私がウィリー・チャバリアとして、この問いに答えましょう。

人生において、そして表現者として、私が最も大切にしていること。それは、一言で言えば「人間の尊厳(Human Dignity)と愛」です。

しかし、この「尊厳」や「愛」という言葉は、あまりにも頻繁に使われ、時にはその真の意味が薄れてしまっているように感じることがあります。私が語りたいのは、もっと泥臭く、もっと政治的で、それでいて心の奥底から湧き上がる、魂の叫びのようなものです。

私のルーツと「見えない人々」

私はカリフォルニア州のセントラル・バレー、農場が広がるヒューロンという町で育ちました。私の背景にはメキシコ系アメリカ人、いわゆる「チカーノ」としてのアイデンティティがあります。子供の頃に目にしたのは、灼熱の太陽の下で働き、この国の食卓を支えながらも、社会からは「見えない存在」として扱われていた労働者たちの姿でした。

彼らは貧しかったかもしれない。しかし、彼らには圧倒的な「スタイル」がありました。アイロンがピシッとかけられたワークシャツ、独特の美学を持って履きこなすワイドパンツ。それは単なる服ではなく、過酷な現実の中で自分たちのプライドを誇示するための「武装」であり、静かな抵抗の表明だったのです。

私がファッションデザイナーとして歩む中で、常に自分に問い続けてきたのは、「誰のために、何のために服を作るのか」ということです。きらびやかなファッション業界の表舞台、シャンパンが振る舞われるパーティー、高価なラグジュアリー・ブランド……。それらも一つの世界ではありますが、私の心は常に、あのセントラル・バレーの労働者たちや、ストリートで必死に生きる若者たち、社会の片隅に追いやられたマイノリティの中にあります。

人生で一番大事なこと。それは、「すべての人間が、その背景や人種、性的指向、経済状況に関わらず、等しく尊厳を持って存在していることを認め、それを祝福すること」です。

ファッションは政治であり、メッセージである

私にとって服を作ることは、単に美しいシルエットを追求することではありません。それは「メッセージ」を世に送り出すプロセスです。

私のコレクションでは、極端に大きなオーバーサイズのシルエットを多用します。なぜか? それは、社会的に「小さく」扱われている人々が、この世界の中で「大きなスペースを占める(Take up space)」ことを許されるべきだという私の意志の表れです。大きな肩幅、太いパンツ。それは、抑圧されてきた者たちが胸を張り、自分たちの存在を堂々と主張するための形なのです。

「人生で大事なこと」とは、自分自身の声を上げること、そして他者の声が届かない場所で、その声を代弁することだと信じています。ファッションというツールを使って、私は人権や社会正義について語りたい。ランウェイは、単に服を見せる場所ではなく、人間性の美しさと社会への問いかけを提示するプラットフォームでなければなりません。

「REAL LOVE」という革命

私のブランドのスローガンの一つに「REAL LOVE(本物の愛)」があります。今の世の中は、分断や憎しみ、そしてデジタル上の空虚な繋がりで溢れています。そんな時代だからこそ、私は「愛」という言葉を過激なまでに追求したい。

ここでの愛とは、甘い感傷のことではありません。それは、自分とは異なる他者を受け入れる勇気であり、弱者に寄り添う優しさであり、不当な扱いに立ち向かう強さのことです。

私はラルフ・ローレンという、アメリカン・クラシックの頂点のような場所で働いた経験があります。そこで学んだのは、洗練された美学と卓越したクオリティです。しかし、私が自分のブランドを立ち上げた時、その美学を「ストリート」や「労働階級」の文脈へと持ち込みました。なぜなら、真のエレガンスは富裕層だけのものではないからです。

バス停で座っているおじいさん、スケートパークで汗を流す少年、深夜のダイナーで働く女性。彼らの中に宿るエレガンスを見出し、それを最高級の素材とカッティングで表現する。それこそが、私にとっての「愛」の形であり、デザイナーとしての誠実さです。

誠実さとアイデンティティ

人生を歩む上で、もう一つ欠かせないのが「自分自身に対して誠実であること」です。

私は自分のルーツを隠そうとしたことは一度もありません。むしろ、それが私の最大の強みであり、インスピレーションの源です。ファッション業界は時として、トレンドを追い、消費者を煽り、表層的な美しさを競い合います。しかし、そんな流れに身を任せてしまえば、自分という人間がどこにいるのか分からなくなってしまう。

自分が何者であり、どこから来たのか。そして、どのような価値観を信じて生きているのか。その「核」をしっかりと持ち、決して揺るがないこと。流行は移ろい、賞賛も批判もいつかは消えます。しかし、自分の魂を込めて作ったもの、そして誰かの心に深く届いたメッセージは、永遠に残ります。

2023年と2024年にCFDA(アメリカファッション協議会)のデザイナー・オブ・ザ・イヤーをいただいたことは光栄ですが、それ以上に私を突き動かしているのは、私の服を着た人が「自分に自信を持てた」「自分も美しく存在していいんだと感じた」と言ってくれる瞬間です。

結論:私たちが目指すべき場所

人生で一番大事なこと。それは、「愛によって世界を繋ぎ、人間の尊厳を奪い合わせないこと」です。

私たちは皆、この地球という場所を共有する旅人です。誰かが誰かを支配したり、見下したりする権利などありません。私はこれからも、ファッションという力強い「言語」を使って、美しさの定義を拡張し続けます。不完全なもの、見捨てられたもの、粗野なものの中にある神聖な美しさを証明し続けます。

もしあなたが、今自分の人生に迷っているのなら、どうか自分の内なる声に耳を傾けてください。あなたの背景や痛みが、いつか誰かを救う光になるかもしれません。そして、隣にいる人の目を見てください。彼らもあなたと同じように、愛を求め、尊厳を保とうと戦っている人間です。

優しくあること。強固な意志を持つこと。そして何より、自分を愛し、隣人を愛すること。それが、ウィリー・チャバリアという一人の人間が行き着いた、最もシンプルで、最も困難で、そして最も美しい人生の真理です。

私たちは、ファッションを通じて、あるいは日々の行動を通じて、より良い、より平等な、そして「REAL LOVE」に満ちた世界を築くことができるはずです。私はそう信じて、今日もミシンを動かし、布を裁ち、誰かのための「鎧」を作り続けます。

共に歩みましょう。誇りを持って、大きく、そして美しく。