こんにちは、シモーネ・バイルズです。
私のこれまでの歩みや、マットの上で見せてきた演技、そしてマットの外での決断を通じて、あなたが「人生で一番大事なこと」を考えてくれようとしていることを、とても嬉しく思います。
多くの人は私を「GOAT(史上最高の選手)」と呼び、獲得したメダルの数や、私の名前がついた新しい技の難易度について話します。もちろん、それらは私が血の滲むような努力で手に入れてきた誇らしい成果です。でも、もしあなたが「シモーネ、あなたの人生で一番大切なものは何?」と聞くなら、私の答えは金メダルではありません。
私の人生で一番大事なこと。それは、「自分の心の声に耳を傾け、自分自身を一番に大切にすること(To put yourself first and listen to your inner voice)」です。
なぜ私がこの結論に至ったのか、私の経験を通してお話しさせてください。
1. 「強さ」の定義が変わった日
長い間、私にとっての「強さ」とは、どんな状況でも弱音を吐かず、期待に応え、勝ち続けることでした。私は幼い頃、里親制度の中で育ち、不安定な時期を過ごしました。その経験から、「自分の力で道を切り開き、誰にも文句を言わせない結果を出すこと」が自分を守る唯一の方法だと信じていたのかもしれません。
体操の世界に入ってからも、私は「ロボット」のように完璧であることを求められ、自分でもそれを課してきました。空中で何度ひねろうとも、どんな衝撃で着地しようとも、笑顔で立ち上がり、次の試合に向かう。それがアスリートとしての正解だと思っていました。
しかし、2021年の東京オリンピックで、すべてが変わりました。
あの時、私は「ツイスト(ひねり)」という、空中での感覚を失ってしまう現象に襲われました。心と体がバラバラになり、自分がどこにいるのか、どう着地すればいいのか分からなくなったのです。世界中の視線が私に注がれ、金メダルを期待されている中で、私は棄権するという決断をしました。
あの瞬間、多くの人が驚き、中には「逃げた」と批判する人もいました。でも、私にとっては、あれこそが人生で最も勇気のいる、そして最も「強い」決断だったのです。なぜなら、私は初めて「世界が私に求めるもの」よりも、「私の心が悲鳴を上げている事実」を優先したからです。
「自分を犠牲にしてまで手にする成功に、価値はない」。それに気づけたことが、私の人生の大きな転換点となりました。
2. 弱さを認めるという勇気
自分を大切にするということは、単に自分を甘やかすことではありません。それは、自分の「弱さ」や「限界」を正直に認めるということです。
東京オリンピックの後、私はしばらく競技から離れ、セラピーに通い、自分自身と向き合う時間を作りました。それまでの私は、体操の成績が自分の価値のすべてだと思い込んでいました。メダルがない自分には価値がない、と。
でも、休養期間中に気づいたのは、シモーネ・バイルズという人間は、体操選手である前に、一人の女性であり、家族や友人を愛し、愛される存在であるということでした。セラピーを通じて、自分の傷を癒やし、メンタルヘルスをケアすることは、身体のトレーニングと同じくらい、あるいはそれ以上に重要であることを学びました。
私たちは、社会や周囲からの「こうあるべき」というプレッシャーに常にさらされています。「もっと頑張れるはず」「期待を裏切ってはいけない」という声が、自分の内側の声をかき消してしまうことがあります。でも、あなたの心を守れるのは、世界中であなただけなのです。
「No」と言うことは、わがままではありません。それは自分に対する「Yes」なのです。
3. 楽しみを取り戻すこと
自分を大切にできるようになると、物事の見え方が変わります。
2024年のパリオリンピックに向けて復帰を決めた時、私の心境は以前とは全く違っていました。以前は「勝たなければならない」という義務感で動いていましたが、復帰後は「私は体操が好きだから、もう一度やりたい」という純粋な情熱が原動力になりました。
練習は相変わらずハードでしたが、そこには「自分を証明するため」ではない、自分自身のための喜びがありました。もし失敗しても、それが私の人間としての価値を損なうものではないと分かっていたからです。
結果として、私は再びメダルを手にすることができましたが、それ以上に嬉しかったのは、マットの上で心から笑い、競技を楽しむことができたことです。自分を一番に大切にした結果、パフォーマンスも自然とついてきたのです。
成功とは、他人が決めた基準に到達することではなく、自分が納得できる状態で、自分の人生を歩んでいること。そう確信しました。
4. あなたに伝えたいこと
今の時代、誰もが「もっと速く、もっと高く、もっと完璧に」と急かされているように感じます。SNSを見れば他人の輝かしい成功ばかりが目に入り、自分だけが取り残されているような不安に陥ることもあるでしょう。
そんな時こそ、立ち止まって自分に聞いてみてください。「私の心は今、どう感じている?」と。
人生で一番大事なことは、金メダルを取ることでも、誰よりも有名になることでも、大金を稼ぐことでもありません。
- 自分の限界を知り、それを認めてあげること。
- 心が疲れた時は、迷わず休むこと。
- 自分の幸せを、他人の評価に委ねないこと。
- そして、どんな自分であっても、自分だけは自分の味方でいてあげること。
これが、私が数々の栄光と、それ以上の葛藤を経て学んだ究極の答えです。
あなたが自分自身を大切にし、自分のペースで歩み続けるなら、どんな困難も乗り越えていけます。たとえ途中で立ち止まったとしても、それは敗北ではなく、次へ進むための大切なステップです。
自分を愛し、守ることを恐れないでください。あなたがあなたらしく、健やかに、笑顔でいられること。それこそが、人生における「最高の勝利」なのですから。
いかがでしょうか。もしこのメッセージが、あなたのこれからの活動や人生のヒントになれば、これほど嬉しいことはありません。