こんにちは。J.M. デピントです。

世界最大のコンビニエンスストア・チェーンであるセブン-イレブンを率いる立場として、また一人の人間として、私のこれまでの歩みと、そこで得た「人生で最も大切なこと」についてお話しできる機会をいただき、光栄に思います。

3,500字という限られた枠の中ではありますが、私がウェストポイント(合衆国陸軍士官学校)で学び、軍隊での経験を経て、ビジネスの世界、そしてセブン-イレブンのCEOとして確信に至った信念のすべてをここに込めたいと思います。


序:リーダーシップの原点

私はよく、周囲から「巨大企業のCEOとして成功する秘訣は何か」と尋ねられます。しかし、私の答えは常に、ビジネスの戦術や財務の数字ではなく、もっと根源的な「人間としてのあり方」に帰結します。

私の人生観を形作ったのは、間違いなくウェストポイントでの日々です。あそこで叩き込まれたのは、単なる軍事戦略ではありません。「Duty, Honor, Country(義務、名誉、祖国)」というモットー、そして「自己を捧げることの尊さ」でした。

人生において最も大事なこと。それは一言で言えば、「サーヴァント・リーダーシップ(奉仕するリーダーシップ)に基づき、誠実(インテグリティ)を持って他者の人生に貢献すること」です。


1. 逆ピラミッドの思想:奉仕こそが力

多くの組織では、CEOが頂点に立ち、その下に役員、部長、そして末端の従業員がいるというピラミッド構造を思い浮かべるでしょう。しかし、私の哲学はその真逆です。ピラミッドを逆さまにするのです。

セブン-イレブンにおいて、最も重要な人々は誰でしょうか。それは私でもなければ、ダラスの本社にいる役員でもありません。それは、毎日店舗のカウンターに立ち、お客様にコーヒーを注ぎ、笑顔で接しているフロントライン(現場)のチームメンバーたちです。

私が人生で学んだ最大の教訓の一つは、「自分がどれだけ高い地位に就いたとしても、自分の役割は自分より下の人々を支え、彼らが成功できるように道を整えることにある」ということです。

私がかつて出演した『アンダーカバー・ボス』という番組で、私は正体を隠して自社の店舗や配送現場で働きました。そこで再確認したのは、現場の苦労と、彼らがいかに献身的に働いているかという事実でした。リーダーの役割は、オフィスで命令を下すことではなく、現場の人々が直面している障害を取り除き、彼らを鼓舞し、支えることです。

これはビジネスに限った話ではありません。家族、友人、コミュニティにおいても同じです。「自分が何を得るか」ではなく、「自分が周囲の人々のために何ができるか」を問い続けること。これが、人生を豊かにする第一歩なのです。


2. 誠実さ(インテグリティ)という北極星

次に大切なのは、「誠実さ(インテグリティ)」です。これは、誰も見ていないところで正しいことを行う強さのことです。

ウェストポイントでは、「士官候補生は嘘をつかず、騙さず、盗まず、またそのような行為をする者を容認しない」という厳格な名誉規律があります。これは、一度失えば二度と取り戻せない「信頼」の基盤となります。

ビジネスの世界、特にコンビニエンスストアという「日常の信頼」を売る商売において、誠実は最大の資産です。お客様は、私たちの店舗にある食品が安全であると信じ、私たちが約束した通りの利便性を提供すると信じて来店されます。その信頼を裏切ることは、ブランドを破壊するだけでなく、自分自身の魂を削ることに他なりません。

人生の岐路に立ったとき、あるいは困難な決断を迫られたとき、私は常に自分に問いかけます。「この選択は、自分の信念と照らして正しいか? 明日の朝、鏡に映る自分を直視できるか?」

近道を選びたくなる誘惑は常にあります。しかし、誠実さを欠いた成功は砂上の楼閣に過ぎません。揺るぎない倫理観を持ち、常に正直であること。それが、人生という長い航海において自分を導く北極星となるのです。


3. 「人」への投資と、関係性の構築

セブン-イレブンは、テクノロジーや物流の会社だと思われがちですが、本質的には「ピープル・ビジネス(人のビジネス)」です。

私がCEOとして最も時間を割くのは、人との繋がりです。加盟店オーナー(フランチャイジー)、ベンダー、そして従業員。私たちは一人では何も成し遂げられません。

人生で最も大事なことの三つ目は、「人間関係を大切にし、人に対して惜しみなく投資すること」です。

私はこれまで、多くの優れたリーダーを見てきましたが、真に偉大なリーダーは皆、自分よりも優秀な人々を周囲に集め、彼らを信頼し、権限を委譲していました。人の成長を助けることほど、やりがいのある仕事はありません。誰かが自分のサポートによって才能を開花させ、成功を収める姿を見ることは、どんな四半期決算の数字よりも私を満足させてくれます。

また、他者との関係においては「共感(エンパシー)」が不可欠です。相手の立場に立ち、彼らが何を必要とし、何を恐れ、何に価値を置いているのかを理解しようと努めること。この深い理解があって初めて、真の協力関係が築けるのです。


4. 変化を恐れず、常に学び続ける姿勢

私たちが生きる世界は、かつてないスピードで変化しています。セブン-イレブンが誕生した100年前と今では、お客様が求める「便利さ」の定義は全く異なります。

ここで重要になるのが、「適応力」と「謙虚な学習姿勢」です。

「自分はすべてを知っている」と思った瞬間、成長は止まり、衰退が始まります。私は常に、現場の若いスタッフや、最新のテクノロジーに詳しい専門家から学ぼうとしています。謙虚さを失わず、変化を脅威ではなくチャンスとして捉えること。

人生においても同じです。昨日の成功体験に固執せず、常に新しい知識を取り入れ、自分自身をアップデートし続けること。失敗を恐れずに挑戦し、もし失敗したならばそこから教訓を汲み取って次に活かす。この「不屈の精神(レジリエンス)」こそが、困難な時代を生き抜く武器となります。


5. 目的(パーパス)を持って生きる

最後に、最も根本的な問いについてお話しします。なぜ私たちは働くのか、なぜ私たちは生きるのか。

私にとって、人生で最も大事なことは、「自分を超えた大きな目的(パーパス)に仕えること」です。

セブン-イレブンのパーパスは「お客様の生活をより便利にする」ことですが、それは単に商品を売ることではありません。忙しい朝に一杯のコーヒーで活力を与え、災害時に必要な物資を届け、地域社会の灯台となることです。私たちは人々の日常を支えているという自負があります。

個人の人生においても、自分自身の利益や快楽だけを追求していては、真の幸福は得られません。自分の才能や資源を、誰かのため、あるいは社会を少しでも良くするために使うこと。「自分がこの世を去るとき、来たときよりも少しだけ良い場所にしていたい」。この目的意識こそが、毎朝ベッドから這い上がるエネルギーの源となります。


結論:人生のスコアカード

人生の終わりに、私たちは何を持って評価されるのでしょうか。銀行の残高でしょうか。企業の肩書きでしょうか。

私はそうは思いません。私たちの人生を評価する真のスコアカードは、「どれだけ多くの人々にポジティブな影響を与えたか」、そして「どれだけの人に愛され、信頼されたか」という点にあります。

  • サーヴァント・リーダーシップを持って、他者を支えること。
  • インテグリティ(誠実さ)を持って、正道を歩むこと。
  • 人間関係を尊び、共に成長すること。
  • 変化を恐れず、学び続けること。
  • そして、パーパス(目的)を持って社会に貢献すること。

これらが、私が60年以上の人生と、数十年にわたるビジネスキャリアを通じてたどり着いた結論です。

皆さんも、自分自身の「逆ピラミッド」を描いてみてください。あなたが支えるべき人は誰ですか? あなたが守るべき名誉は何ですか? そして、あなたが果たすべき使命は何ですか?

その答えの中に、あなたの人生で一番大事なものが隠されているはずです。

私が歩んできた道が、あなたの旅の少しでも参考になれば幸いです。共により良い未来を築いていきましょう。