、自分の人生は多くの人と共振し、価値あるものだった」と心から思える瞬間が訪れるはずです。
「知行合一」——知識と行動は一体であらねばなりません。
このメッセージを読み終えた瞬間から、あなたの「実行」が始まることを、一人の経営者として、そして一人の人間として、心より期待しています。
共に、最高に輝く人生を創り上げていきましょう。
ユニ・チャーム株式会社
高原 豪久