M&Aキャピタルパートナーズの中村悟です。
「人生で一番大事なことは何か」という問いに対し、私は迷わずこう答えます。それは「自らの使命(ミッション)を見つけ、それに対してどこまでも誠実であること」です。
私が歩んできた道、そしてM&Aキャピタルパートナーズという会社を通じて実現しようとしていることのすべては、この一点に集約されます。3500字という限られた、しかし深い対話ができるこの場で、私の信念を丁寧にお伝えしたいと思います。
1. 「原体験」が教えてくれた使命
私の人生観を形作ったのは、新卒で入社した積水ハウス時代の経験です。当初、私は建築学科出身として設計に携わり、その後、地主様やオーナー様を対象とした営業部門に配属されました。そこで目にした光景が、私の運命を変えました。
多くのオーナー様が、自らが心血を注いで築き上げてきた会社を、後継者がいないという理由だけで「廃業」させようとしていたのです。
「中村君、もう私の代で終わりだよ。明日から従業員はどうなるんだろうな」
そう寂しそうに笑うオーナー様の横顔を見るたび、私は激しい憤りに似た感情を覚えました。
会社は単なる数字の集合体ではありません。そこには、創業者が流した血の滲むような努力があり、従業員の家族の生活があり、長年培われてきた独自の技術や文化があります。それが、後継者がいないという「仕組みの欠如」だけで消えてしまう。これは日本社会にとって、あまりに大きな損失ではないか。
このとき、私の中に「日本の優れた会社を、次世代に繋ぐインフラを作る」という強烈な使命が芽生えました。これが、私の人生において「一番大事なこと」を見つけた瞬間でした。
2. 「誠実さ」という最強の戦略
起業を決意した2005年、当時の日本においてM&Aはまだ「ハゲタカ」や「身売り」といったネガティブなイメージが強いものでした。また、大手の証券会社や銀行は手数料の大きな大企業の案件しか扱わず、本当に助けを必要としている中堅・中小企業は置き去りにされていました。
私は、この業界を変えなければならないと考えました。そこで打ち出したのが、当時の常識を覆す「着手金無料」の料金体系です。
多くの仲介会社が、成約するかどうかもわからない段階で多額の着手金を取っていました。しかし、私はそれが「誠実」ではないと感じました。オーナー様にとって、M&Aは一生に一度の、命懸けの決断です。その決断に寄り添う私たちが、リスクを共有せずに利益を得るのは道理に合わない。
「結果が出なければ、報酬はいただかない」
この覚悟こそが、お客様との信頼関係の基礎となります。人生で一番大事なことの一つは、「誰に対しても、自分自身の良心に対しても、嘘をつかない」ことです。ビジネスの世界では、時として目先の利益のために近道をしたい誘惑に駆られます。しかし、不誠実な手段で得た成功は、決して長続きしません。誠実さこそが、結果として最強の戦略になるのです。
3. 「人」への投資とプロフェッショナリズム
M&Aキャピタルパートナーズは、おかげさまで「平均年収が高い企業」として注目されることが多くなりました。しかし、私は報酬そのものを目的としているわけではありません。
私が大事にしているのは、「プロフェッショナルとしての誇り」です。
オーナー様の人生を左右するM&Aの現場では、担当者のわずかな知識不足や配慮の欠けが、取り返しのつかない事態を招きます。だからこそ、業界で最も優秀な人材を集め、彼らが心置きなく研鑽を積み、最高の結果を出せる環境を整える必要がある。その正当な対価が、結果としての高い報酬なのです。
人生において、自分が関わる仕事に対して「プロ」であることは、自己肯定感の源泉となります。「自分はこれだけの価値を社会に提供している」という自負こそが、人を強くし、優しくします。
私は社員たちに、常にこう問いかけます。
「君の目の前にいるオーナー様が、もし自分の父親だったら、そのアドバイスを誇りを持って言えるか?」
この問いにYESと答えられる仕事をし続けること。それが、人生を豊かにする「正しい歩み方」だと確信しています。
4. 困難の中にこそ、価値がある
人生には必ず困難が訪れます。私も創業当時は、実績がない中で何百社と電話をかけ、門前払いされる日々を過ごしました。資金が底をつきかけ、孤独に震える夜もありました。
しかし、今振り返れば、その困難な時期こそが私を最も成長させてくれました。
「順風満帆な時には見えない景色が、逆風の時にだけ見える」のです。
M&Aの交渉も同じです。売り手と買い手、双方の感情がぶつかり合い、破談寸前になる局面が必ずあります。そこで逃げずに、双方の幸せを願い、泥臭く調整を続ける。その苦しみの先にしか、本当の感動や「ありがとう」という言葉は存在しません。
楽な道を選んで得られる満足感は、一瞬で消えます。しかし、困難を乗り越えて成し遂げた仕事は、一生の財産になります。人生で大事なのは「何を達成したか」以上に、「どれだけ真剣に、その困難に向き合ったか」ではないでしょうか。
5. 次世代への継承:未来を創る責任
私は今、日本のM&A業界の健全な発展のために「M&A仲介協会」の活動などにも力を入れています。これは、私一人が成功すれば良いという段階を過ぎ、この業界全体を「社会から真に信頼される存在」に高める責任があると感じているからです。
日本には、世界に誇るべき技術や志を持った中小企業が数多くあります。それらを一つでも多く、最善の形で次世代に繋ぐこと。それは、かつて私が積水ハウスの営業マン時代に誓った、あの日の想いの延長線上にあります。
「自分の死後、この世界に何を残せるか」
これを考えることが、人生の質を決定づけます。私の場合は、それが「存続し続ける企業」の数であり、そこで働く人々の笑顔です。あなたが今取り組んでいることも、必ず誰かの未来に繋がっています。その繋がりを意識したとき、日々の仕事は作業ではなく、尊い「使命」へと変わります。
結びに代えて
人生で一番大事なこと。それは、「情熱を注げる対象を見つけ、それを磨き上げ、誰かのために使い切ること」です。
私にとっての情熱はM&Aであり、磨き上げたものは誠実な仲介の技術です。そして、それを日本の事業承継という大きな課題解決のために使い切る覚悟を持っています。
あなたは、何のためにその命を使いますか?
どのような誠実さを持って、誰の人生に貢献しますか?
富や名声は、正しい努力の結果として後からついてくる副産物に過ぎません。それ自体を追い求めるのではなく、自分が信じる「正しい道」を歩み続けること。そのプロセスの中にこそ、人生の真の幸福と成功が眠っています。
これからも私は、一人の経営者として、一人の人間として、誠実に、愚直に、日本の未来を繋ぐ挑戦を続けてまいります。この記事を読んでいるあなたも、ご自身の心の中にある「誠実さの灯」を大切に、素晴らしい人生を歩まれることを心より願っております。
中村 悟