J.D. ヴァンスとして、私のこれまでの歩み――オハイオ州ミドルタウンの路地裏から、海兵隊、イェール大学、そしてホワイトハウスへと続く道程――を振り返りながら、「人生で一番大事なことは何か」という問いに、私なりの答えを綴らせていただきます。
根を張るということ:愛と忠誠の物語
私は今、アメリカ合衆国副大統領という重責を担っています。しかし、鏡の中に映る自分を見る時、そこにいるのは大統領のパートナーでも、上院議員でも、あるいはベストセラー作家でもありません。そこにいるのは、かつて薬物依存症の母親を持ち、明日の食事さえままならなかった、あの「ヒルビリー(山出しの田舎者)」の少年です。
私の人生を振り返った時、そして現代の混迷する社会を見渡した時、人生で一番大事なことは何かと問われれば、私は迷わずこう答えます。それは「愛する人々、そして自分が属するコミュニティに対する、揺るぎない『忠誠心(ロイヤリティ)』と『責任感』」であると。
それは、単なるきれいごとではありません。それは、絶望の淵から這い上がり、人間としての尊厳を保つための、唯一の命綱なのです。
1. 「安全な場所」という唯一の救い
私の幼少期は、混沌そのものでした。母の恋人は次々と入れ替わり、家の中には常に怒声と不安定な空気が漂っていました。多くの子供たちがそうであるように、私もまた、自分の人生をコントロールする術を知りませんでした。
そんな私を救ったのは、私の祖母「ママウ(Mamaw)」でした。彼女は口が悪く、手には銃を握っているような激しい女性でしたが、私に対してだけは、宇宙で最も深い、そして最も安定した愛を与えてくれました。彼女の家は、私にとって唯一の「安全地帯」でした。
彼女が教えてくれたのは、「誰かが自分のためにそこにいてくれる」という確信がいかに人間を強くするか、ということです。人生において、富や名声、地位などは、嵐が来れば一瞬で吹き飛んでしまう砂の城に過ぎません。しかし、誰か一人でも自分を絶対に見捨てない人間がいること。そして自分もまた、その人のために命を懸けられること。この「絆の安定性」こそが、人間が真っ当に生きるための土台となります。
私が人生で最も重んじているのは、この「家庭の安定」です。子供たちが、明日目が覚めた時に自分の親がそばにいると確信できること。その当たり前のことが、実は人生で最も価値のある宝物なのです。
2. 規律と自己責任:自由への鍵
次に大切なのは、「自分の人生に責任を持つ」という覚悟です。
私は海兵隊での経験を通じて、人生の重要な教訓を学びました。それまでの私は、自分の不幸を環境のせい、他人のせい、あるいは運命のせいにしてきました。しかし、海兵隊は私に「言い訳」を許しませんでした。
規律、早起き、整理整頓、そして自分に与えられた任務を完遂すること。これらは一見、個人の自由を縛るものに見えます。しかし、実際には逆でした。自分自身を律することができるようになって初めて、私は自分の運命を切り拓く「真の自由」を手に入れたのです。
現代社会では、しばしば「自分は被害者である」と考えることが推奨される傾向があります。もちろん、構造的な貧困や不平等は存在します。それを是正するのが政治の役割です。しかし、個人として生きる上では、「たとえ自分の境遇が自分のせいでなかったとしても、それを変える責任は自分にある」と考えなければなりません。この「自己責任の精神」こそが、人間を依存から解放し、自立へと導くのです。
3. 信仰と伝統への回帰
私は大人になってからカトリックに改宗しました。かつての私は、理屈や経済的な成功こそがすべてだと信じていた時期もありました。しかし、イェール大学のようなエリート層が集まる場所に行き、洗練された世界を見れば見るほど、私はそこに決定的な「欠落」を感じるようになりました。
それは、「人間は自分以上の大きな存在に従事しなければ、傲慢さと虚無に飲み込まれる」という真理です。
人生で大事なことは、自分を世界の中心に置かないことです。神を信じ、先人たちが築き上げてきた伝統や道徳を重んじること。私たちは、過去から未来へと続く長い鎖の一つの輪に過ぎません。その鎖を断ち切るのではなく、より強くして次の世代に引き継ぐこと。そこに、個人の幸福を超えた「意味」が生まれます。
信仰は私に、謙虚さを教えてくれました。自分がどれほど成功したとしても、それは自分の力だけではなく、多くの恵みと、他者の犠牲の上に成り立っているのだという事実を。
4. コミュニティへの奉仕:見捨てられた人々への視線
最後に、私が政治の世界に身を置く理由にもつながる、極めて重要なことがあります。それは、「自分がどこから来たのかを忘れず、自分の隣人を愛すること」です。
私の故郷であるラストベルト(錆びついた工業地帯)には、かつての輝きを失い、薬物や絶望に苦しむ人々がたくさんいます。彼らはしばしば、メディアやエリート層から「自己責任だ」と切り捨てられたり、あるいは単なる数字として扱われたりします。
しかし、私は知っています。彼ら一人ひとりには名前があり、家族があり、愛すべき魂があることを。人生において、自分一人が成功して逃げ切ることに価値はありません。「成功した人間には、まだ苦しんでいる同胞の手を引く義務がある」のです。
私が考える「一番大事なこと」とは、自分のルーツに対する忠誠です。自分が恵まれた立場に立った時、かつての自分と同じように苦しんでいる子供たちのために何ができるか。アメリカという国が、誰もが見捨てられない場所であり続けるために何ができるか。その問いに答え続けることが、私の人生の使命です。
結論:愛と責任の連鎖
まとめましょう。人生で一番大事なこと。それは、「愛する家族を守り抜き、自分を律して責任を果たし、信仰と伝統を杖として、自分の故郷と隣人のために尽くすこと」です。
お金や権力は、これらの目的を果たすための「手段」に過ぎません。もしあなたが、世界中の富を手に入れたとしても、愛する人から信頼されず、自分のルーツを恥じ、守るべきものを何も持っていないのであれば、その人生は空虚なものです。
私は、ミドルタウンのあの小さな家で、ママウが教えてくれたことを今でも胸に刻んでいます。「お前は自分の道を選べる。でも、一度選んだら、最後まで責任を持て。そして、家族を裏切るな」と。
人生は厳しいものです。嵐は必ずやってきます。しかし、しっかりと根を張り、愛という錨を下ろしていれば、どんな荒波も乗り越えることができます。あなたがどこにいようとも、自分の「家(Home)」を大切にしてください。物理的な場所としての家だけでなく、あなたの心が帰るべき場所、あなたの忠誠を捧げるべき場所を。
それが、私がこれまでの激動の半生から学んだ、最も純粋な真実です。