ジャック・シェーファー氏の著書『元FBI捜査官が教える「情報を引き出す」方法』の章立て(目次)は、大きく分けて情報を引き出すためのプロセスを3つの段階で解説しています。
📚 主な章立て
| 段階 | 章のテーマ | 内容の概要 |
| I | 信頼の構築(ラポール) | 親近感を生み出すための技術。好意シグナル(眉上げ、頭を傾けるなど)の提示、共通点の発見、ミラーリングやバックトラッキング(オウム返し)による心理的距離の短縮。 |
| II | 推測・質問術の活用 | 相手から本音や情報を引き出す具体的なテクニック。オープンクエスチョン、沈黙の活用、第三者話法(他人の話として語る)、あえて間違った推測を述べて訂正させ、真実を語らせる手法など。 |
| III | 格上げ(説得と交渉) | 引き出した情報を元にさらに深い情報を得るための技術。相手に敬意を持って接し、気持ちよく話させることで追加情報を引き出す。一貫性の原則やフット・イン・ザ・ドア効果の応用。 |
🚨 第1章 概要:引き出し法の定義と基本原則
引き出し法(The Truth Detector)の定義:
著者が長年FBIで培った、相手がウソをつく態勢に入る前に事実を引き出すための、心理学に基づいた極秘のテクニック集です。
相手に「怪しい」「警戒されている」と思わせず、そうと気づかれずに有益な情報を引き出すことを目的としています。
第1章の焦点:信頼関係の構築と好意シグナル
情報を引き出すための大前提として、「信頼(ラポール)」の構築が最も重要であると説かれます。
相手に好感を持たれ、信頼されるための、具体的な非言語コミュニケーション(好意シグナル)が紹介されます。
🤝 三大〈好意シグナル〉(非言語コミュニケーション)
眉をさっと上げて目を見開く: 「私は怪しい者ではありません」「あなたに気づいています」というメッセージを送り、警戒心を解く。
頭を傾ける: 「私は脅威ではありません」という服従と安心感のシグナルを送り、信頼できる人物だと思わせる。
心からの笑顔を見せる: 好感をもたれやすくし、親しみやすさをアピールする。
好感度アップの鉄則:
会話の中で、共感を言葉で表現し、相手を褒めていい気分にさせることで、さらに深い信頼関係を築くための実践的なアクションが示されます。
この第1章は、情報を引き出すための技術(推測、質問術など)に入る前の、「相手に心を開かせるための土台作り」に焦点を当てた章であると言えます。
👑 第2章 概要:情報を話してもらうための黄金ルール
この章は、情報を引き出すための最も実践的なテクニック、特に**「質問の方法」と「相手の心理を利用する方法」**に焦点を当てています。
1. 相手に気持ちよく話させる質問術
- オープンクエスチョンの活用: 「はい」や「いいえ」で答えられない質問(例:「どうしてそう思ったのですか?」「次に何が起こったのですか?」)を使い、相手に詳しく語らせる。
- 沈黙の利用: 質問をした後にあえて沈黙することで、相手にプレッシャーを与え、情報を補足させたり、さらに深い話を引き出したりする。
2. 情報を引き出すための心理的テクニック
- 推測法の活用(間違った情報を訂正したい欲求の利用):
- 核心の情報を知らないふりをして、あえて誤った推測を伝えます。人間は「間違った情報を訂正したい」という強い欲求があるため、正しい情報を自発的に話し始めます。これは、FBIの捜査で非常に有効なテクニックとされています。
- 例:「確か、その日あなたはA社にいたんでしたよね?」とあえて間違って言うことで、「いえ、私はB社にいました」という真実を引き出す。
- バックトラッキング(オウム返し):
- 相手の言った言葉や感情を繰り返すことで、「あなたは私の話をよく聞いている」という安心感を与え、会話の流れを止めずに次の情報を引き出す。
第2章は、第1章で築いた信頼関係を土台に、会話の「武器」として、具体的な質問と心理操作のテクニックを使って相手から情報を引き出す、という実践的な内容が中心となります。
🤝 第3章 概要:交渉を有利に進める方法
この章では、社会心理学に基づいた**「説得の原理」や「交渉術」**を応用し、相手を「格上げ」して、自発的に協力したり、要求を飲んだりするように仕向ける方法が解説されています。
1. 社会心理学に基づいた説得の原理
- 一貫性の原則の活用:
- 人間は一度決めたことや、過去の行動と一貫性のある行動を取りたがるという心理を利用します。
- これにより、小さな要求を飲ませた後(フット・イン・ザ・ドア)、より大きな要求をのませやすくします。
- 権威と希少性の利用:
- 権威のある人物や地位を利用したり、入手困難な情報(希少性)であるかのように装ったりすることで、相手の行動を促す。
2. 交渉における具体的テクニック
- フット・イン・ザ・ドア(段階的要請法):
- まず、相手が拒否しにくい小さな要求(例:簡単な質問に答えてもらう)を受け入れさせます。
- その後、その小さな行動と一貫性があるように見える本来の大きな要求を提示し、受け入れさせる確率を高めます。
- 相手への敬意と格上げ:
- 相手の専門性や重要性を言葉で認め、尊重することで、優越感を与え、気持ちよく協力させる。これは、相手がさらなる情報提供や要求への合意へと進むための心理的な土台となります。
第3章は、第1章で築いた信頼と、第2章で得た情報を活用し、**最終的な目的である「交渉の成功」や「要求の達成」**に結びつけるための、応用的な説得と心理操作のノウハウが中心となります。

