フィラデルフィア・イーグルスのクォーターバック、ジェイレン・ハーツです。

君が「人生で一番大事なことは何か」と問うとき、私はまずこの言葉を返したい。

「Keep the main thing the main thing(常に最も重要なことを、最も重要なものとして扱い続けろ)」

これは私の人生の北極星であり、どんな嵐の中でも私を導いてくれる原則です。しかし、この「最も重要なこと」とは、単にスーパーボウルで勝つことや、記録を塗り替えることではありません。

私が歩んできた道のり、挫折、そして今見ている景色から学んだ、人生の核心についてお話ししましょう。


1. 外部ではなく「内なるスタンダード」に従うこと

多くの人は、成功を数字や他人の評価で測ろうとします。しかし、人生で一番大事なのは、「自分自身が定めたスタンダード(基準)に対して、どれだけ誠実であれたか」ということです。

私はよく「The Standard is the Standard(基準は基準だ)」と言います。

これは、相手が誰であれ、状況がどうであれ、自分の努力の質を落とさないという意味です。プレーオフの決勝でも、シーズンオフの朝5時のトレーニングでも、私の中にある「最高の自分」を求める基準は変わりません。

世間は勝てば称賛し、負ければ容赦なく批判します。他人の声に耳を貸しすぎれば、自分の軸は簡単にブレてしまう。だからこそ、私は常に自分に問いかけます。

「今日、お前は自分のスタンダードを満たしたか?」

他人の期待に応えるためではなく、自分が自分であるために全力を尽くす。この「自己への誠実さ」こそが、揺るぎない自信の源となります。

2. 逆境を「成長の糧」として受け入れる

私のキャリアは、常に順風満帆だったわけではありません。多くの人が知っている通り、私はアラバマ大学での全米決勝戦の途中でベンチに下げられました。あの時の痛み、悔しさは言葉にできるものではありません。

しかし、あの経験が私に教えてくれたのは、「何が起きたかではなく、起きたことにどう反応するかが重要だ」ということです。

人生には、自分のコントロールできないことが必ず起きます。不当な評価、突然の怪我、予期せぬ敗北。それらに対して「なぜ自分だけが」と嘆くのか、それとも「これは自分を強くするための試練だ」と捉えるのか。その選択が、その後の人生を決定づけます。

私はベンチに下げられた後も、チームのために準備を怠りませんでした。不満を漏らすのではなく、次のチャンスが来た時に最高の状態でいることだけを考えた。その結果、翌年のリーグ決勝でチームを救うことができました。

「逆境は、新しい自分に生まれ変わるための招待状」なのです。それを拒まず、真正面から受け入れる勇気を持つことが、人生を豊かにします。


3. 「家賃」を毎日払い続ける(Rent is Due)

私には大切にしている比喩があります。

「Rent is due every day.(家賃は毎日支払わなければならない)」

成功や成長というものは、一度手に入れれば永遠に自分のものになる「所有物」ではありません。それは「借り物」であり、維持するためには毎日努力という名の家賃を払い続ける必要があります。

  • 昨日の成功は、今日の勝利を約束しない。
  • 昨日の自分を超えなければ、停滞は衰退と同じだ。

私は毎日、「1%でも良くなること」に執着しています。それは大きな変化である必要はありません。フットワークのわずかな修正、食生活の改善、あるいはチームメイトとの対話の質。その小さな積み重ねが、複利のように膨らんで、いつか大きな違いを生みます。

人生で大事なのは、結果としてのトロフィーではなく、「毎日、自分を磨き続けるプロセスそのもの」を愛することです。プロセスを信じ、プロセスに没頭する。その先にしか、本物の達成感は存在しません。

4. リーダーシップとは「献身」である

クォーターバックというポジションは、常に脚光を浴びます。しかし、私は自分一人で勝てるとは微塵も思っていません。人生において、あるいはチームにおいて一番大事なことの一つは、「自分よりも大きな目的のために、周囲にポジティブな影響を与えること」です。

本当のリーダーシップとは、他人に命令することではなく、「仲間のために何ができるか」を問い続けることです。

私はチームメイト一人ひとりを尊重し、彼らが最高のパフォーマンスを発揮できる環境を作りたいと考えています。私が冷静(Quiet Storm)でい続けるのは、チームが混乱した時に、私の姿を見て「大丈夫だ、ジェイレンが落ち着いているなら勝てる」と信じてほしいからです。

自分の名声のためではなく、隣にいる仲間のために汗を流す。この「献身」の精神があれば、どんな組織も、そしてどんな人生も、より深い意味を持つようになります。


5. 信仰と、自分を支える「根」を持つこと

最後になりますが、私にとって最も重要な土台は「信仰(Faith)」です。

フットボールの世界は激しく、移ろいやすい。今日、英雄だった人間が、明日には忘れ去られることもあります。そんな不安定な世界で正気を保ち、謙虚であり続けるためには、自分を地面に繋ぎ止めてくれる「根」が必要です。

私にとって、それは神への信仰であり、家族の絆です。

「どんな時も神が共におられる」という確信があるからこそ、私は恐れずにプレーできます。「結果がどうあれ、自分を愛してくれる家族がいる」と知っているからこそ、リスクを取ることができます。

人生で一番大事なのは、「何があっても変わらない価値観の土台」を持つことです。

嵐が来た時に木が倒れないのは、地中深く、誰にも見えないところに強い根を張っているからです。君にとっての「根」は何ですか? それを見つけ、大切に育ててください。


結論:君の「Main Thing」を見つけよう

人生で一番大事なこと。それは、「自分の人生の目的(Main Thing)を定め、それに対して、毎日誠実に家賃を払い続けること」です。

  • 自分に嘘をつかないスタンダードを持つ。
  • 苦難を成長のチャンスと捉える。
  • 日々の小さな改善を積み重ねる。
  • 他者のために自分を役立てる。
  • 揺るぎない土台を持つ。

私はこれからも、イーグルスのQBとして、そして一人の人間として、この道を歩み続けます。時には転ぶこともあるでしょう。しかし、そのたびに私は立ち上がり、再び「家賃」を払う準備をします。

君も、君自身のスタンダードを高く掲げてください。

周囲の雑音に惑わされる必要はありません。君の心の中にある「本物」を信じて、一歩ずつ進んでください。

Keep the main thing the main thing.

勝利は、その姿勢の後に、自然とついてくるものです。