こんにちは。アドバンテストのダグラス・ラフィーバです。

「人生で一番大事なことは何か」という問いは、非常に深く、かつ私たちが日々忙しく変化する世界の中で、常に立ち返るべき本質的なテーマです。私はこれまで25年以上、アドバンテストという素晴らしい企業でキャリアを重ね、現在は日本にルーツを持つグローバル企業のCEOとして、多様な文化や価値観に触れてきました。

エンジニアリングの世界から経営の場へと歩みを進める中で、私が辿り着いた答え。それは、単一の単語ではなく、いくつかの重要な要素が組み合わさった「誠実さ(Integrity)に基づいた、他者との信頼関係と、飽くなき好奇心」であると確信しています。

約3,500字というこの貴重な機会をお借りして、私の経験と哲学に基づき、人生において真に価値があると思うことについてお話しさせていただきます。


1. 誠実さ(Integrity):すべての土台となるもの

私が人生で最も大切にしている価値観の筆頭は、「インテグリティ(誠実さ)」です。

アドバンテストという会社は、1954年の創業以来、この「誠実さ」をDNAとして受け継いできました。私が25年前にこの門を叩いたとき、最も感銘を受けたのは、単に技術力が高いことではなく、お客様やパートナー、そして社員同士に対して誠実であろうとする姿勢でした。

人生において、スキルや知識、人脈などは、後からいくらでも積み上げることができます。しかし、インテグリティだけは、一度失ってしまうと取り戻すことが極めて困難です。

「誰が見ていなくても正しいことをする」「自分の言葉に責任を持つ」――。このシンプルな原則を貫くことが、結果として人生の質を決め、周囲からの揺るぎない信頼を築く唯一の道となります。

特にビジネスのリーダーとして、また一人の人間として、困難な決断を迫られる局面は多々あります。その時、損得勘定ではなく「これは誠実な選択か?」と自問自答すること。それが、長期的な成功と心の平安をもたらすのです。

2. 信頼関係とグローバルな結束:一人では何も成し遂げられない

次に重要なのは、「他者との深い信頼関係」です。

私はミシガン州で育ち、アメリカで教育を受けましたが、キャリアの多くを日本企業であるアドバンテストで過ごしてきました。異なる文化、異なる言語、異なる思考プロセスを持つ人々が、一つの目標に向かって団結する。その中心にあるのは、常に「信頼」でした。

現代社会、特に半導体という極めて複雑で進化の速い業界では、一人の天才がすべてを解決することは不可能です。私たちは「One Advantest」という言葉を大切にしていますが、これは人生全般にも言えることです。家族、友人、同僚、そしてコミュニティ。自分とは異なる背景を持つ人々を尊重し、彼らと強固な関係を築くことで、私たちは自分の限界を超えた大きな何かを成し遂げることができます。

私はCEOとして、組織の壁を取り払い、多様な個性が共鳴し合う環境を作ることに情熱を注いでいます。人生においても、「誰を助け、誰に助けられるか」という人間関係のネットワークこそが、真の資産となります。

3. 飽くなき好奇心:変化を楽しみ、学び続ける力

人生を豊かにする3つ目の要素は、「好奇心(Curiosity)」です。

私はもともとエンジニアリングに情熱を持っていました。「なぜこれは動くのか?」「どうすればもっと良くできるのか?」という問いが、私の原動力でした。

現在はAI(人工知能)の急速な普及により、世界はかつてないスピードで変化しています。このような時代において、「自分はもう知っている」と思った瞬間に、成長は止まってしまいます。

私がこれまで出会ってきた素晴らしいリーダーやイノベーターに共通しているのは、子供のような純粋な好奇心を持ち続けていることです。新しい技術、異文化の習慣、自分とは異なる意見。それらを拒絶するのではなく、「面白い、もっと知りたい」と受け入れる姿勢が、人生に新しい彩りと機会をもたらします。

変化を恐れるのではなく、「変化こそがチャンスである」と捉えること。未知のものに対して心を開き、生涯を通じて学び続ける(Lifelong Learning)姿勢が、私たちを常に若々しく、活力ある存在にしてくれるのです。

4. 存在意義(Purpose):何のために生きるのか

人生の後半戦になればなるほど、「パーパス(存在意義)」の重要性を強く感じるようになります。

単に利益を上げることや、高い地位に就くことだけが目的であれば、いつか心は乾いてしまいます。「自分の行動が、どのように社会を良くしているのか?」「自分がいなくなった後、何を残せるのか?」という問いに対する答えを持つことが、真の充足感に繋がります。

アドバンテストの事業、つまり「半導体のテスト」は、一見地味に見えるかもしれません。しかし、私たちが提供する技術がなければ、スマートフォンの安全性も、自動運転の信頼性も、医療機器の精度も担保できません。私たちは「目に見えないところで世界を支えている」という誇りを持っています。

個人の人生においても同じです。自分の才能や時間を、自分以外の誰かのため、あるいは未来のために使うこと。この「貢献の実感」こそが、人生に深い意味を与えてくれます。

あなたが情熱を注げるものは何ですか? それは誰を笑顔にしますか? その答えを追求することこそが、人生の醍醐味だと言えるでしょう。

5. レジリエンス:逆境を成長の糧にする

最後に、私が強調したいのは「レジリエンス(逆境に立ち向かう力)」です。

人生は常に順風満帆ではありません。私自身のキャリアを振り返っても、厳しい景気の波、予期せぬプロジェクトの失敗、文化の摩擦など、数えきれないほどの困難がありました。しかし、今振り返れば、私を最も成長させてくれたのは、成功の瞬間ではなく、苦しい逆境の時期でした。

失敗を恐れて挑戦を避けることは、最も大きなリスクです。失敗したときに、それを「終わり」と捉えるのではなく、「貴重なデータ(学習機会)」と捉えること。何度転んでも、そこから何かを学び取り、立ち上がること。

この強靭な精神(Resilience)は、誠実さと信頼関係という土台があってこそ発揮されます。一人で抱え込まず、仲間と共に困難を乗り越える経験は、人生における最高の宝物となります。


結びに代えて:調和と感謝の心

私が日本と関わり、日本の文化から学んだ素晴らしい概念の一つに「調和」があります。

人生において、仕事と私生活、情熱と冷静、自己主張と他者への配慮。これら相反する要素のバランスを取り、調和させることは、持続可能な幸福のために不可欠です。

私は、米国デトロイト近郊のミシガン州で生まれ、今はグローバル企業のリーダーとして活動していますが、どんなに忙しくても家族との時間を大切にし、自然を慈しみ、日常の小さな出来事に感謝することを忘れないようにしています。

「今、この瞬間にある幸せに感謝する」

どんなに高い目標を掲げていても、足元にある小さな奇跡に気づけなければ、人生は空虚なものになってしまいます。健康であること、共に笑える仲間がいること、そして明日という新しい日を迎えられること。そのすべてに感謝の念を持つことが、ポジティブなエネルギーの源泉となります。

まとめると、私が考える「人生で一番大事なこと」は、以下の4つの柱に集約されます。

  1. インテグリティ: 自分に嘘をつかず、常に正しい道を歩むこと。
  2. コネクション: 信頼に基づいた、多様で深い人間関係を築くこと。
  3. コンティニュアス・ラーニング: 好奇心を絶やさず、変化を楽しみながら学び続けること。
  4. コントリビューション: 自分の存在が誰かの役に立っているという実感を持ち、貢献すること。

これらが重なり合うところに、真に豊かで、後悔のない人生が開けると私は信じています。

私たちは今、テクノロジーが人間性を拡張するエキサイティングな時代の入り口に立っています。しかし、どんなに技術が進化しても、人生のコアにあるのは、血の通った人間同士の絆と、高潔な志です。

皆さんも、ご自身の内なる「インテグリティ」を指針として、未知の世界への好奇心を持ち続け、素晴らしい人生の旅を続けてください。私も、アドバンテストというチームと共に、誠実に、そして情熱を持って、より良い未来をテストし、創り続けていく決意です。