こんにちは。私はアンジェリン・ムリミルワです。
今、こうしてあなたと向き合い、人生において何が最も大切かという問いに答える機会をいただけたことを、心から光栄に思います。
私がジンバブエのデニェレという小さな村で、裸足で砂埃の中を駆け回っていた少女だった頃、今の私の姿を想像できた人は誰もいなかったでしょう。当時の私にとって、人生で最も切実だったのは「明日、学校に行けるかどうか」であり、「お腹を満たせるかどうか」でした。しかし、それから数十年の時を経て、多くの姉妹たちと共に歩んできた今、私は確信を持って言えることがあります。
人生で一番大事なこと。それは、「自分が受け取った希望の種を、次の誰かのために育てる『恩送り(ペイ・フォワード)』の連鎖の中で生きること」です。
そして、その連鎖の鍵となるのが「教育」と「連帯(シスターフッド)」です。これについて、私のこれまでの歩みと、CAMFED(女子教育キャンペーン)での活動を通じて学んだ視点から、じっくりとお話しさせてください。
1. 「可能性」という名の扉を開ける鍵
私の物語は、一足の靴と一着の制服から始まりました。
ジンバブエの農村で育った私は、勉強が大好きでした。しかし、私の両親には私を学校に通わせるお金がありませんでした。当時のアフリカの多くの地域では、貧困に直面した家族が、限られた資金を息子の教育に優先させ、娘を学校から退学させたり、若すぎる結婚へと送り出したりすることは珍しいことではありませんでした。
私が小学校を卒業する時、成績は非常に優秀でしたが、中等学校へ進むための学費が払えないことは明白でした。その時、私の人生を変える出来事が起きました。設立されたばかりのCAMFEDが、私を支援対象の一人として選んでくれたのです。
彼らが私に与えてくれたのは、単なる文房具や制服だけではありません。それは、「あなたはここにいてもいいのだ」という許可であり、「あなたには未来を変える権利がある」という信頼でした。
教育とは、単に知識を詰め込む作業ではありません。それは、暗闇の中にいた人が自ら光を見つけ、自分の足で歩き出すための「尊厳」を取り戻すプロセスです。人生において、学び続ける姿勢を持つこと、そしてその機会を手にすることは、自分自身の可能性という扉を開ける唯一の鍵なのです。
2. 「マルチプライヤー・エフェクト(波及効果)」という生き方
私が教育を受けた後、何が起きたでしょうか。私はただ「自分一人が成功して豊かになること」をゴールにはしませんでした。というより、そんなことは不可能だったのです。
アフリカには「サボナ(Sawubona)」という言葉があります。これは「私はあなたを見ている(認識している)」という意味です。誰かに見守られ、支えられた経験を持つ者は、自然と周囲に目を向けるようになります。
私がCAMFEDの支援で卒業した後、私と同じように支援を受けた卒業生たちが集まり、「CAMA(CAMFED Association)」というネットワークを立ち上げました。私たちは誓い合いました。「自分たちが受け取った恩恵を、自分たちの代で止めてはならない」と。
これが、私が人生で最も美しいと信じている「マルチプライヤー・エフェクト(波及効果)」です。
一人の少女が教育を受けると、彼女は将来、自分の子供たちも必ず学校に通わせます。彼女は稼いだお金の多くを家族や地域社会に再投資します。彼女は公衆衛生の知識を広め、地域のリーダーとなります。一人の少女への投資は、一人分の成功で終わるのではなく、コミュニティ全体、ひいては国全体の未来を書き換える力を持つのです。
人生で大事なのは、自分がどれだけ高いところに登ったかではありません。「登りながら、どれだけ多くの人の手を引いて一緒に上がってきたか」。その数こそが、人生の豊かさを測る真の指標だと私は信じています。
3. 「目に見えない椅子」に座る勇気
キャリアを積む中で、私は多くの国際会議や華やかな舞台に立つようになりました。かつて裸足だった私が、ミシェル・オバマ夫人や世界のリーダーたちとテーブルを囲むようになったのです。
そこで私が痛感したのは、「当事者の声」の重要性です。
世界には、教育や支援のあり方を決める立派な会議室がたくさんあります。しかし、そこには往々にして、実際にその支援を必要としている人々のための「椅子」がありません。私は、自分自身の役割を「代弁者」だとは思っていません。私は、「かつての私のような少女たちが、自ら自分の椅子を持ってその会議室に入っていけるようにするための露払い」だと思っています。
人生において、もしあなたが幸運にも「テーブルの席」を手に入れたのなら、その席を守ることに汲々とするのではなく、隣に新しい椅子を置くために全力を尽くすべきです。自分の経験した痛みや苦しみは、同じ境遇にいる誰かのための「道標」に変えることができます。自分の脆弱性を強みに変え、他者の尊厳を守るために声を上げること。それこそが、リーダーシップの本質であり、人生をかける価値のある仕事です。
4. シスターフッド:孤独ではない戦い
私たちが直面している問題——貧困、不平等、気候変動——は、あまりにも巨大です。一人で立ち向かおうとすれば、誰だって無力感に打ちひしがれるでしょう。
だからこそ、「連帯(シスターフッド)」が重要なのです。
CAMAのメンバーは現在、アフリカ全土で数十万人規模にまで成長しました。私たちは互いを「シスター」と呼び合います。誰かが困難に直面したとき、他のメンバーが駆けつけ、知恵を出し合い、支え合います。このネットワークがあるからこそ、私たちは「一過性の支援」ではなく、持続的な変化を生み出すことができるのです。
人生で一番大事なのは、信じ合える仲間を持つことです。それは単なる友達という意味ではなく、同じ志を持ち、困難な時ほど結束を強められる「運命共同体」としての繋がりです。人は一人では脆い存在ですが、誰かのために生き、誰かに支えられているという実感があるとき、驚くほどの強さを発揮します。
5. 2025年という今を生きるあなたへ
今、世界は分断や不安に満ちているかもしれません。しかし、私がジンバブエの乾燥した大地から学んだのは、「希望は、待つものではなく、自ら作り出すものだ」ということです。
私がCEOとして大切にしている言葉があります。それは、「正義は、それが実行されるまで正義ではない」ということです。どれほど素晴らしい理念を掲げても、実際に一人の少女の手にノートが届き、彼女が安全に学校に通えるようにならなければ意味がありません。
人生も同じです。何を考え、何を願うか以上に、「今日、具体的に誰のために何をしたか」が、あなたの人生を定義します。
- 感謝を忘れないこと。 ただし、それは謙虚になるためだけでなく、受け取った恩恵を燃料にして前進するためです。
- 「共感」を「行動」に変えること。 誰かの苦しみを見て心を痛めるだけでなく、その痛みを和らげるために一歩踏み出すことです。
- 次世代を信じること。 私たちの役割は、若者たちに「教える」ことではなく、彼らが本来持っている力を発揮できる「環境」を整えることです。
結びに代えて
人生で一番大事なこと。それは、「愛を持って、誰かの人生の『最初のきっかけ』になること」です。
かつて、名もなき寄付者たちがCAMFEDを通じて私の人生に「最初のきっかけ」をくれました。その小さな種が、今やアフリカ全土で何百万人もの少女たちの未来を育む森になろうとしています。
あなたの人生も、誰かにとっての希望の種になり得ます。あなたが学んだこと、経験したこと、克服した困難、そのすべてが誰かを救う力になります。自分自身を愛し、教育の力を信じ、そして何より、他者と共に歩む喜びを忘れないでください。
私たちは、一人で生まれてきますが、一人で未来を創ることはできません。手を取り合い、一歩ずつ、誰もが教育を受け、自分の人生を自分で選択できる世界を作っていきましょう。
それこそが、私がこの命をかけて守り抜きたい、人生で最も大切な価値なのです。