やあ、エドだよ。イングランドのサフォークにある自宅の庭で、少し肌寒い風を感じながら、君の問いについて考えているところだ。

「人生で一番大事なことは何か?」

これはとても大きな、そして美しい問いだね。僕の人生は、アコースティックギター一本を抱えて地下鉄で寝泊まりしていた頃から、スタジアムで何万人の前で歌う今に至るまで、信じられないようなスピードで変化してきた。その過程で多くのことを学び、時には手痛い失敗もしてきたけれど、今の僕が心の底から確信している「一番大事なこと」を、僕自身の言葉で伝えてみようと思う。

少し長くなるけれど、僕の人生の断片を詰め込んだこの手紙のような言葉が、君の心に届くと嬉しい。


1. 「汚れた水」を出し切るまで、蛇口を止めないこと

僕にとって、人生で最も大切な要素の一つは 「継続」と「情熱」、そしてそれに伴う 「失敗を恐れない姿勢」 だ。

よく「エドはどうやってそんなに曲を書くんだ?」と聞かれるけれど、答えはシンプルだ。僕は誰よりも多くの「ひどい曲」を書いてきた。

僕はこれを 「蛇口の理論」 と呼んでいる。古い家の蛇口をひねると、最初に出てくるのは茶色く濁った汚れた水だ。でも、それを出し続けていると、ある時から突然、透き通った綺麗な水が出てくるようになる。

人生も、創作も、仕事も、それと同じだと思う。最初から完璧な結果を出せる人なんていない。多くの人は、汚れた水(失敗や不格好な結果)が出ることに耐えられず、途中で蛇口を閉めてしまうんだ。でも、一番大事なのは、その濁った水を出し切るまで止めないこと。泥臭く、不格好な自分を晒し続ける勇気を持つことだ。

僕がロンドンに出たばかりの頃、観客が一人もいないパブで歌ったことが何度もある。駅のホームでギターを弾きながら、誰にも目を向けられずに夜を明かしたこともある。でも、その時の「汚れた水」のような時間がなかったら、今の僕の歌は生まれていなかった。

「才能」とは、特別な力のことじゃない。「続けられる力」のことなんだ。 自分が信じたものを、世界が認めてくれるまでやり続けること。それが人生を切り開く唯一の鍵だと僕は信じている。

2. 自分の「違和感」を愛し、武器にすること

次に大事なのは、「自分自身であることを誇りに思うこと」 だ。

子供の頃の僕は、赤毛で、ひどい吃音(どもり)があって、大きな眼鏡をかけていた。おまけにスポーツも苦手だった。学校では典型的な「はみ出し者」だったよ。でも、今振り返ってみると、その時に僕を「普通」から遠ざけていたものこそが、僕の最大の武器になったんだ。

もし僕が、当時流行っていたボーイズグループのようなルックスで、完璧な話し方をしていたら、今の僕はここにいないだろう。エミネムの超高速ラップを必死に真似して吃音を克服しようとした経験や、周りに馴染めず部屋で一人ギターを弾いていた時間が、僕だけの「声」を作ってくれた。

今の世の中は、SNSを通じて「誰か他の誰か」になることを強いてくる。キラキラした他人の人生を見て、自分に足りないものを探してしまう。でも、そんなのは時間の無駄だ。

君を「変だ」と思わせるもの、君がコンプレックスに感じているもの。それこそが、君という人間をこの世界で唯一無二にする「個性」なんだ。 人と同じであることを目指す必要はない。自分の欠点を修正するのではなく、それをどうやって自分の強みに変えるかを考えてほしい。赤毛の少年がスタジアムを一杯にできるんだから、君にだってできないはずがないよ。


3. 愛する人々という「アンカー(錨)」を持つこと

キャリアが大きくなるにつれ、僕はもう一つの大切なことに気づいた。それは、「成功を分かち合える相手がいること」、そして 「自分を素の自分として扱ってくれる場所を大切にすること」 だ。

正直に言おう。何万人もの歓声を浴び、トロフィーをもらう瞬間は最高にエキサイティングだ。でも、その照明が消え、家に帰った時に誰もいなかったら、それはとてつもなく虚しいものになる。

僕にとっての人生の宝物は、音楽の賞賛じゃない。幼なじみだった妻のチェリー、そして僕の娘たち、そして僕がまだ何者でもなかった頃から支えてくれた家族や友人たちだ。彼らは僕が「エド・シーラン」というスターであっても、ただの「エド」であっても、同じように接してくれる。僕が調子に乗っていれば叱ってくれるし、落ち込んでいれば黙ってそばにいてくれる。

人生という荒波の中で、自分を繋ぎ止めてくれる 「アンカー(錨)」 を持つことは、何よりも重要だ。

仕事の成功や名声は、ある日突然消えてしまうかもしれない。でも、君が注いできた愛と、君を愛してくれる人々との絆は、決して君を裏切らない。

忙しさに負けて、大切な人との夕食をキャンセルしないでほしい。スマートフォンの画面越しではなく、相手の目を見て話す時間を大切にしてほしい。結局のところ、人生の終わりに僕たちが思い出すのは、売れたレコードの枚数ではなく、愛する人と過ごした静かな日曜日の午後なんだから。

4. 「今、この瞬間」に感謝すること

僕たちはいつも「次」のことを考えて生きている。「次の昇進」「次のバケーション」「次の成功」。僕も以前はそうだった。アルバムを一枚出したら、もう次のアルバムのチャート順位を気にしていた。

でも、ある時気づいたんだ。「未来のために今を犠牲にする生き方」 をしていると、人生はあっという間に指の間からこぼれ落ちてしまうということに。

人生で一番大事なことの一つは、「今、この瞬間にある幸せ」に気づき、感謝すること だ。

それは、朝起きた時に飲む一杯のコーヒーの香りかもしれない。ギターの弦が指に触れる感覚かもしれない。あるいは、子供の寝顔を見つめる時間かもしれない。

大きな幸せを追い求めるのもいいけれど、日常の中に散りばめられた「小さな魔法」を見逃さないでほしい。

僕は今、サフォークの田舎で、家族と過ごし、木を植え、ビールを飲み、時々音楽を作るというシンプルな生活を愛している。世界中を旅して分かったのは、最高に贅沢なことは、特別な場所に行くことではなく、自分が心からリラックスできる場所で、自分らしくいられることなんだ。


5. 優しさを、世界に循環させること

最後に伝えたいのは、「優しさ(Kindness)」 の力についてだ。

この世界は時として残酷で、冷たい場所に見えることがある。でも、だからこそ、僕たちは互いに優しくある必要があるんだ。

僕がここまで来られたのは、僕にチャンスをくれた無数の人々の優しさがあったからだ。無名の僕をライブに出してくれたプロモーター、僕の才能を信じてくれたスタッフ、そして僕の歌を聴いてくれるファンのみんな。

だから僕は、自分が受け取った優しさを、次の誰かに渡したいと思っている。

「親切であること」は、弱さじゃない。それは、この世界を生き抜くための最も洗練された「強さ」だ。

隣人に笑顔を向けること、誰かの悩みを聞いてあげること、あるいは自分の持っているものを少しだけ誰かに分け与えること。その小さな行動が、誰かの人生を救うことがある。そして不思議なことに、他人に優しくすることは、巡り巡って自分自身の心を一番豊かにしてくれるんだ。

結論:君の人生の歌を歌おう

人生は、一本の長いライブのようなものだ。セットリスト通りにいかないこともあるし、弦が切れることもある。音響が悪くて、自分の声が届かない夜もあるだろう。

でも、忘れないでほしい。

  1. 不格好でもいいから、自分だけの蛇口をひねり続けること。
  2. 自分の個性を愛し、唯一無二の存在として胸を張ること。
  3. 愛する人を大切にし、心のアンカーをしっかりと下ろすこと。
  4. 「今」という瞬間にある小さな幸せに感謝すること。
  5. そして、常に世界に対して優しくあること。

これが、僕が30数年の人生で学んだ、一番大事なことのすべてだ。

君の人生というステージで、君にしか歌えない歌を、精一杯の大きな声で歌ってほしい。たとえ最初はその声が震えていても、歌い続けていれば、いつか必ず誰かの心に響くメロディになる。

僕はここ、サフォークの空の下から、君のことを応援しているよ。

Cheers,

Ed Sheeran


いかがでしたでしょうか。エド・シーランのこれまでの発言や、彼の持つ「努力家でありながら自然体」という哲学を投影して執筆しました。