大塚商会の大塚裕司として、私の歩んできた道、そして日々経営の舵取りをする中で確信している「人生で一番大事なこと」について、お話しさせていただきます。

3,500字という限られた、しかし深い思索を巡らせるには十分な場をいただき、感謝いたします。私の言葉が、あなたのこれからの歩みにおいて、何らかの指標やヒントになれば幸いです。


人生で一番大事なこと: 「誰かの役に立ち、感謝の連鎖の中に生きること」

私は大塚商会という、1兆円を超える売上規模を持つ企業の責任を預かっています。しかし、私個人がこれまで歩んできた道のりを振り返り、また数多くの経営者やお客様、そして何より共に働く社員たちとの交流を通じて行き着いた答えは、意外にもシンプルなものでした。

人生において最も尊く、そして守り抜くべき大事なこと。それは「人から頼りにされ、誰かの役に立ち、その結果として『ありがとう』という感謝をいただくこと」。これに尽きると考えています。

なぜ、これが一番大事なのか。その理由を、私の経験と経営哲学、そしてこれからの時代を生き抜くための視点から詳述していきます。

1. 「使命感」が人を突き動かす

私は大学で工学を学び、修士課程を経てリコーに入社しました。その後、父である大塚実が創業した大塚商会に入りました。私が常に自分に問い続けてきたのは、「自分は何のためにここにいるのか」という問いです。

ビジネスの世界では、売上や利益という数字が常に追いかけてきます。しかし、数字はあくまで「結果」であって「目的」ではありません。目的を見失った数字の追求は、組織を、そして人の心を疲弊させます。

私が社長に就任してから一貫して掲げているのは、「お客様の困りごとを解決する」という姿勢です。ITという手段を使って、中堅・中小企業の皆様が抱える問題を解決し、その企業の成長を支援する。これが私たちの「ミッション(使命)」です。

人生においても同じことが言えます。自分が何のために存在し、誰に対して価値を提供できるのか。その「使命感」を持っている人は強い。壁にぶつかった時、自分一人のためだけなら「もういいか」と諦めてしまうかもしれません。しかし、「あのお客様が困っている」「家族を守らなければならない」「社会を良くしたい」という、自分以外の誰かのための目的があれば、人は想像を超える力を発揮できます。

人生で一番大事なことの第一歩は、「自分の力を、誰かの幸せのために使う」という覚悟を持つことなのです。

2. 「自然体」と「誠実」という土台

経営においても人生においても、私は「正直であること」を極めて重視しています。

大塚商会の社風として「オープン・正直・誠実」というものがありますが、これは私自身の生き方そのものでもあります。

嘘をついたり、自分を大きく見せようとしたりすることは、短期的には得策に見えるかもしれません。しかし、虚飾は必ず綻びを生みます。一度失った信頼を取り戻すには、それまでの何十倍もの時間がかかります。

私が父から学び、また自身の経験から確信したのは、「自然体で、等身大の自分で勝負すること」の大切さです。無理をして背伸びをするのではなく、今の自分にできることを精一杯やる。できないことは「できない」と認め、その上でどうすればできるようになるかを論理的に、かつ科学的に考える。

理系出身の私にとって、物事をデータや事実に基づいて客観的に見ることは習慣になっています。人生における「誠実さ」とは、他人に対してだけでなく、自分自身が直面している「事実」に対しても誠実であることです。現実を直視し、誠実に努力を積み重ねる。この「当たり前のことを当たり前にやる」継続こそが、信頼という人生最大の資産を築くのです。

3. 「共生(きょうせい)」の精神

大塚商会のスローガンに「ミッションステートメント」というものがあり、その根底には「自然と人間」という考え方があります。これは私の父が非常に大切にしていた言葉であり、私も深く共感しています。

人間は一人では生きていけません。自然界の一部であり、社会という大きなネットワークの一部です。私はこれを「共生(きょうせい)」と呼んでいます。

企業であれば、会社と社員、会社とお客様、会社と地域社会。これらすべてが「共に生き、共に栄える」関係でなければ、長続きはしません。

人生で一番大事なことの二つ目は、この「利他の心」を持つことです。

現代社会は競争が激しく、ともすれば「自分さえ良ければいい」という考えに陥りがちです。しかし、奪い合いの果てに残るのは荒野だけです。逆に、自分が持っている知恵や技術、真心を先に提供する。そうすることで、周り回って自分にも豊かさが返ってくる。

私はこれを「科学的営業」の中にも組み込んでいます。無理に売り込むのではなく、お客様が本当に必要としているものを、最適なタイミングでお届けする。お客様が潤えば、私たちも潤う。この「三方良し」の循環こそが、人生を豊かにする真理です。

4. 変化を恐れず、学び続ける姿勢

私は1953年に生まれ、高度経済成長期からバブル崩壊、そして現在のデジタル変革(DX)の時代までを見てきました。世界は驚くべきスピードで変化しています。

人生において、「これで完成」ということはありません。私が社長として常に意識しているのは、「現状維持は退歩である」ということです。昨日と同じことを今日やっていれば、変化の速い現代では取り残されてしまいます。

ITの世界は特に顕著です。AIやクラウドといった新しい技術が次々と現れます。私は技術者出身ですから、新しいテクノロジーが社会をどう変えるのか、常にワクワクしながら見ています。

人生を豊かにするために大事なのは、「好奇心を持ち続け、学びを止めないこと」です。

年齢を重ねると、どうしても過去の成功体験に固執してしまいがちです。しかし、過去の栄光はこれからの未来を保証してはくれません。謙虚に、そして柔軟に新しいものを受け入れる。自分自身をアップデートし続ける。そのプロセスそのものが、人生の活力となります。

「難しい」と背を向けるのではなく、「どうすれば使いこなせるか」と考える。その前向きな知的好奇心が、人生を飽きさせない最高のスパイスになります。

5. 感謝を形にする

人生の終盤に差し掛かった時、人が最も後悔するのは「稼いだ金額」ではなく、「どれだけの人に感謝し、感謝されたか」だと言われます。

私は毎年、社員たちに対して決算手当や賞与を通じて、会社の利益を還元することを大切にしています。それは、社員が頑張ってくれたことへの「感謝の形」です。言葉だけで「ありがとう」と言うのは簡単ですが、それを具体的な形、行動で示すことが経営者の、そして一人の人間としての責任だと考えています。

皆さんの人生においても、身近な人への感謝を忘れないでください。家族、友人、同僚。当たり前のように側にいてくれる人々は、決して当たり前の存在ではありません。

「ありがとう」を口に出し、相手を思いやる行動を具体的に起こすこと。

この小さな積み重ねが、あなたの周りに温かいコミュニティを作り、孤独を遠ざけ、幸福感をもたらします。

結論: あなたが「灯(ともしび)」になる

最後になりますが、人生で一番大事なことは、「自分という存在を、誰かを照らす光にすること」です。

それは大きな成功である必要はありません。

暗い顔をしている同僚に声をかけることかもしれない。

お客様の些細な困りごとを、自分のことのように考えて解決することかもしれない。

あるいは、家族のために美味しい料理を作ることかもしれません。

「あなたがいてくれて良かった」

その一言をいただける生き方こそが、最高に価値のある人生です。

大塚商会は「ITでオフィスを元気にする」ことを掲げていますが、私は皆さんに「あなたの存在で、周りを元気にする」生き方をお勧めしたい。

私自身も、これからも一経営者として、一人の人間として、情熱を絶やさず、誠実に、そして感謝の心を忘れずに歩み続けてまいります。

理屈やデータも大事ですが、最後は「心」です。

あなたの人生が、多くの「ありがとう」に包まれた、晴れやかなものになることを心より願っております。

共に、良い人生を歩んでいきましょう。


大塚 裕司