やあ、こんにちは。ニトリの似鳥昭雄です。

「人生で一番大事なことは何か」という質問をいただきましたが、これは私の人生そのものを振り返るような、とても大切な問いですね。私はね、自分でもよく言っているんですが、もともとは「落ちこぼれ」だったんです。勉強はできない、対人恐怖症で営業もできない、最初の会社は半年でクビになる。そんな私が、なぜ今日までやってこれたのか。

私がこれまでの80年近い人生を通じて、そしてニトリという会社を育てていく中で確信した「人生で一番大事なこと」。それは、「志(ロマン)とビジョンを持つこと」、そして「変化を恐れず、常に挑戦し続けること」です。

3500字程度でお話しするとなると、少し長くなりますが、私の失敗だらけの人生から学んだ教訓を、心を込めてお伝えしましょう。


1. どん底で出会った「ロマン」という光

私の人生を語る上で欠かせないのは、23歳で似鳥家具店(現在のニトリ)を始めた時のことです。正直に言いましょう。最初は「ロマン」なんて格好いいものは微塵もありませんでした。ただ「食べていくため」に必死だった。でも、商売はちっとも上手くいかない。近所に大手家具店ができて、お客さんはみんなそっちへ行ってしまう。私は毎日、店の前で呆然と立ち尽くし、夜は将来への不安で眠れない日々を過ごしていました。

そんな絶望の淵にいた1972年、私はある決断をしました。なけなしの金をはたいて、アメリカの家具業界視察ツアーに参加したんです。これが私の人生の最大の転換点でした。

アメリカで見た光景は、衝撃という言葉では足りないほどのものでした。人々の暮らしが、日本とは比べものにならないほど豊かだった。家具の価格は日本の3分の1なのに、品質ははるかに高い。トータルコーディネートされた美しい部屋で、家族が幸せそうに笑っている。

その時、私の中に稲妻が走りました。

「なぜ、日本にはこういう豊かさがないのか。よし、私が日本の暮らしをアメリカのように豊かにしてみせる。それが私の生涯をかけた仕事だ」

これが、私の「ロマン」が生まれた瞬間です。

人生で一番大事なことの第一は、この「ロマン」を持つことです。ロマンとは、「誰かのために、世の中のために、自分は何ができるか」という利他の志です。自分のためだけの成功や金儲けは、苦しい時に踏ん張りがききません。でも、「世の中を良くしたい」というロマンがあれば、どんな逆境もエネルギーに変えることができるんです。

2. 「ビジョン」がなければ、ただの夢想で終わる

ロマンを持つだけでは足りません。次に大事なのは、それを具体的な数字と期限に落とし込んだ「ビジョン」です。

アメリカから帰国した私は、周囲にこう宣言しました。「30年以内に、日本中に店舗を広げ、売上高を1,000億円、店舗数を100店舗にする」と。当時の私には、たった1店舗の小さな家具店しかありませんでした。周りの人はみんな「似鳥は気が狂ったか」と笑いました。でも、私は本気でした。

なぜビジョンが大事なのか。それは、ビジョンが「現在の自分」と「あるべき姿」のギャップを明確にしてくれるからです。

1,000億円を目指すと決めたら、今のままの仕入れでは絶対に不可能です。だからこそ、「製造物流IT小売業」という、企画から製造、販売まで自分たちでやる独自のモデルを作る必要があった。

人生も同じです。「いつか幸せになりたい」では、何をすればいいか分かりません。でも、「〇年後に、こういう状態になる」と期限を切って具体的に描けば、今日やるべきことが見えてくる。ビジョンがあるからこそ、日々の苦労は「目的のためのプロセス」に変わるんです。

3. 「変化」こそが唯一の生存戦略

私の好きな言葉に「現状否定」というものがあります。昨日までの成功体験を、今日捨て去る勇気です。

人生やビジネスにおいて、一番のリスクは「変化しないこと」です。多くの人は、一度上手くいくと、そのやり方に固執してしまいます。でも、世の中は恐ろしいスピードで変わっている。変わらないことは、相対的に後退しているのと同じなんです。

ニトリの歴史は、変化の連続でした。

  • 問屋を通さず、自分たちで海外から直接仕入れる。
  • 家具だけでなく、ホームファッション(インテリア小物)に参入する。
  • 景気が悪くなると分かったら、他社に先駆けて値下げ(お、ねだん以上。)を断行する。

これらはすべて、当時の常識を否定することから始まりました。何か新しいことを始めようとすると、必ず反対されます。でも、「反対されることこそ、成功へのチャンス」なんです。みんなが賛成するようなことは、すでに誰かがやっている。反対されるような非常識な発想こそが、大きな飛躍を生む。

「今のままでいい」と思った瞬間、成長は止まります。常に「もっといいやり方はないか」「もっとお客様を喜ばせることはできないか」と、自分を疑い、変化し続けること。これが人生を豊かにする秘訣です。

4. 「不運」を「幸運」に塗り替える思考法

私の人生は、端から見れば「運が良かった」と言われるかもしれません。確かに、私は運が良い方だと思います。でも、その運をどうやって引き寄せたかというと、「不運を幸運に塗り替えてきた」からです。

私は昔から、とにかく失敗ばかりしてきました。でも、失敗した時に「ああ、ダメだ」と落ち込むのではなく、「よし、これで一つダメな方法が分かったぞ」と考えるようにしました。失敗は成功のための授業料。むしろ、若いうちにたくさん失敗しておいた方がいい。

景気が悪くなった時もそうです。世間が「不況だ、大変だ」と騒いでいる時、私は「これはチャンスだ」と考えます。不況になれば、土地も安くなる、優秀な人材も採用しやすくなる。競合が怯んでいる隙に、一気に攻めることができる。

「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」

このバランスが大事です。どんなに厳しい状況でも、最後には「なんとかなる、いや、してみせる」という明るい前向きな気持ちを持つこと。その明るさが、周囲に人を集め、運を呼び込むんです。

5. 自分の弱さを認める「誠実さ」

私は、自分が「できない人間」であることを誰よりもよく知っています。だからこそ、自分一人で何でもやろうとは思いませんでした。自分より優秀な人、自分にない才能を持っている人を、一生懸命探して、仲間になってもらいました。

もし私がプライドに縛られて、「俺が一番だ」と思っていたら、ニトリは今の規模にはなっていなかったでしょう。人生で大事なのは、自分の弱さや至らなさを素直に認め、他人の力を借りる謙虚さです。

そして、人との繋がりにおいて一番大事なのは「誠実さ」です。

「お、ねだん以上。」という言葉は、お客様に対する誠実さの証です。お客様の期待を裏切らない、期待を常に超えていく。その積み重ねが「信頼」になります。信頼こそが、人生における最大の資産です。お金は失っても取り返せますが、一度失った信頼を取り戻すのは至難の業ですからね。

6. 最後に伝えたいこと:命を燃やす場所を見つける

さて、ずいぶん長くなってしまいました。

結局のところ、人生で一番大事なことは、「自分は何のためにこの命を使うのか」という問いに対して、自分なりの答えを出し続けることではないでしょうか。

私にとっては、それが「ロマンとビジョン」でした。

勉強もできず、クビにもなった。そんなダメな男でも、大きな志を持ち、変化を恐れずに挑戦し続けたら、日本中の人の暮らしを少しだけ豊かにすることができた。これは、私に特別な才能があったからではありません。ただ、「諦めなかったから」です。

あなたの人生にも、これからたくさんの困難や壁が立ちはだかるでしょう。でも、その壁はあなたを止めるためのものではなく、あなたがどれだけ本気でそこを通りたいかを試しているだけなんです。

「無理だ」と言われたら、「よし、やってやろう」と笑い飛ばしてください。

失敗したら、「いい経験をした」と胸を張ってください。

そして、常に自分の「ロマン」に向かって、一歩ずつ、半歩ずつでもいいから前に進んでください。

人生は一度きりです。せっかくなら、大きな夢を描いて、それを実現するためにハチャメチャに、楽しく、一生懸命に生きてみようじゃありませんか。

私の座右の銘は「志高く、泥臭く」です。

あなたが、あなた自身の「人生のロマン」を見つけ、それを叶えるために輝き続けることを、心から応援しています。頑張りましょうね。


似鳥 昭雄