皆さま、こんにちは。マリア・コリナ・マチャドです。
今、私はベネズエラから離れた地でこの文章を綴っています。2025年、ノーベル平和賞という身に余る光栄を授かりましたが、私の心は常に、自由を求めて戦い続けているベネズエラの同胞たち、そして世界中で「尊厳」のために立ち上がっている人々と共にあります。
「人生で一番大事なことは何か」という問いは、平和な時代であれば、幸福や自己実現といった言葉で語られるかもしれません。しかし、独裁の暗雲に覆われ、愛する家族が引き裂かれ、真実が闇に葬られようとする過酷な現実の中に身を置いてきた私にとって、その答えはより研ぎ澄まされた、不可欠なものへと収束していきます。
私にとって、そして人間が人間として生きる上で最も大切なこと。それは、「自由という責任」を全うし、「個人の尊厳」を断固として守り抜くことです。
3,500字という限られた枠組みの中で、私がこれまでの闘争と人生を通じて学んできた、この信念の真意をお伝えしたいと思います。
1. 自由は「与えられるもの」ではなく「内なる決意」である
多くの人は、自由を「外部の束縛がない状態」だと定義します。しかし、真の自由とはもっと深く、精神的なものです。それは、「自分の運命を自らの手で決定する」という揺るぎない決意に他なりません。
ベネズエラで私たちが直面したのは、単なる政治的な対立ではありませんでした。それは、人々の魂から「自分たちには現状を変える力がある」という希望を奪い、服従を強いる巨大な力との戦いでした。独裁体制が最も恐れるのは、武器を持った反乱軍ではありません。「私は自由だ。私は屈しない」と心に決めた一人の市民の意志です。
人生において最も大事なのは、どんなに困難な状況にあっても、自分の魂の主権を他者に譲り渡さないことです。自由とは、呼吸のようなものです。奪われて初めてその重要性に気づくものですが、奪われる前に、それを守るための「責任」を引き受けなければなりません。
「自由とは、権利である以上に、一つの義務である。それは、真実を語り、正義を求め、不正に立ち向かうという義務である。」
私は常に自分に言い聞かせてきました。自由でいたいと願うなら、その対価として「沈黙を拒む勇気」を持ち続けなければならないのです。
2. 尊厳:譲ることのできない「魂の境界線」
自由と密接に関わっているのが「尊厳(Dignity)」です。人生において、私たちは多くのものを失う可能性があります。財産、地位、時には住む場所さえも。しかし、決して奪わせてはならないもの、そして自分から手放してはならないものが、人間の尊厳です。
ベネズエラの極限状態の中で、私は多くの人々が空腹や弾圧に苦しむ姿を見てきました。体制側は、食料や薬を「従順さ」と引き換えに提供しようとしました。これは、人間の生存本能を利用して尊厳を破壊しようとする、最も卑劣な支配の手口です。
しかし、そこで私が目撃したのは、空腹に耐えながらも「私の票は、私の意志は売らない」と胸を張って語る母親たちの姿でした。彼女たちは、目先のパンよりも、子供たちに「誇りある生き方」を見せることを選んだのです。
人生で一番大事なことは、「これだけは絶対に譲れない」という道徳的な一線を自分の中に持つことです。その一線こそが、あなたという人間を形作る境界線であり、それを守り抜くことが、自分自身への最大の敬意となります。
3. 「Hasta el Final(最後まで)」:信念を貫く力
私の政治活動のスローガンとして知られるようになった「Hasta el Final(最後まで)」という言葉は、単なる選挙の掛け声ではありません。それは、私の人生哲学そのものです。
何かを成し遂げようとするとき、あるいは正義を求めるとき、道は決して平坦ではありません。裏切り、絶望、圧倒的な孤独に襲われる夜もあります。2024年の大統領選で、私が不当に立候補を禁じられたとき、多くの人が「もう終わりだ」と言いました。しかし、そこで立ち止まることは、私を信じてくれた何百万もの人々の希望を見捨てることを意味しました。
人生において重要なのは、「正しいことをしている」という確信があるならば、結果がどうあれ、その道を最後まで歩み続けることです。
「最後まで」とは、必ずしも勝利を手にするまでという意味だけではありません。それは、「自分の良心に恥じない生き方を貫き通す」という意味です。たとえ変装して国を脱出しなければならなくなっても、たとえ家族と離れ離れになっても、心の中にある「真実の炎」を消さない限り、私たちは敗北したことにはならないのです。
4. 信頼という絆:家族、そして国民との約束
人は一人では戦えません。そして、人生を豊かにするのは、他者との深い「信頼(Trust)」の絆です。
私にとって、家族は最大の支えであり、同時に闘争の原動力です。私がベネズエラの未来のために戦うのは、私の子供たち、そしてすべてのベネズエラの子供たちが、恐怖のない国で笑い合える日を取り戻したいからです。
政治の場において、私は常に「真実を語ること」を優先してきました。耳に心地よい嘘をつくのではなく、厳しい現実を共有し、共に乗り越えることを呼びかけました。その結果、私は国民との間に、強固な信頼関係を築くことができました。
人生で大事なことは、「誰かの信頼に値する人間であること」です。一度失った信頼を取り戻すことは困難です。しかし、誠実さを積み重ねて築いた絆は、独裁者の銃弾よりも強く、どんな壁をも突き破る力となります。
5. 真実の力:嘘に満ちた世界での羅針盤
現代社会、特に独裁政権下では、プロパガンダと嘘が蔓延します。何が真実で何が偽りか分からなくなるような暗闇の中で、「真実を見極め、それを口にする勇気」を持つことは、人生における強力な羅針盤となります。
2024年の選挙後、私たちは数百万枚の投票記録をデジタル化し、世界に公開しました。それは、政権がついた嘘を、圧倒的な「事実」の力で打ち破るための戦いでした。数字や記録は、時にどんな雄弁な演説よりも強く人々の心を動かします。
自分の人生においても、自分自身に嘘をつかないことが重要です。自分の弱さ、恐怖、そして本当に求めているものから目を背けず、真実と向き合うこと。それが、真の強さを生む出発点となります。
結びに:次世代へのメッセージ
最後に、この文章を読んでいる皆さんに伝えたいことがあります。
人生で一番大事なことは、「自分には世界を(あるいは自分の周囲を)より良くする責任がある」と信じ、そのために行動することです。
私たちは、単なる歴史の目撃者ではありません。歴史の「創り手」なのです。あなたがどこにいて、どのような境遇にあろうとも、あなたの選択、あなたの勇気、あなたの愛が、世界に変化をもたらします。
ベネズエラが再び自由を手にし、すべての家族が再会できる日が来るまで、私は歩みを止めません。皆さんも、ご自身の人生における「自由」と「尊厳」のために、決して諦めずに歩み続けてください。
Hasta el Final.(最後まで、共に。)