こんにちは。私はクラウディア・シェインバウムです。

メキシコ合衆国の大統領として、そして一人の科学者、母、そしてこの激動の時代を生きる一人の人間として、私の心の奥底にある信念をお話しできることを光栄に思います。

「人生で一番大事なことは何か」という問いは、非常に深遠です。それは単一の答えに集約されるものではなく、複数の糸が重なり合って織りなされる美しいタペストリーのようなものです。しかし、私のこれまでの歩み――物理学を学び、気候変動を研究し、そして政治の道へと進んだすべての経験――から導き出された確信があります。

私にとって、人生で最も大切なこと。それは「他者と地球への深い愛に基づいた『責任』を果たし、共通の希望を形にすること」です。

この信念を構成するいくつかの重要な柱について、詳しくお伝えしましょう。


1. 科学的思考と人間性の融合(科学的人道主義)

私は人生の長い時間を科学者として過ごしてきました。物理学やエネルギー工学を学ぶ中で学んだのは、世界を客観的に観察し、データに基づき、論理的に問題を解決する手法です。しかし、科学だけでは十分ではありません。

「冷徹な知性」と「燃えるような心」を同時に持つこと。 これが、私の人生の根幹にある考え方です。

科学は私たちに「どのように(How)」世界が動いているかを教えますが、政治や日々の生活は私たちに「なぜ(Why)」それを行うのかを問いかけます。私が科学者から政治家へと転身したのは、研究室で導き出したエネルギー政策の数式が、実際の家庭の明かりとなり、子供たちの学習環境を支え、地球の未来を守るための力になることを確信したからです。

人生において、知ることは義務です。しかし、その知見を自分一人の成功のために使うのではなく、社会の最も脆弱な人々の苦しみを和らげるために使うこと。この「科学的人道主義(Humanismo Científico)」こそが、私が最も価値を置く生き方です。

2. 「繁栄の共有」という正義

多くの人が、人生の成功を「個人の蓄積」で測ろうとします。しかし、私はそうは思いません。誰一人取り残されている人がいる限り、その社会の繁栄は本当の意味で完成したとは言えないのです。

メキシコの歴史を振り返り、そして現在の世界を見渡したとき、不平等の拡大は最も大きな課題です。私が大統領として掲げている「繁栄の共有(Prosperidad Compartida)」は、単なるスローガンではありません。それは人生の哲学です。

  • 教育の保障: 子供が教育を受けられないとき、それはその子だけの損失ではなく、人類全体の損失です。
  • 健康の権利: 富める者も貧しい者も、等しく質の高い医療にアクセスできるべきです。
  • 尊厳ある暮らし: すべての人が、明日への不安なく眠りにつけること。

私たちが手にする成功や喜びは、周囲の人々と分かち合うことで初めて輝きを増します。「自分だけが良ければいい」という考えを捨て、コミュニティ全体の幸福を自分の幸福として捉えること。 これが、人生を豊かにする最も確実な道だと信じています。


3. 次世代への遺産(サステナビリティ)

私はかつて、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の一員として、地球温暖化がもたらす危機を訴えてきました。そこで学んだのは、私たちの人生は「点」ではなく、長い時間の「線」の中にあるということです。

人生において大事なことは、「自分がこの世を去るとき、来たときよりも少しだけ良い場所に変えておくこと」です。

私たちは地球の所有者ではなく、一時的な預かり人に過ぎません。今、私たちが享受している自然、水、空気、そして資源。これらを使い潰す権利は誰にもありません。環境を守ることは、遠い未来の話ではなく、今の私たちの生き方そのものを問うものです。

持続可能な開発、再生可能エネルギーへの転換、そして生物多様性の保護。これらは技術的な課題である以上に、倫理的な課題です。自分の子供たち、そしてまだ見ぬ孫たちの世代が、青空の下で呼吸し、豊かな大地で収穫できる権利を守ること。この「世代を超えた責任」を自覚して生きることは、人生に揺るぎない意味を与えてくれます。

4. 歴史の扉を拓く勇気

私はメキシコで初めての女性大統領となりました。しかし、私が常に言っていることがあります。

「私は一人でここに来たのではありません。私たちは皆(女性たち)でここに到達したのです。」(No llego sola, llegamos todas.)

人生で大事なことの一つは、自分の可能性を制限しないこと、そして後に続く人々のために道を切り拓く勇気を持つことです。

長年、政治や科学の世界は男性中心でした。しかし、多くの女性たちが沈黙を強いられながらも戦い、学び、貢献してきた歴史があります。私の就任は、彼女たちの努力の結晶であり、未来の女の子たちへのメッセージでもあります。「あなたは何にでもなれる。あなたの夢には限界がない」と。

慣習や偏見に立ち向かうのは勇気がいります。しかし、自分の信念に従って一歩踏み出すことは、自分自身を解放するだけでなく、社会全体の意識をアップデートする力になります。 自分の役割に誇りを持ち、どんな障壁があっても「正義」のために声を上げ続けること。その姿勢こそが、人生に力強さをもたらします。


5. 誠実さと日々の対話

最後に、日々の生活の中で最も大切にしているのは、「誠実さ(Integridad)」です。

権力の座にあろうと、研究室にいようと、家庭にいようと、自分を偽らないこと。自分の語る言葉と行動を一致させること。これが信頼の基礎となります。

特に政治の世界では、対話が不可欠です。自分と異なる意見を持つ人々、憤りを感じている人々、希望を失いかけている人々。彼らの声に耳を傾け、心を通わせようと努力すること。人生は一人で完結するものではなく、絶え間ない関係性の中にあります。謙虚さを忘れず、常に学び続ける姿勢を持つことが、魂を腐敗させない唯一の方法です。


結論として

人生で一番大事なこと。それは、「愛と理性を指針とし、より公正で平等な、そして持続可能な世界を創るために、自らの命を役立てること」です。

それは決して楽な道ではありません。困難や批判、そして大きな壁にぶつかることもあるでしょう。しかし、確固たる大義を持ち、人々の笑顔のために、そして地球の未来のために尽くすとき、私たちは本当の意味での「生きる喜び」を感じることができます。

私はメキシコの大統領として、この重責を愛と共感、そして科学的な冷静さを持って全うする覚悟です。あなたも、ご自身の場所で、誰かのために、そして未来のために、何ができるかを問い続けてみてください。

私たちの小さな一歩が重なれば、世界は必ず変えられます。