リクルートの出木場です。「人生で一番大事なことは何か」という非常に本質的で、かつリクルートという会社が長年向き合ってきた問いを投げかけていただき、ありがとうございます。

私がこれまでのキャリア、特に日本での事業責任者時代や、米国に渡ってIndeedを成長させてきた経験、そしてグループ全体のCEOとして日々考えていることを踏まえ、「デコ(Deko)」としての言葉で、全力でお答えします。


人生で一番大事なこと:自らの「意志(Will)」で、社会の「負」を解消し続けること

私が人生において、そして仕事において最も大切にしているのは、「自分はどうしたいのか(Will)」という内発的な動機を持ち、それを使って目の前にある社会の「不効率、不満、不便(=負)」を解消し続けることです。

これはリクルートに根付くDNAでもありますが、私個人にとっても、これこそが生きるエネルギーの源泉であり、人生を豊かにする唯一の方法だと確信しています。なぜそう思うのか、いくつかの観点からお話しします。

1. 「なぜ?」という好奇心を殺さないこと

人生を面白くするのは、知識の量でもスキルの高さでもなく、「違和感」に気づく力です。「なぜ、この手続きはこんなに面倒なんだろう?」「なぜ、仕事を探すのにこんなに時間がかかるんだろう?」といった、日常の中に隠れている小さな「負」を見逃さない好奇心です。

私は入社当時、『カーセンサー』という中古車情報の営業をしていました。当時はまだ紙の雑誌が主流でしたが、ある時「なぜユーザーは、わざわざコンビニで雑誌を買って、電話をかけて在庫を確認しなければならないのか?」という強い違和感を覚えました。インターネットを使えば、リアルタイムで在庫が分かり、その場で予約ができる。その方が絶対に便利だ、と。

この「なぜ?」という好奇心こそが、すべてのイノベーションの出発点です。世の中の「当たり前」を疑い、自分の心に湧き上がった「もっとこうあるべきだ」という意志を大切にすること。それが人生の舵を自分で握る第一歩になります。

2. 「負」の解消が、最大の喜びになる

リクルートでは、世の中の不満や不便を「負」と呼びます。人生において大事なのは、この「負」を見つけた時に、「誰かが解決してくれるのを待つ」のではなく、「自分がどう解決するか」を考える主体性です。

私がIndeedのCEOとして米国オースティンに渡った時、求人検索の仕組みはまだ非常に不効率でした。仕事を探している人は、何百ものサイトを巡らなければならず、企業側も多額の広告費を払ってもミスマッチに悩んでいました。

私たちは「We help people get jobs.(仕事探しを応援する)」という極めてシンプルなミッションを掲げ、徹底的に求職者の不便(負)を取り除くことに注力しました。その結果、Indeedは世界最大の求人サイトへと成長しました。

自分の持っているテクノロジーやアイデア、あるいは情熱を使って、誰かの困りごとを解決し、世界を昨日よりも少しだけスムーズな場所にすること。このプロセスこそが、人間に最も深い充足感を与えてくれるのだと私は思います。

3. 「壊すこと」を恐れない勇気

人生において、過去の成功体験は時に最大の足かせになります。リクルートが今日まで生き残ってこれたのは、自らの主力事業がまだ利益を生んでいるうちに、自らそれを壊して次のモデルへと移行してきたからです。

紙からネットへ、日本からグローバルへ。これらは言葉で言うほど簡単ではありません。既存の仕組みに最適化している人々からは強い反発が生まれます。しかし、世の中の「負」の形が変われば、解決策もアップデートしなければなりません。

これは個人の人生も同じです。「今のままでもそこそこ上手くいっている」という状況に甘んじず、自分を絶えずアップデートし続けること。時にはこれまでの自分を否定してでも、新しい価値観やテクノロジー(今ならAIなど)を取り入れ、変化の波に乗る勇気を持つこと。この「自己変革」の精神こそが、人生を停滞させないために不可欠です。

4. 「フラット」な対話と多様性

「人生で大事なこと」を一人で考えていても、視界は狭くなるばかりです。私はCEOとして、常に社員に「あなたはどうしたい?」と問いかけます。役職や年齢に関係なく、誰もが自分の意見を言えるフラットな環境が、最高のアイデアを生むと信じているからです。

世界中から多様なバックグラウンドを持つ人々が集まると、摩擦も起きますが、それ以上の化学反応が起きます。自分の価値観を絶対視せず、異なる視点を取り入れることで、自分のWill(意志)はより強固で洗練されたものになります。

「一人の天才が世界を変える」時代から、「多様な個人の意志が繋がって世界を変える」時代へ。周囲の人々と本音でぶつかり合い、対話を通じて新しい価値を生み出すプロセスを大切にしてください。


結論:あなたの「Will」は何ですか?

最後に、私が最も大切にしている問いをあなたにお贈りします。

「お前はどうしたい?(What do you want to do?)」

これはリクルートで語り継がれている有名な問いかけですが、実はこれほど残酷で、かつ自由な問いはありません。会社のためでも、誰かの期待に応えるためでもなく、あなた自身の内側から湧き上がる意志で動いているか、ということです。

人生は、誰かに書かれた台本を演じる時間ではありません。

世の中にある「負」に対して、自分の好奇心とテクノロジーを武器に、自分なりの答えを出し続ける旅です。

1秒でも早く仕事が見つかる世界を作る。

もっと自由に、自分らしく働ける社会を作る。

そのような大きな志であっても、あるいは「目の前のこの人を笑顔にしたい」という小さなWillであっても構いません。

大事なのは、「自らの意志で選択し、行動した」という実感を積み重ねること。

結果として失敗することもあるでしょう。私も数え切れないほどの失敗をしてきました。しかし、自分のWillに従って行動した結果の失敗は、必ず次の糧になります。

出木場久征としての答えは、「好奇心を失わず、自らの意志(Will)で社会の『負』を解消し続け、昨日よりも良い明日を創り出すこと」です。これこそが、人生において最も価値があり、エキサイティングなことだと私は信じています。