こんにちは、トリドールホールディングスの粟田貴也です。

「人生で一番大事なことは何か」という問いをいただきました。私がこれまでの歩みの中で、小さな焼き鳥屋から始まり、丸亀製麺というブランドを通じて世界中のお客様と向き合ってきた経験から導き出した答えをお話しさせていただきます。

結論から申し上げれば、私の人生において最も大切にしているのは、「人を感動させること、そして自らも感動し続けること」。この一点に尽きます。

これだけを聞くと、綺麗ごとのように聞こえるかもしれません。しかし、これは経営のテクニックではなく、私という人間がこの世界で生きていくための「根源的な喜び」そのものなのです。


1. 苦い挫折から学んだ「商売の本質」

私の原点は、兵庫県加古川市に開いた一軒の小さな焼き鳥屋「トリドール三番館」にあります。当時の私は20代。正直に言えば、最初から「世界一のうどん屋を作ろう」なんて高尚な志を持っていたわけではありません。「自分も一国一城の主になりたい」という、どこにでもある若者の野心がきっかけでした。

しかし、現実は甘くありませんでした。オープン当初、お客様は全く来ませんでした。来る日も来る日も、売れ残った焼き鳥を自分で食べる日々。資金も底をつきかけ、精神的にも追い詰められました。「なぜ自分の店には人が来ないのか」と悩み抜いた末に気づいたのは、「私は自分のことしか考えていなかった」という事実でした。

「売上を上げたい」「儲けたい」「店を大きくしたい」。その欲望はすべて自分に向いていました。しかし、商売の本質とは、対価としてお金をいただく前に、「お客様の心をどれだけ動かせるか」にあるはずです。

私が提供すべきは、単なる「焼いた鶏肉」ではなく、店に入った瞬間の活気、焼ける音、香り、そして店主との会話。それらすべてが合わさった「体験」としての感動でなければならなかったのです。これに気づいてから、私の商売観は「我」から「他」へと180度転換しました。

2. 丸亀製麺の誕生と「不効率の価値」

丸亀製麺が誕生したきっかけは、私の父の故郷である香川県での光景でした。そこには、ただうどんを茹でて提供するだけの「製麺所」がありました。豪華な内装もなければ、丁寧すぎる接客もありません。しかし、そこには圧倒的な「本物の活気」「打ちたて・茹でたての感動」があったのです。

現代のフードビジネスは、いかに効率化し、中央の工場(セントラルキッチン)で作ったものを均一に配るかを競っています。しかし、私はあえてその逆を行くことに決めました。

  • すべての店舗に製麺機を置く。
  • 手間暇かけて、粉からうどんを打つ。
  • お客様の目の前で調理し、湯気を立てて提供する。

これは経営学的に見れば、極めて「不効率」です。人件費もかかるし、教育も大変です。しかし、その「無駄」の中にこそ、お客様を驚かせ、感動させる「熱量」が宿るのです。

効率を追求すればするほど、ビジネスからは「魂」が抜けていきます。私は、人生において大事なのは、便利なものを作ることではなく、「人の心が震える瞬間」をデザインすることだと確信しています。

3. 「感動」を世界共通の言語にする

現在、私たちは世界中に店舗を展開していますが、国や文化が違っても変わらないことがあります。それは、「一生懸命にものづくりをする姿には、人の心を動かす力がある」ということです。

海外の店舗でも、スタッフが目の前で麺を打ち、天ぷらを揚げる姿を見せると、現地の多くのお客様が目を輝かせます。それは、単なる食事を超えた「エンターテインメント」であり、人間が本能的に求めている「本物への憧れ」を刺激するからです。

私が人生で大事にしているのは、こうした「共通の感動」を見つけ出し、広げていくことです。自分の仕事が、誰かの今日一日の活力を生み出す。その手応えを感じられることが、私にとって最大の報酬なのです。

4. 失敗を恐れず「変化」を楽しむ

「人生で一番大事なこと」を語る上で欠かせないのが、「挑戦し続ける勇気」です。

多くの人は、成功するとそれを守ろうとします。しかし、守りに入った瞬間に感動は失われます。感動とは常に、期待を超えた先にしかないからです。

私もこれまで、数えきれないほどの失敗をしてきました。海外進出で手痛い撤退を経験したこともありますし、新しい業態が全く当たらないこともありました。

しかし、私は失敗を「終わり」だと思ったことは一度もありません。それは、「最高の感動を届けるための、壮大な実験プロセス」に過ぎないからです。

人生は、一度きりの旅です。安定した道を歩むよりも、自分の心がワクワクし、誰かを驚かせることができる道を選ぶ。その過程で起きる困難さえも、後で振り返れば「最高のスパイス」になります。

5. 最後に:あなたが「人生で一番大事にすべきこと」

私がこの記事を読んでいるあなたに伝えたい「一番大事なこと」は、結局のところ、「あなたの心が何に震え、誰を幸せにしたいと願っているか」を見失わないことです。

  • お金や名声は、後からついてくる結果に過ぎません。
  • 技術やスキルは、想いを形にするための道具に過ぎません。

一番大切なのは、あなたの内側から湧き出る「熱い想い」です。自分が作った何かで、誰かが笑顔になる。その瞬間に、あなた自身の人生もまた、輝きを放ちます。

私はこれからも、一杯のうどんを通じて、あるいは新しい食の体験を通じて、世界中に「感動」の火を灯し続けていきたいと考えています。それは終わりなき旅ですが、これほどまでに楽しく、尊い人生の目的はないと信じています。

どうか、あなたも自分の中にある「感動の種」を大切に育ててください。あなたが心から何かを楽しみ、誰かのために尽くすとき、人生は間違いなく、最高に面白いものになります。