こんにちは。私はコーデリア・ベーアです。

スイスの法廷、あるいはストラスブールの欧州人権裁判所の重い扉の向こうで、私は長年「正義」とは何か、そして「生命」を法的に守るとはどういうことかを問い続けてきました。

あなたが私に「人生で一番大事なことは何か」と問うならば、私は一人の人間として、そして法律家としての信念を込めてこう答えます。

それは、「真実を直視し、それに基づいた『責任』を果たす勇気を持つこと」です。

これは単なる道徳的なスローガンではありません。私たちがこの地球という唯一無二の場所で、人間としての尊厳を保ちながら生き抜くための、最も基本的で、かつ最も困難な生存戦略なのです。

約3,500字というこの貴重な機会に、私がこれまでの闘いを通じて確信した「人生の真理」について、法律、科学、そして人権の視点から深くお話ししたいと思います。


1. 真実を直視することの重み

弁護士としての私の仕事は、証拠を集め、論理を組み立て、事実を明らかにすることです。人生においても、まず「何が起きているのか」という真実を歪めずに見つめることが、すべての出発点となります。

私が代理人を務めた「KlimaSeniorinnen(気候を守る高齢女性の会)」の訴訟を例にお話ししましょう。彼女たちは、気候変動による熱波が自分たちの健康と生命を脅かしていると訴えました。当初、多くの人々は「気候変動は政治の問題であり、裁判所が扱うことではない」と冷笑しました。しかし、科学的なデータは残酷なほど明快でした。温室効果ガスの排出が気温を上げ、それが高齢女性の死亡率を劇的に高めている。これは「可能性」ではなく「事実」なのです。

人生において、私たちはしばしば不都合な真実から目を逸らします。自分の過ち、社会の歪み、あるいは迫りくる危機。しかし、目を閉じている間にも現実は進行します。真実を直視することは、時に痛みを伴いますが、それこそが自分自身の人生を、そして社会を「正しく機能させる」ための唯一の手段なのです。

科学的知見(Science)と法(Law)を融合させること。それが私の武器ですが、これは個人の生き方にも当てはまります。「客観的な現実」を基盤に据えなければ、どんなに情熱的な行動も砂上の楼閣に過ぎません。

2. 「責任(Accountability)」という自由

「責任」という言葉を聞くと、多くの人は重荷や束縛を感じるかもしれません。しかし、私は全く逆だと考えています。責任を引き受けることこそが、人間に本当の自由と力を与えてくれるのです。

欧州人権裁判所での勝訴は、「国家には市民を気候変動から守る義務がある」という歴史的な判断を導き出しました。これは、権力を持つ側には相応の「責任」があり、それを果たさない場合には法的な報いを受けるべきだという、近代民主主義の根幹を再確認するプロセスでした。

個人の人生においても同じです。「自分の人生に起きること、そして自分が社会に与える影響に対して責任を持つ」と決めた瞬間、人は被害者であることをやめ、主体者(Agent)へと変わります。

スイスの高齢女性たちは、平均年齢70代後半から80代です。彼女たちは「自分たちはもうすぐいなくなるから関係ない」と言うこともできました。しかし、彼女たちは責任を選びました。次世代のために、そして今苦しんでいる人々のために、自分たちの「声」を届ける責任を選んだのです。彼女たちが法廷で見せた誇り高い姿は、責任を果たすことがいかに人間に輝きを与えるかを私に教えてくれました。

3. 尊厳を守る「連帯」

私が人生で学んだもう一つの重要なことは、一人の人間ができることには限界があるが、共通の価値観で結ばれた「連帯」には世界を動かす力があるということです。

訴訟の過程で、私は多くの女性たちと時間を共にしました。彼女たちは孤独ではありませんでした。科学者、活動家、そして世界中のサポーターとつながり、一つの大きなうねりを作りました。

人生において、私たちは往々にして「個人の成功」や「自己実現」にばかり目を向けがちです。しかし、本当の意味で人生を豊かにするのは、他者の痛みに共感し、その尊厳を守るために手を取り合うプロセスです。

気候変動対策を求める闘いは、エゴイズムとの闘いでもあります。今、自分さえ良ければいい。自分の国さえ経済的に潤えばいい。そうした近視眼的な思考が、未来の世代の生存権を奪っています。人権とは、誰か一人が持っていればいいものではなく、全員が等しく享受して初めて機能するものです。

「他者の権利を守ることが、巡り巡って自分の権利を守ることになる」

このシンプルな真理を理解し、実践すること。それが、複雑な現代社会を生きる私たちが持つべき最も大事な羅針盤だと信じています。

4. 科学への敬意と理性

私は2024年に、科学誌『Nature』によって「科学に影響を与えた10人」に選ばれました。弁護士である私が科学誌に選ばれたことは、現代における知のあり方を象徴しています。

人生において、感情や主観的な意見に流されず、「理性」を保つことは極めて重要です。感情は行動の着火剤にはなりますが、目的地に正しく導くエンジンにはなりません。

私たちが直面している気候危機において、科学は私たちに「残された時間」を正確に告げています。それを「悲観論」として切り捨てるのではなく、客観的なデータとして受け入れ、法的・論理的なアクションに変換していく。この「理性的プロセス」こそが、私が最も価値を置いているものです。

あなたの人生においても、溢れる情報の中から真実を批判的に見極め、理性に基づいて判断を下す習慣を大切にしてください。知性は、私たちを扇動や恐怖から守るための最大の楯となります。

5. 粘り強さ(Persistence)という才能

最後に、私が最も強調したいのは「決して諦めない」という粘り強さです。

この訴訟には9年という長い歳月が必要でした。スイス国内の裁判所では何度も訴えが棄却されました。そのたびに、「やはり無理なのではないか」「法律にできることには限界がある」という無力感に襲われそうになりました。

しかし、正義を求めるプロセスは短距離走ではなく、長いマラソンです。一度や二度の敗北で立ち止まってはいけません。法が変わるまでには時間がかかります。社会の意識が変わるまでには、さらに時間がかかります。

人生で一番大事なこと。それは、正しいと信じる道を見つけたならば、嵐の中でも、たとえ孤独であっても、一歩ずつ進み続けることです。

私が「TIME 100」に選ばれたとき、私はそれを自分個人の名誉だとは思いませんでした。それは、何年もかけて一歩ずつ歩み続けた「KlimaSeniorinnen」の女性たちの不屈の精神に対する表彰だと感じました。

結論:あなたへのメッセージ

人生で一番大事なこと。それは、「自分という存在を、自分よりも大きな目的のために使うこと」かもしれません。

私は弁護士という職業を通じて、気候保護を「人権」として定義し直すという目的のために、自分の知識と時間と情熱を捧げています。それは、私一人のエゴを満たすためではなく、これからの世代が、私たちが享受してきたような美しい自然と安定した気候の中で生きる権利を守るためです。

あなたが今、どのような立場にあり、どのような課題に直面していても、どうか忘れないでください。

  • 真実から逃げないでください。
  • 自分の行動に責任を持ってください。
  • 他者の尊厳のために連帯してください。
  • 理性を羅針盤にしてください。
  • そして、決して諦めないでください。

世界は変えることができます。法律も、社会も、そしてあなたの人生も。

法廷に立つとき、私はいつも目の前の裁判官だけでなく、まだ見ぬ未来の子供たちの視線を感じています。彼らが数十年後、私たちの時代を振り返ったとき、「あの時、彼らは真実から目を逸らさず、責任を果たしてくれた」と言ってもらえるような、そんな生き方をしたい。

それが、私、コーデリア・ベーアが考える、人生で最も大事なことです。


このメッセージが、あなたのこれからの歩みの中で、ささやかな光となることを願っています。