こんにちは。パソナグループの南部靖之です。

1976年に創業し、間もなく50年という節目を迎えようとしている今、改めて「人生で一番大事なことは何か」という問いに向き合う機会をいただけたことに感謝いたします。

私にとって、そして私が歩んできた半世紀の経営者人生において、その答えは極めてシンプルであり、かつ深く揺るぎないものです。

それは、「社会の問題点を解決すること」、そしてそのプロセスを通じて「自分以外の誰かを幸せにし、その命を輝かせること」です。

長くなりますが、私のこれまでの経験と、これから未来を創る皆さんに伝えたい想いを込めてお話しさせていただきます。


1. 働くことの本質:傍(はた)を楽(らく)にすること

私はよく、「働く」という言葉の意味についてお話しします。日本語の「はたらく」の語源は、「傍(はた)を楽(らく)にする」ことだと言われています。自分の周囲にいる人、困っている人、そして広く社会に生きる人々を楽に、笑顔にすること。これこそが仕事の本質であり、人生を豊かにする土台です。

私が大学卒業を目前に控えた24歳の時、パソナ(当時のテンポラリーセンター)を創業した動機もそこにありました。当時は「一度家庭に入った女性が再び社会で活躍する」という選択肢がほとんどない時代でした。才能も意欲もある多くの女性たちが、働く場がないためにその輝きを失っている。

「この社会の問題を解決したい。働きたいと願うすべての人が、自由に才能を発揮できる社会を創りたい」

この純粋な「義憤」と「志」が、私のすべての始まりでした。お金を稼ぐことや有名になることが目的ではありませんでした。目の前にある不条理を解消し、誰かの役に立ちたいという想いこそが、困難を乗り越えるエネルギーの源泉だったのです。


2. 「夢」ではなく「志」を持つ

人生において大事なのは、単なる「夢」ではなく、「志(こころざし)」を持つことです。

「夢」は往々にして、自分がどうなりたいか、何を手に入れたいかという「自分中心」の視点になりがちです。しかし「志」は違います。志とは、「社会の中で自分がどのような役割を果たし、どのように貢献するか」という、ベクトルが外に向いた情熱です。

  • 自分一人の夢は、壁にぶつかった時に折れやすい。
  • 社会のための志は、共感する仲間を呼び寄せ、困難さえも使命感という力に変えてくれます。

自分の才能を自分のためだけに使うのは、あまりにももったいないことです。人は「誰かのために」と動く時、自分でも想像しなかったような大きな力を発揮できる生き物なのです。


3. 「命」を輝かせるということ

今、私は2025年の大阪・関西万博に向けて、「PASONA NATUREVERSE(パソナ ネイチャーバース)」というパビリオンのプロデュースに全力を注いでいます。ここでのテーマは「いのち」です。

人生で一番大事なことの一つは、自分自身の、そして他人の「いのち」を輝かせることです。

私たちが考える「健康」とは、単に病気ではないということではありません。

  1. 体の健康(フィジカル)
  2. 心の健康(メンタル)
  3. 絆の健康(ソーシャル)

この3つが揃い、自分らしく、生き生きと社会に関わっている状態。それこそが「命が輝いている」状態です。私は、人材サービスを通じて雇用を創出するだけでなく、地方創生や農業、アート、音楽といった活動を通じて、あらゆる人の人生をプロデュースし、その命を輝かせるお手伝いをしたいと考えてきました。


4. 豊かさの再定義:淡路島での挑戦

私は数年前から、パソナグループの本社機能の一部を兵庫県の淡路島に移転させるという決断をしました。これには、これからの時代における「人生で大事なもの」への私なりの答えが込められています。

都会の喧騒の中、満員電車に揺られ、数字や効率だけに追われる毎日。それは果たして、人間らしい豊かな人生と言えるでしょうか。

淡路島という自然豊かな地で、海を眺め、土に触れ、家族や仲間と豊かな食卓を囲む。その傍らで、テクノロジーを駆使して世界中と繋がって仕事をする。

「自然と共生し、人間本来の感性を取り戻す生き方」

これからの時代、物質的な豊かさ以上に、こうした精神的な充足感、つまり「ウェルビーイング(幸福)」が人生において何よりも優先されるべきだと私は確信しています。環境が人を変え、心が豊かになれば、そこから生まれるアイデアや仕事の質も、より本質的なものへと変わっていくのです。


5. ベンチャー精神と「決してあきらめない」心

私はこれまで、多くの挑戦をし、それと同じくらい多くの批判や困難に直面してきました。しかし、一度もあきらめようと思ったことはありません。なぜなら、解決すべき社会の問題がまだそこにあり、私を待っている人がいるからです。

起業家(ベンチャー経営者)として大事にしてきたのは、「ないものは創ればいい」という精神です。

法律がないなら、法律を変えるための働きかけをする。市場がないなら、自分で市場を創り出す。世の中の常識や「できない」という声に耳を貸す必要はありません。

人生で最も大事なことは、自分の可能性を信じ抜き、最後にあきらめなかった者が勝つ、ということです。

失敗とは、途中でやめてしまうことを指します。やり続ければ、それは成功への過程にすぎません。


6. 次世代へのバトン

私は2025年5月をもって、社長という立場を退く決意をしました。しかし、これは私の活動の終焉ではありません。一人の「社会起業家」として、また新しいステージで社会の問題解決に挑み続けるつもりです。

最後に、皆さんに伝えたいことがあります。

人生は一度きりです。その貴重な時間を、どうか「誰かを幸せにするため」に使ってください。

誰かの役に立ち、「ありがとう」と言われる経験を積み重ねてください。その感謝の集積こそが、あなたの人生の「価値」であり、揺るぎない「幸せ」の正体です。

  1. 好奇心を持ち続けること(新しいことにワクワクする心)
  2. 慈愛の心を持つこと(困っている人を放っておかない優しさ)
  3. 志を高く掲げること(何のために生きるのかを問い続ける強さ)

この3つを忘れずに歩んでいけば、あなたの人生は必ずや光り輝くものになるでしょう。

社会の問題点は、無限にあります。つまり、あなたが活躍できる場所、あなたを必要としている場所もまた、無限にあるのです。

自分の殻を破り、広い世界へ飛び出してください。そして、あなたにしか解決できない問題を見つけ、情熱を注いでください。

あなたの人生が、多くの人の笑顔を創り出す素晴らしい旅になることを、心から願っています。