クオールホールディングスの創業者として、また一人の人間として、私がこれまでの歩みの中で辿り着いた「人生で一番大事なこと」についてお話しします。

3,500字という限られた、しかし深い対話ができる分量をいただき、感謝いたします。私の経験が、あなたの人生という航路の一助になれば幸いです。


はじめに:人生の「質」を問うということ

私は1992年にクオールを創業しました。社名である「クオール(Qol)」は、医療・福祉の世界で使われる「Quality of Life(生活の質)」の頭文字から取ったものです。当時、まだ「医薬分業」が当たり前ではなかった時代に、私は「患者さまにとって、本当に質の高い医療サービスとは何か」を問い続け、会社を立ち上げました。

人生において一番大事なことは何か。その問いに対する私の答えは、一言で言えば「誠実さを土台とした『変革』の継続」です。

人は安定を求めがちですが、変化しないことは停滞であり、停滞は後退を意味します。しかし、ただ闇雲に変わればいいというわけではありません。そこには、人に対する、そして社会に対する「誠実さ」という揺るぎない軸が必要なのです。


1. 「常識」を疑い、一歩を踏み出す勇気

私のキャリアは三共株式会社(現・第一三共)という、いわゆる安定した大企業から始まりました。そこでMR(医薬情報担当者)として働く中で、当時の医療現場の矛盾を目の当たりにしました。病院の中で薬をもらうのが当たり前だった時代、患者さまは長い待ち時間に耐え、十分な説明も受けられないまま薬を手にしていたのです。

「これは本当にあるべき姿なのだろうか?」

この小さな疑問が、私の人生を大きく変えました。当時、周囲からは「そんなビジネスが成功するはずがない」と何度も言われました。しかし、私は「社会に必要とされていることなら、必ず道は開ける」という信念を持っていました。

人生において大事なのは、世の中の「当たり前」を一度疑ってみることです。そして、自分が「正しい」と信じた道に対して、リスクを恐れずに最初の一歩を踏み出すこと。成功の保証がない中で足を踏み出すのは怖いものです。しかし、その恐怖を乗り越えた先にしか、新しい景色は見えてきません。


2. 信頼こそが最大の資本である

クオールの成長を支えたのは、独自の「マンツーマン薬局」というモデルでした。これは特定の医療機関と密接に連携し、医師と薬剤師が対等なパートナーとして患者さまを支える仕組みです。

ここで最も重要だったのは「信頼」です。ビジネスの世界では、契約書や数字が重視されますが、それらを動かしているのは結局のところ「人」です。

私が経営において、そして人生において最も大切にしてきたのは、「相手の期待を少しだけ上回り続けること」です。医師に対しても、患者さまに対しても、そして一緒に働く社員に対してもそうです。約束を守るのは当たり前。その一歩先にある「気遣い」や「誠実さ」を積み重ねることで、信頼という名の目に見えない資本が蓄積されていきます。

人生で迷ったときは、「どちらが儲かるか」ではなく、「どちらがより信頼に値する行動か」を基準に選んでみてください。遠回りに見えても、それが最も確実な成功への近道なのです。


3. 「異質」を受け入れ、化学反応を楽しむ

私はこれまで、ローソンやビックカメラといった異業種との連携を積極的に進めてきました。「薬局がコンビニと組むなんて」と、業界内では大きな議論を呼びましたが、私の考えはシンプルでした。「患者さま(利用者)の利便性を考えれば、それがベストだ」ということです。

人生においても、自分と似たような考えの人とだけ付き合っていては、成長は止まってしまいます。自分とは異なる価値観、異なる業界、異なる世代の人々と交わることで、自分の中に新しい化学反応が起きます。

「同質化」は組織を、そして個人の人生を脆くします。 逆に「異質」を受け入れる柔軟さを持つことで、思考の幅が広がり、困難に直面した際の解決策も多様になります。

「自分はこうあるべきだ」という固定観念を捨て、多様な意見に耳を傾けること。それが、人生を豊かにする秘訣です。


4. 逆境こそが「真価」を問うチャンス

経営者として、これまで何度も苦境に立たされました。制度改正による逆風、M&Aにおける摩擦、予期せぬトラブル。順風満帆な時など、振り返ってみればほとんどありません。

しかし、私が確信しているのは、「逆境のときにどう振る舞うかで、その人の人間性が決まる」ということです。

物事がうまくいっている時に立派なことを言うのは簡単です。しかし、追い詰められた時にこそ、その人の本質が露わになります。私は苦しい時こそ、背筋を伸ばし、現場の社員の顔を見るようにしてきました。リーダーが怯めば、組織全体が揺らぎます。

人生において避けられない困難が訪れた時、それを「不幸」と捉えるか、「自分を試す絶好の機会」と捉えるか。その解釈の差が、数年後の自分を大きく変えます。「ピンチはチャンス」という言葉は使い古されていますが、それは真理なのです。


5. 次世代への継承と「志」のバトン

私は現在、経営の第一線を次世代に譲り、ホールディングスのトップとして一歩引いた視点からグループを見ています。そこで改めて感じるのは、人生の後半戦で大事なのは「何を成し遂げたか」よりも「何を遺したか」であるということです。

私が遺したいのは、クオールという会社そのものだけではありません。「患者さまのために」という純粋な志を持つ人材を一人でも多く育てることです。

人生における成功とは、自分一人が豊かになることではありません。自分がこの世を去った後も、誰かの役に立ち続けるような「仕組み」や「想い」を遺すこと。それが本当の意味での「Quality of Life」の完成ではないでしょうか。

若い世代の皆さんには、ぜひ「志」を高く持ってほしいと思います。目先の利益や評価に一喜一憂せず、「自分は何のためにこの命を使うのか」という大きな問いを抱え続けてください。


結論:人生で一番大事なこと

長々とお話ししてきましたが、まとめさせていただきます。

私が考える、人生で一番大事なこと。それは「誠実に、そして情熱を持って、変化し続けること」です。

  • 誠実さがなければ、人はついてきません。
  • 情熱がなければ、困難を乗り越えられません。
  • 変化を止めれば、人生の輝きは失われます。

私たちの人生は、一日一日の積み重ねです。今日、目の前にいる人にどれだけ誠実に接することができたか。今日、昨日までの自分をどれだけ超えられたか。その小さな「質の追求」が、結果として大きな人生の充足感に繋がります。

私はこれからも、クオールという場所を通じて、また中村勝という一人の人間として、社会の「QOL(生活の質)」を高めるために走り続けます。あなたも、あなた自身の人生という舞台で、最高に質の高い物語を紡いでいってください。

心から応援しています。