オービックビジネスコンサルタント(OBC)の和田成史として、私の歩んできた道、そして経営と人生を通じて辿り着いた「一番大切なこと」についてお話しさせていただきます。
3,500字という限られた枠組みの中ではありますが、私が公認会計士からIT経営者へと転身し、40年以上にわたって「勘定奉行」と共に歩んできた経験から、魂を込めて綴ります。
人生で一番大事なこと:それは「信頼を形にし、変化を味方につけ続けること」
私がこれまでの人生で最も大切にしてきたのは、一言で言えば「信頼(クレジット)」です。しかし、それは単に嘘をつかないといった受動的な意味ではありません。自らの専門性を磨き、お客様の課題を先回りして解決し、変化し続ける社会の中で「変わらない価値」を提供し続けるという、極めて能動的な意志のことです。
私の原点、そしてOBCの根幹にある哲学から、その本質を紐解いていきましょう。
1. 専門性を「利他」のために使う
私はもともと、公認会計士としてキャリアをスタートさせました。会計士の仕事の本質は、企業の「信頼」を数字で証明することにあります。しかし、当時の日本企業のバックオフィスは、膨大な手書きの帳簿と計算に追われ、創造的な仕事とは程遠い状況にありました。
そこで私は考えたのです。「会計という専門知識を、自分一人のキャリアのために使うのではなく、テクノロジーと融合させて『仕組み』として提供すれば、日本中の企業の生産性を劇的に高められるのではないか」と。
人生において大事なことの第一は、「自分の持てる武器(専門性や能力)を、いかにして他者の成功のために役立てるか」という視点を持つことです。これがビジネスの原動力であり、人生の充実感の源泉となります。
2. 「お客様の選択は常に正しい」という謙虚さ
OBCを設立し、「勘定奉行」を世に送り出した際、私が肝に銘じていた言葉があります。それは「お客様の選択は常に正しい」ということです。
一見、当たり前のことのように聞こえるかもしれません。しかし、技術が進歩し、自社にプライドが生まれるほど、経営者は「自分たちが正しい。お客様はまだこの良さを理解していないだけだ」という傲慢な罠に陥りやすくなります。
人生においても同様です。自分の価値観を押し通すのではなく、市場や周囲の人々が何を求めているのか、その「真実」を謙虚に受け入れる。その上で、彼らの期待を超える答えを提示し続ける。このサイクルを回し続けることが、長期的な信頼を築く唯一の道です。
3. 変化を「リスク」ではなく「好機」と捉える
ITの世界は、変化のスピードが極めて速い業界です。PCの普及、インターネットの登場、そして現在のクラウド、AI。こうした荒波の中で、OBCが40年以上もトップランナーとして走り続けてこれたのは、私自身が「変化こそが最大のチャンスである」と確信していたからです。
多くの人は、安定を求め、変化を嫌います。しかし、停滞は衰退の始まりです。
私が「奉行シリーズ」をオンプレミスから「奉行クラウド」へと舵を切ったときも、社内には大きな葛藤がありました。既存の成功モデルを捨てることは勇気がいります。しかし、時代が求めるもの、つまり「どこでも、誰でも、安全に業務ができる環境」を提供するためには、自らを破壊してでも進化しなければなりません。
人生で一番大事なことの一つは、「昨日までの自分に執着せず、常に新しい標準(スタンダード)を受け入れ、アップデートし続ける勇気」を持つことです。
4. 「標準化」という美学
私はビジネスにおいて「標準化」を極めて重視しています。日本の企業文化は、個別のこだわりや「独自のやり方」を尊ぶ傾向があります。しかし、デジタル化の時代において、属人化された業務は成長の足を引っ張ります。
私が提供してきた「奉行シリーズ」は、ある意味で「日本の業務の標準」を提示する活動でもありました。
人生においても、自分の中に揺るぎない「軸(スタンダード)」を持つことは重要です。一方で、その軸が独りよがりなものであってはいけません。社会のルールや他者との共通言語を理解し、その上で自分らしさを発揮する。この「型があるから型破りになれる」という姿勢こそが、大きな仕事を成し遂げる秘訣です。
5. 「人」と「志」への投資
どんなに優れたソフトウェアも、それを作るのは「人」であり、使うのもまた「人」です。
私は、社員に対しても、お客様に対しても、常に「志」を共有することを大切にしてきました。
ビジネスは数字で評価されますが、数字を追うこと自体を目的にしてはいけません。その数字の向こう側に、どれだけの「ありがとう」があるか。どれだけの人々の苦労を軽減し、笑顔を生み出せたか。
「志なき計数は空虚であり、計数なき志は無力である」
会計士としての私の信念です。高い理想を掲げつつ、それを実現するための緻密な戦略と実行力(計数管理)を両立させる。このバランスが、人生をより高みへと導いてくれます。
6. 継続こそが「奉行」への道
「奉行」という名前には、専門家として責任を持って物事を司る、という意味を込めています。
一つのことを、徹底的に、長くやり抜くこと。短期的なブームに飛びつくのではなく、10年、20年、30年と、その分野で誰にも負けない信頼を積み重ねること。
私が今日まで社長を続けてこられたのは、単純に「日本のバックオフィスをもっと良くしたい」という想いに飽きることがなかったからです。飽きないということは、それだけその対象に奥深さを感じ、愛着を持っているということです。
皆様に伝えたいのは、「自分が一生をかけて掘り下げるに値するテーマを見つけてほしい」ということです。それが見つかれば、苦労は苦労でなくなり、人生は常に発見に満ちたものになります。
結びに代えて
人生で一番大事なこと。それは、「誠実さという土台の上に、常に最新の知恵を積み上げ、社会という大きな舞台で役割(使命)を果たし切ること」です。
世界はますます複雑になり、不確実な時代になっています。しかし、いつの時代も、本質的に求められるものは変わりません。それは「信頼できる仕組み」であり、「安心感を与える存在」です。
私、和田成史はこれからも、ITという道具を通じて、日本企業が世界で輝けるよう支援を続けてまいります。皆様も、どうか自分自身の「奉行(専門分野)」を定め、そこで誰からも信頼される唯一無二の存在を目指してください。
変化を恐れず、しかし信念は曲げず。
共に、より良い未来を創っていきましょう。