大塚ホールディングスの大塚一郎です。
「人生で一番大事なことは何か」という問いをいただきました。私たちが日々向き合っている「健康」や「生命」というテーマは、極めて重く、かつ答えのない問いの連続です。創業家の一員として、また経営者として歩んできたこれまでの道のりを振り返り、私なりの言葉でお答えしたいと思います。
私にとって、人生で最も大切なこと。それは「常識の枠を超え、世の中にない『新しい価値』を創造し続けること。そして、そのプロセスを通じて、他者の幸せに深く寄与すること」であると考えています。
一見すると、経営理念のように聞こえるかもしれませんが、これは私自身の生き方の根幹にある信念です。なぜ、そう思うに至ったのか。大塚グループが受け継いできたDNAと、私自身の経験を交えてお話しします。
1. 「実証主義」と「独創性」:他人が歩まない道を行く
大塚グループには、代々受け継がれてきた「大塚のDNA」があります。それは「実証主義」と「独創性」です。
私の祖父である大塚正士は、よく「真似をしたら負けや」と言っていました。また、父である大塚明彦も「世界中の人があっと驚くようなものを作れ」と、常に新しい可能性を追い求めていました。私は、この「他人がやらないことをやる」という姿勢こそが、人生を豊かにし、社会を前に進める唯一の道だと信じています。
例えば、私たちが提供している「ポカリスエット」や「カロリーメイト」といった製品も、発売当初は「こんなものは売れない」と世間から冷ややかな目で見られたこともありました。しかし、私たちは「健康を支えるために、これが必要なのだ」という強い確信を持ち、粘り強くその価値を伝え続けました。
人生においても同じです。周囲の評価や、既存の常識という「枠」の中に収まっているだけでは、真の喜びや発見は得られません。「なぜだろう?」「もっとこうすれば、人は喜ぶのではないか?」という純粋な問いを持ち続け、誰も踏み出していない一歩を自らの足で踏み出すこと。その勇気を持つことが、人生において何より大事なことだと思うのです。
2. 「医食同源」を体現する:心と体の調和
私たちは「ニュートラシューティカルズ(Nutraceuticals)」という言葉を大切にしています。これは「Nutrition(栄養)」と「Pharmaceuticals(医薬品)」を組み合わせた造語です。病気を治すこと(医薬品)はもちろん大切ですが、それ以上に、日々の生活の中で病気にならない体を作り、健康を維持すること(栄養・食品)が重要であるという考え方です。
この「医食同源」の精神は、人生のあり方そのものに通じます。
人生において、どれほど大きな成功を収め、どれほど富を築いたとしても、心と体が健やかでなければ、その豊かさを享受することはできません。
私が考える「健康」とは、単に病気ではないという状態を指すのではありません。自分の意志で動き、自分の頭で考え、何かに情熱を傾けることができる状態。つまり、「生きるエネルギーに満ち溢れている状態」です。
人生を歩む上で、自分の心と体に耳を傾け、大切に育むこと。それは自分自身に対する責任であり、同時に自分を支えてくれる人々に対する礼儀でもあります。私たちが製品を通じてお届けしたいのは、単なる栄養素ではなく、その人がその人らしく輝くための「時間」と「可能性」なのです。
3. 「流汗悟道」:泥臭い努力の中に真理がある
私の家系には「流汗悟道(りゅうかんごどう)」という言葉が深く根付いています。「汗を流して初めて道がわかる」という意味です。
現代は、指先ひとつで情報が手に入り、何事も効率よくスマートに進めることが美徳とされる時代かもしれません。しかし、私はあえて言いたいのです。「泥臭く、汗を流して取り組むことの中にしか、真実の答えはない」と。
経営の現場でも、机上の空論や数字の分析だけでは見えてこないことがたくさんあります。実際に現場へ足を運び、現物に触れ、人々の生の声を聞く。困難にぶち当たり、試行錯誤を繰り返しながら、文字通り汗をかいて苦労した先に、ようやく一点の光明が見える。その時、理屈を超えた深い納得感が得られるのです。
人生の「一番大事なこと」も、誰かに教えてもらうものではありません。自分の人生というフィールドで、悩み、苦しみ、それでも前を向いて行動し続ける。その過程で流した汗こそが、あなただけの「生きる知恵」となり、揺るぎない自信へと変わっていきます。失敗を恐れず、泥臭く挑戦し続けること。その姿勢こそが、人生を価値あるものにします。
4. 「自らを変える」勇気と「志」の継承
私は大塚家の4代目として生まれましたが、単に先代が築き上げたものを守るだけでいいとは一度も思ったことはありません。むしろ、「伝統を守るためにこそ、自らを壊し、変え続けなければならない」という危機感を常に持っています。
世の中は驚くべきスピードで変化しています。昨日の正解が、今日の正解であるとは限りません。自分自身の価値観や手法に固執せず、常に外の世界に目を向け、多様な意見を取り入れる柔軟さを持つこと。これもまた、人生において不可欠な要素です。
しかし、変えてはならないものもあります。それが「志」です。
私にとっての志は、大塚グループの理念である「Otsuka-people creating new products for better health worldwide(世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)」という想いです。
人生において一番大事なことは、自分という個人の幸福を追求するだけでなく、「自分の存在が、少しでも誰かの役に立っているか」「次の世代に、より良いバトンを渡せているか」という視点を持つことではないでしょうか。
創業家という立場にある私にとって、自分の人生は自分ひとりのものではありません。先人たちが積み上げてきた想いを世の中に還元し、さらに未来を担う人たちが活躍できる土壌を作ること。この「大きな流れ」の中に自分を置き、使命を全うすることに、私は最大の意義を感じています。
5. 結びに:あなたという「唯一無二」を生きる
長々とお話ししてきましたが、最後に皆さんに伝えたいことがあります。
人生で一番大事なこと、それは「あなたにしかできない役割を果たすこと」です。
大塚グループの製品が、どれも他にはない個性を持っているように、あなたという人間も、この世界にたった一人しかいない存在です。誰かの真似をする必要はありません。世間のものさしで自分を測る必要もありません。
自分が何を信じ、何に心を動かされ、何を成し遂げたいのか。
その声に誠実に向き合い、勇気を持って行動してください。
もし道に迷ったら、一番困難な道を選んでみてください。
もし失敗したら、それを「成功へのプロセス」だと笑い飛ばしてください。
そして、常に周囲の人々への感謝を忘れず、健康を大切にしてください。
私が歩んできた道も、決して平坦なものではありませんでした。しかし、「世界中の人々の健康に貢献する」という大きな旗印を掲げ、仲間と共に汗を流してきた日々は、何物にも代えがたい誇りです。
人生は、一度きりの壮大な実験です。
あなた自身の手で、まだ見ぬ新しい価値をこの世界に生み出してください。そのプロセスそのものが、人生における最高に大事な、そして幸せなことだと私は確信しています。
共に、健やかで、創造性に満ちた未来を築いていきましょう。