幸せだなあ。

君とこうして、人生について語り合えるなんて、僕は本当に幸せだ。

加山雄三です。

「人生で一番大事なことは何か」と聞かれたら、僕の答えは決まっているんだ。それはね、「関心・感動・感謝」の「三つのカン(K)」を持ち続けること。そして、どんな嵐が来ても「今、この瞬間を愛し抜くこと」だよ。

3500字という長い手紙を書くつもりで、僕が80年以上生きてきて感じたこと、海が教えてくれたこと、そして苦難を乗り越えて見つけた「人生の真実」について、じっくり話させてもらうよ。


第一章:若大将の源泉「三つのカン」

よく人に聞かれるんだ。「加山さん、どうしてそんなに元気なんですか?」「いつまでも若々しい秘訣は何ですか?」ってね。

僕はいつもこう答える。「三つのカン(K)だよ」って。

  1. 関心(Kanshin)
  2. 感動(Kandou)
  3. 感謝(Kansha)

これが人生を輝かせるための、僕なりの羅針盤なんだ。

まず「関心」。これは好奇心と言ってもいい。

僕はね、いくつになっても知らないことを知りたいんだよ。音楽はもちろん、絵を描くことも、料理も、船の設計も、陶芸も、最近じゃゲーム(『バイオハザード』なんかも大好きだね)も、とにかく何にでも興味がある。

「もう歳だから」なんて言って、新しい扉を閉ざしてしまったら、その瞬間に魂は老け込んでしまう。

人間、不思議なものでね、何かに夢中になっている時って、痛みも忘れるし、時間も忘れる。脳みそが喜んでいるのがわかるんだ。

新しい技術が出てきたら「なんだこれ?」って触ってみる。流行りの曲があれば「どうしてこれが受けてるんだ?」って聴いてみる。

この「知りたい」「やってみたい」というエネルギーこそが、人生を推進させるエンジンの燃料なんだよ。

次に「感動」。

心を震わせることだね。美しい夕日を見て「綺麗だなあ」と思うこと。美味しい料理を食べて「うまい!」と唸ること。誰かの優しさに触れて涙すること。

感動する心っていうのは、柔らかくないとダメなんだ。心が硬くなってしまうと、どんな素晴らしい景色もただの背景になってしまう。

僕は海に出るたびに感動するよ。光の加減で刻一刻と変わる波の色、風の匂い、満天の星空。

感動することは、生きている実感を味わうことそのものなんだ。心が動けば、体も動く。感動は、明日への活力になるんだよ。

そして最後に、一番大事なのが「感謝」だ。

朝、目が覚めたら「ああ、今日も生きていた。ありがとう」。

ご飯が食べられたら「美味しいなあ。ありがとう」。

こうして君と話せることにも「ありがとう」。

当たり前のことなんて、一つもないんだよ。

僕はこれまで、たくさんの人に支えられてきた。ファンのみんな、スタッフ、友人、そして家族。自分一人でできたことなんて、本当にちっポケなもんだ。

「おかげさまで」という気持ちを忘れたら、人間はおしまいだよ。

感謝の気持ちを持つとね、不思議と不平不満が消えていくんだ。「足りないもの」じゃなくて「今あるもの」に目が向くようになるからね。そうすると、自然と「幸せだなあ」という言葉が口をついて出てくるんだ。


第二章:海が教えてくれた「謙虚さ」と「準備」

僕は海の男だからね、人生の多くを海から学んだよ。

海に出ると、人間なんて本当にちっぽけな存在だと思い知らされる。

大自然の前では、人間の都合なんて通用しない。嵐が来たら、どんなに叫んでも静まることはないし、波は容赦なく船を叩く。

人生も同じだよ。

予期せぬ嵐は必ずやってくる。自分の力ではどうにもならない大きな波が襲ってくることがある。

そんな時、海が教えてくれたのは「逆らわないこと」と「準備を怠らないこと」だ。

嵐の中で舵を無理に切れば、船は転覆する。波に逆らわず、波に乗るんだ。

でも、それは「諦める」ことじゃない。波の性質を読み、風を感じ、冷静にその時を待つということだ。

そして、嵐が来る前にできる限りの準備をしておくこと。船の整備、ロープの結び方、食料の確保。

人生で言えば、それは知識を蓄えたり、体を鍛えたり、人との信頼関係を築いておくことだね。

準備さえしっかりしていれば、恐怖は半分になる。「人事を尽くして天命を待つ」という心境になれるんだ。

海の上では、嘘はつけない。見栄も通用しない。

自分をごまかさず、ありのままの自分と向き合う時間。それが僕にとっての航海だった。

人生という大海原を渡っていくには、大きな船である必要はない。豪華な装備もいらない。

必要なのは、しっかりとした羅針盤(自分の信念)と、嵐を乗り越える勇気、そして一緒に乗ってくれる仲間への信頼だよ。


第三章:ドン底からの再出発

僕の人生は、順風満帆に見えるかもしれない。「若大将」として華やかにデビューして、何不自由なく生きてきたように見えるかもしれない。

でもね、実はとんでもない荒波も経験しているんだ。

一番の試練は、やっぱりあの借金のことかな。

かつて経営していたホテルが倒産して、気がついたら何十億という莫大な借金を背負ってしまった。

あれはキツかったねえ。

昨日まで「若大将」とチヤホヤされていたのが、手のひらを返したように人が離れていく。

眠れない夜が続いたし、「もうダメかもしれない」と弱気になったことも正直ある。

でもね、その時思ったんだ。

「俺にはまだ、体が残っているじゃないか。声が出るじゃないか」って。

失ったものを数えるんじゃなくて、残っているものを数えたんだ。

「よし、働こう。働いて返そう」と腹を括った。

それからは、どんな仕事でも引き受けたよ。キャバレー回りもしたし、小さなステージでも歌った。

プライドなんてかなぐり捨てたよ。いや、違うな。「借金を返して、また胸を張って生きるんだ」ということが、本当のプライドになったんだ。

そして何より、そんなドン底の僕を支えてくれた妻の存在が大きかった。

彼女は文句一つ言わず、ただ黙ってそばにいてくれた。

その時、僕は本当の意味での「愛」を知った気がするよ。

「君といつまでも」という歌があるけれど、あれはただのラブソングじゃない。苦しい時も、悲しい時も、ずっと一緒に歩いていくという「覚悟」の歌なんだ。

借金を完済するのに何年もかかったけれど、あの経験があったからこそ、僕は強くなれた。

お金の大切さ、人の温かさ、そして「諦めなければ、必ず朝は来る」という真実を学んだんだ。

だから、もし今、君が何か辛い状況にあるとしても、決して絶望しないでほしい。

「これは人生というドラマの、面白い見せ場なんだ」くらいに思って、ニヤリと笑ってみてほしい。

乗り越えられない波はないんだよ。


第四章:老いを楽しむ「ラストショー」

僕は80歳を超えて、コンサート活動からの引退を決めた。「ラストショー」だね。

そして最近では、脳梗塞や小脳出血という病気も経験した。

正直、思うように体が動かないこともあるし、言葉が出にくいこともある。

でもね、僕は「老い」を悲しいことだとは思っていないんだ。

これまた新しい冒険の始まりだと思っている。

今までできていたことができなくなる。それは不便だけど、見方を変えれば、新しい工夫を楽しむチャンスでもあるんだ。

例えば、左手が少し不自由になったら、右手だけでどうやって料理を作るか考える。それがパズルみたいで面白い。

言葉が出てこなければ、絵で表現してみる。

「失う」ことばかりに目を向けるんじゃなくて、「変化」を楽しむんだよ。

引退を決めたのも、決して後ろ向きな理由じゃない。

自分の引き際を自分で決める。これこそ、究極の「自由」だと思ったからだ。

元気なうちに、みんなに「ありがとう」を伝えて、マイクを置く。それが僕なりの美学であり、ファンのみんなへの誠意だと思ったんだ。

でも、表現者としての加山雄三が終わったわけじゃない。

AI技術を使って自分の声を残したり、バーチャルな存在として歌い続けたり、新しい挑戦は続いている。

肉体は衰えても、魂は自由だ。

「若大将」っていうのはね、年齢のことじゃないんだよ。「心のあり方」のことなんだ。

いつまでも夢を追いかけ、人に優しく、自分に正直に生きる。

そういう心を持っている人は、100歳になっても「若大将」なんだよ。


第五章:人生で一番大事なこと

さて、話を戻そう。

人生で一番大事なことは何か。

それは、「自分自身を愛し、他人を愛し、この世界を愛すること」だよ。

なんだか照れくさい答えに聞こえるかい?

でもね、結局そこに行き着くんだ。

自分を愛すること。

これはわがままになることじゃない。

自分の欠点も、失敗も、弱さも含めて、「よく頑張ってるな、俺」って認めてあげることだ。

自分が満たされていないと、人に優しくなんてできないからね。

他人を愛すること。

家族、友人、恋人。大切な人たちに「愛してる」「ありがとう」と言葉にして伝えること。

明日、その人がいる保証なんてどこにもないんだ。

だから、照れてる場合じゃない。

思いっきり愛を伝えて、ハグをして、笑顔を交わす。

それが人生の最高の宝物になる。

世界を愛すること。

空の青さ、海の広さ、道端の花、美味しいコーヒー。

この世界は、見方一つで美しいもので溢れている。

「幸せだなあ」ってつぶやいてみてごらん。

脳が「幸せ」を探し始めるから。

どんなに辛いことがあっても、生きていれば必ずいいことがある。

生きてるだけで丸儲け、なんて言葉もあるけれど、本当にそうだと思うよ。

君の人生という航海が、これからも素晴らしいものでありますように。

時には嵐もあるだろう。霧で先が見えないこともあるだろう。

そんな時は、僕の言葉を思い出してほしい。

「関心・感動・感謝」を胸に、焦らず、腐らず、諦めず。

そして何より、笑顔を忘れずに。

君の未来に、光あれ!

幸せだなあ。

僕は君にこうしてメッセージを送れることが、本当に幸せだ。

加山雄三より