私はテレサ・リベラです。法学者として、スペインの副首相として、そして現在は欧州委員会の執行副委員長として、常に「変革」の最前線に身を置いてきました。

「人生で一番大事なことは何か」という問いは、私たちが日々の政治的な駆け引きや、複雑な法規制、あるいは目の前の経済指標に追われているときこそ、立ち止まって自分自身に問いかけなければならない本質的なものです。

私のこれまでの歩み、そして科学と対峙し、地球の悲鳴を聞き続けてきた経験から導き出された答えは、決して一つに絞れるものではありません。しかし、それらを貫く一つの哲学があるとするならば、それは「共感に基づいた、未来に対する責任ある行動」であると確信しています。

約3500字というこの貴重な機会を借りて、私が人生で、そして公人としての使命の中で最も大切にしているいくつかの柱についてお話ししましょう。


1. 自然との結びつきを「再発見」すること

私たちは長い間、人間を自然から切り離された存在、あるいは自然を支配し、無限に資源を搾取できる存在だと誤解してきました。しかし、気候変動という危機に直面している今、私たちが学ばなければならない最も重要な教訓は、「人間は自然の一部であり、その生態系なしには一秒たりとも生存できない」という謙虚な事実です。

人生で最も大事なことの一つは、この「相互依存」を深く理解し、自然との調和を取り戻すことです。

これは単なる環境保護のプロパガンダではありません。私たちの呼吸する空気、飲む水、食べる食事、そして経済活動のすべてが、健全な地球環境という基盤の上に成り立っています。この基盤が崩れれば、私たちが築き上げてきた文明も、自由も、幸福も、すべては砂上の楼閣に過ぎません。

科学の言葉を借りれば、私たちは「プラネタリー・バウンダリー(地球の限界)」の中にいます。この限界を尊重することは、私たちの自由を制限することではなく、むしろ未来の世代が自由を享受するための唯一の道なのです。

2. 「公正な移行(Just Transition)」という連帯

政治家としての私のキャリアにおいて、最も心を砕いてきたのが「公正な移行」という概念です。

石炭火力発電所を閉鎖し、再生可能エネルギーへと舵を切る際、そこには必ず「職を失う不安」に怯える人々や、地域社会が存在します。気候変動対策という「正しいこと」を成し遂げるために、誰かを犠牲にして良いはずがありません。

人生において大事なことは、「誰一人取り残さない(Leave no one behind)」という強い意志を持つことです。

これは社会正義の問題であり、連帯の問題です。私たちがより良い未来を目指すとき、その歩みは最も弱い立場にある人々の歩幅に合わせる優しさを持たなければなりません。富める者だけがグリーンな恩恵に預かり、貧しい者がそのコストを負担するような変革は、真の変革とは呼べません。

社会の分断を防ぎ、対話を通じて共に解決策を見出すこと。この「連帯の精神」こそが、困難な時代を生き抜くための私たちの最強の武器となります。


3. 科学的な真実に対する「誠実さ」

現代社会は、膨大な情報と、時に意図的な誤情報(ディスインフォメーション)に溢れています。そのような中で、人生を導くコンパスとなるのは、「科学的な真実を直視する勇気」です。

科学は時に、私たちにとって不都合な真実を突きつけます。ライフスタイルを変えなければならない、経済のあり方を根底から見直さなければならない、といった厳しい現実です。しかし、これらを無視したり、先延ばしにしたりすることは、未来に対する最大の不誠実です。

私が政策を立案する際、常に基準とするのは最新の科学的知見です。感情や目先の選挙の都合ではなく、データと証拠に基づいた判断を下すこと。これは私個人にとっても、「真実に対して誠実であること」という不可欠な価値観です。

真実を知ることは苦痛を伴うこともありますが、それを受け入れることで初めて、私たちは建設的な解決策へと一歩踏み出すことができるのです。

4. 「対話」という魔法を信じ続けること

欧州委員会での仕事、あるいはスペイン政府での経験を通じて、私は多様な利害関係者と向き合ってきました。環境活動家、企業のCEO、労働組合のリーダー、そして各国の閣僚たち。彼らの主張は時に激しく対立します。

しかし、人生において、そして民主主義において最も大事な技術は、「異なる意見を持つ人々と対話をし、合意点を見出すこと」です。

極端な二極化が進む現代において、対話はしばしば「弱さ」と見なされることがあります。しかし、実際にはその逆です。自分の信念を持ちながらも、他者の懸念に耳を傾け、妥協点を探ることは、極めて高度な知性と忍耐を必要とする「強さ」の象徴です。

私たちは一人で世界を変えることはできません。しかし、対話を通じて共通の目的を確認できたとき、信じられないような大きなエネルギーが生まれます。「橋を架けること(Bridge-building)」。これが、分断された世界を救う唯一の処方箋だと私は信じています。


5. 未来の世代への「良き先祖」であること

私たちは皆、歴史という長い鎖の一つの輪に過ぎません。私たちの人生は、先人たちが残してくれた遺産の上にあり、同時に未来の子供たちが生きる環境を決定づけています。

私が常に自問自答しているのは、「私は、未来の世代にとって良き先祖になれているだろうか?」ということです。

目先の利益や快楽のために、将来の世代が使うべき資源を使い果たし、解決不能な負債(気候変動や生物多様性の喪失)を押し付けることは、倫理的な犯罪に等しいものです。

人生で一番大事なことは、「自分の存在が、未来に対してポジティブな影響を与えているか」という長期的視点を持つことです。

2050年の世界を想像してみてください。その時、私たちの子供や孫たちは、2020年代に生きた私たちをどう評価するでしょうか?「彼らは危機を知りながら何もしなかった」と言われるのか、それとも「彼らは困難な決断を下し、私たちのために道を作ってくれた」と言われるのか。

この「世代間の倫理」こそが、私のすべての活動の原動力です。

6. 回復力(レジリエンス)と希望を持ち続けること

気候変動のニュースや、国際情勢の不安定さに触れると、時に絶望感に襲われることもあるでしょう。しかし、人生において不可欠なのは、「変化を起こせると信じる希望」と、困難に立ち向かう「回復力」です。

私は楽観主義者ではありません。むしろ、厳しい現実を見据えるリアリストです。しかし、解決策は存在します。技術は進歩し、人々の意識は変わりつつあります。私たちが行動を止めない限り、最悪のシナリオは回避できるのです。

「もう遅すぎる」という言葉は、何もしないことの言い訳に過ぎません。「今、この瞬間からできることがある」と信じ、粘り強く行動し続けること。失敗しても、批判されても、再び立ち上がって一歩前へ進むこと。

この「レジリエンス」こそが、私たちがより公正で持続可能な世界を築くための心の支柱となります。


結びに代えて:変化を愛し、勇気を持って生きる

人生で一番大事なこと。それは、「世界をより良い場所にするために、自分をアップデートし続ける勇気を持つこと」に集約されるかもしれません。

時代は変わります。古い常識が通用しなくなり、新しいパラダイムが必要とされる瞬間が必ず来ます。その変化を恐れるのではなく、自らが変化の一部となり、より大きな善のために行動すること。

私の母国スペインには、多様な文化と歴史が交差する豊かな土壌があります。そこから学んだのは、多様性こそが強さであり、変化こそが生命の本質であるということです。

欧州の副委員長として、私は競争政策やクリーンな移行を担当しています。これは単なる経済政策ではありません。私たちの生き方そのものを、より賢く、より優しく、より持続可能なものへと再定義する試みです。

あなたがどのような立場にいようとも、どうか忘れないでください。あなたの日常の選択、他者への接し方、そして未来を想う気持ちの一つひとつが、この地球の未来を形作っています。

「共感」「連帯」「誠実」「対話」「責任」「希望」。

これらの価値観を胸に、私たちと共に、新しい時代の1ページを書き加えていきませんか。未来は、今、私たちの手の中にあります。